わたしを殺したもの1
わたしの殺したもの オゼ
「ローヌ、お前どうやって上がって来た」
アオチが俺たちを庇うようにそいつの前に立った。
こいつがあっちの船の回収人か。初めて近くで見た。
思ってたよりきれいだ。水に濡れているせいだろうか。それに何だか、とても懐かしい。本当にこれが人殺しなのか? 何か間違えている気がするーー。
「もう少しで嵐がくる。だから、這い上がってきた」
優しい声をしていた。
「自力で上がってこれるのに、今まで船に引きずられていたのか。何考えてんだよ」
アオチはこいつを完全に殺人者と信じて疑っていない。本当のところはどうなんだ……。
「だって君たちの回収人、僕のこと怒ってただろ。ねえ、君たち取り持ってよ。その前にーー君と君ははじめましてだね」
そう言って俺とマモルの方を向いて、手を伸ばす。細くてきれいな指だ。この手で三人も惨殺したのか?
「汚い手を伸ばしてくるなよ」
アオチが払ってしまったので、触れることができなかった。
「きれいな手をしてるな」
つい口に出してしまう。
「何言ってるんだお前? 人殺しの手だぞ」
「いや、その、鎖だか縄だか知らないけど、手繰り寄せて船に上がってきたんだろ? その割に傷一つないなと思って……」
「……まあ、そうだな。回収人っていう人種は馬鹿力で傷の治りが早いんだろ」
貝殻のようなそいつの爪から目を逸らし、マモルを見た。オオミが強く手をつないでいるが、怖がっている様子はない。
「おじちゃん、大丈夫?」




