鳥喰い鳥2
オオミの声で、心臓のことを思い出した。鳥に夢中ですっかり忘れていた。
――爆弾は確かに網だった。爆ぜることのない爆弾に静かに心臓が引き込まれていく。線香花火が落ちる時のような、妙に切ない余韻を残して心臓がぽとり、ぽとりと悲しく爆弾の中に消えて行く。
「見てください。爆弾が透明になっていきます」
さっきからオオミしかしゃべっていない。苦手な血を見たせいで顔色は悪いが、やっぱりこいつが一番強い。
「本当だな、心臓はどこに消えたんだろう。鉄のシャボン玉みたくなってしまったな。あれが燃料になるのか。あっ!」
鳥が、おれの巨大エトピリカが飛び去ってしまう。
誰かに止められる前に部屋を飛び出した。せっかく再会できたのにまた見えなくなってしまう前に、俺がここにいることを伝えたい。
息を切らして甲板でに出ると、まるで待っていてくれたように巨大エトピリカはホバリングを続けていた。
「あ……」
胸が一杯で声が出ない。身体が落ちそうなくらい乗りだして、精一杯手を伸ばした。真昼間の空と海の狭間から今度はどこに向かって飛んでいくんだ。俺もそこに連れて行って。
俺の気持を海風が届けてくれたのか、巨大エトピリカがこっちに向かって飛んで来た。
「だめですよ」
ゾクリとして振り返るとオオミが居た。今のこいつの声か? 低くて冷たくて、機械の声みたく聞こえた。
「まだ行ってはだめです」
どこも触られていないのに、押さえつけられているように動けない。その時直ぐ近くで翼の音を聞いた。
初めて聞く音ではない。あの夜に耳元で鳴ったのと同じ音だ。
音のした方を見ると、赤い線で囲まれた黒い目と視線が重なった。それは一瞬だったんだろうか。時間の感覚から解放されたみたいに良くわからない。うっとりと目を合わせていた。
気がつくと鳥は去って、俺だけが船の縁にしがみついていた。




