幽霊船3
おばさんが迷うことなく頷く。こっちを先に聞けば良かった。
「あれはもう掴まえたんじゃないの?」
「え?」
鳥を掴まえたい、なんて思い始めたのはここ数日のことだし、マモルとおばさんに『鳥を掴まえて』と言われたこともそれまで忘れていた。
「ああ、気にしないで。何となくもう掴まえたのかと思ってた。でもまだなら掴まえないといけない。オゼくんが思っている通り、群れで飛んでいるあの鳥の一羽を」
「何のために」
おばさんが黙ってしまったが、何か考えているようだ。
「鳥を掴まえ損ねると、燃料になるか潰されるの」
「海で燃える心臓になるということですか……潰されるとは?」
そっちは初めて聞いたが、圧迫されて破裂する心臓を思い浮かべて動悸がした。
「たぶんオゼくんが想像している通り」
「おばさんとマモルは鳥を掴まえられたのですか?」
「本当は死ぬ前に掴まえなければならないんだけど、わたし達は失敗してしまった。鳥を掴まえることが大事なことだと知らなかったから。だからオゼくんには掴まえて欲しい。わたし達がここに居られるのはまだ誰かの心にいるから」
誰かって、いや、それは俺だ。まあ、そんなことは良い。
今、どうしても鳥を掴まえたい、そんなに焦燥にかられるということは……
「俺ってもう少しで死ぬんでしょうか」
おばさんが柔らかく笑った。懐かしい笑顔だった。
「みんな死ぬでしょ、いずれ」
もっと詳細を聞きたくて前のめりになった時、船が何かにぶつかったような衝撃を感じた。
次から第二章です!




