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自推2

 俺が勝手に二人も喜んでくれると妄想しているだけかも知れない。おばさんには生きている人を大切にしろと言われた。マモルはウルウとすっかり打ち解けて楽しそうだった。

 こいつらはどうだ? 俺のことを社交辞令で心配してくれてはいるが、その実、本当に思っているのはいつもお互いのことだ。

 回収人だってそうだ。あいつの一番の関心はオオミだ。

 初めて会った向こうの船の連中は? 血まみれの女は文字通り何もせず、一点を見つめているだけなのに、おばさんの優しさを独り占めしている。あのウルウル言っている奴だって、全身皮を剥かれたようなグロテスクな容貌のくせにみんなに愛されている。

 あっちの回収人ローヌはナルシストっぽいから、自分にしか興味ないだろう。

 ――俺は一人だ。

 昔っからそうだった。俺の周りにいる奴らは全員、別の方を向いている。おばさんとマモルに求められている、自分が誰かの救いになっている、そう実感できたあの頃が一番幸せだった。

「鳥を掴まえて」、その言葉の意味も今ならわかる気がする。

 アオチなんて鳥の方から救いに来てきれる。オオミなんて鳥に追われて怖がっているくらいだ。

 俺だけだ。自分から掴まえに行かなければ鳥にすら見向きもされないのは。

「オゼさん……」

「……あ」 

 ハラリと涙が落ちて言葉が続かない。

 バタンとドアが開いた。

「兄ちゃん!」

 ドアを開けたのはウルウだったので、こいつが急にしゃべり出したのかと思ったが、その後ろからマモルの姿が見えた。

「兄ちゃん、ウルウにお絵かきしよう」

 そう言って両手に抱えたペンやら絵の具やらを突き出した。そうだ、さっきウルウの服に絵を描く約束をした。

「どこにあったんだこんな物」

 急いで涙を拭って、無理やり笑顔を作りながらそれを受け取る。

「おじさんのお部屋」

 オオミに何か耳打ちしていたアオチが、俺が受け取った絵の具を見て、目を見開いている。きっと、オオミにマモルの通訳を頼んだのだろう。

「おじさんに怒られないか」

「おじさんは怒ったりしないよ」

 回収人は意外と甘々な奴だから、驚かない。アオチが俺の方に寄ってきて呟いた。

「これ、俺の絵の具セットだよ」


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