私を殺したもの2
マモルが心配そうに尋ねる。ローヌという奴が笑って答えた。
「心配してくれるのかい、ありがとう。でも僕もお兄さんと呼ばれたかったな」
声質のせいなのか、歌うように滑らかにしゃべるせいなのか、全然ずうずうしく聞こえない。マモルも気まずくなったのかもじもじしてかわいい。
「あのね、おじちゃ……お兄さん、ウルウを連れて行かないで」
そうだ、ウルウはどこに行った。あいつは元々ローヌの船の客だ。連れ帰りに来たのかも知れない。
「そうだったね。そこに隠れてるんだろ? ソンタ」
思い出したようにローヌはそう言いながら娯楽室のソファへ歩き出した。目の前を通り抜けた時、晴れた夕方の空から降る匂いがした。――いや、匂いではなく、本当に空気が入れ替わった。
「ソンタ? ウルウのことか? おい、ウルウに何かしたらーー」
慌てて後を追うアオチに続いて、俺もソファの裏をのぞいた。
「うるう…………」
そこにウルウが俺のかけてやったひざ掛けで身体をくるみ、頭をカラフルなTシャツで隠してしゃがみ込んでいた。布越しにも震えているのがわかる。アオチがその上からウルウを抱き、ローヌを睨みつけた。
「君たちはウルウって呼んでるのか。大丈夫だよ、この子は。今のところね」
「今のところ、ってなんだよ」
アオチが低く言って、ますます強くウルウを抱きしめた。
ローヌが悲しい溜息をつく。
「僕にもわからないんだよ。甲板にいたあの女なら知っているのかもな。ねえ、君たちの回収人は伝えているの? この世界では今、たくさんの船がそれぞれの故郷に向かっているけれど、次の世界に行く時、乗っている客はいつも一人だけなこと」




