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選択の方向1

選択の方向          オゼ


 そういうことか、合点がいった。

 次の世界に連れて行くのに見合う奴かを、この船旅の時間で見極めているということか。

 それなら俺は、別に連れて行ってもらえなくても構わない。

 その時そう思った。だって、死人のおばさんやマモルはこの世界に置き去りにされることが確定している。最後だから会いに来てくれたに違いない。俺だけ次の世界に進むなんて考えられない。寂しかった俺を救ってくれた二人と、この世界に残る。

 そう心に決めると酷く落ち着いて、むしろ穏やかな気持ちになった。

「選ばれなかったらどうなるんだ。残されたこの世界はどうなる」

 今となっては心臓回収人兼、人間判定官が俺を泣きそうな目で見返した。

 いや、こいつに限って気のせいか。午後の柔らかい日差しのせいで目が濡れているように見えるだけだ。

「月が落ちて無になる」

「ん? それポエムか何か?」

「詩じゃねえよ、事実だ。今、空に白く浮いているあの月が、明日の朝、この世界に落ちて全部無かったことになるんだよ」

「俺は残る」

 きっぱり言った。もう迷いはなかった。

「おい、お前、何言ってんだよ。ちょっと話そうぜ」

 立ち上がったのはアオチだった。またこいつおせっかいの正義感か。それも何だか心にじんわり来た。

「待ってください。僕だって二人と話し合いたいのはやまやまです。でも、まず今わかっていることを整理しましょう。話はそれからです」

 オオミの言葉にアオチがそのまま座った。こいつら本当に兄弟みたいで面白い。この世界が終わるなんて話が嘘なら、この旅行を機にもっと親しくなりたかった。久しく忘れていた感情だ。

「いいぞ、眼鏡。お前のまとめを話してみろよ。間違っていたら訂正してやる」


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