選別の方向3
「お前、毎回惜しいよ。今回は三分の二位は合ってる」
「そうですか?」
何でオオミは少し嬉しそうなんだ。先生に「さっきより良くなってる」と褒められた生徒みたいな顔をしている。
「最後のは違うぞ。俺は誰も殺す気なんてない。そんなことしてもどうしようもない。連れて行けない奴はどうしたって弾かれてここに残る。無になる世界でどうせ消えるのに、わざわざ殺す必要なんてないだろ」
ほっとした。こいつが人を殺す姿は想像できないし、したくもない。何なら残ると立候補した俺が最初に殺されかねなかったし。
「じゃあ、隣の船のあれは何だったんだ?」
俺も疑問を口にしてみた。
「それは言いたくない」
即答された。オオミと偉く対応が違うじゃないか。
「なんだよ、それ」
「あっちの船のことだから、憶測でわかったような事を言いたくない。そこの血まみれ女に聞くか、ウルウル言ってる奴に聞け。一番良いのは向こうの回収人に聞くことだ」
「どれも無理だろーー。血まみれ女は一言もしゃべらないし、『ウ』と『ル』じゃ何もわからない。向こうの回収人に至ってはお前が海に落としたんだろ」
突っ込み待ちとしか思えない。こいつは結構ふざけるタイプだ。
「うるうーー」
ウルウが愛嬌のある目を一生懸命恨めしそうに歪めて抗議している。自分だって会話が出来ると言いたいらいしい。というか、死人が乗っている俺たちに言われたくないかも知れないが、そっちの船のメンバーはどうなってるんだ。一目見て危ない奴らと、殺人狂の回収人というヤバさだ。こいつらこそ、単に故郷が同じだけで集められた他人同士なのか?
「なあ、もう一ついいか」
「なんだ? 色白のっぽ」
「急にその呼び方止めろよ。――梯子は外れないんだよな。と言うことは二つの船のどちらの行先に向かうんだ?」
回収人がにやりと笑う。やっぱりこいつ遊んでる。
「どっちの故郷だろうな。思いの強い方じゃねえか」




