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重なる心臓2

 今、温かい娯楽室のテーブルを前に、三人で重要な会議中みたいな神妙な顔を突き合わせて座っている。

 回収人の言ったことはショックだったが、何となく予感もしていたので僕は立ち直りが早かった。

 むしろ、アオチさんがまだ立ち直れずにいるのが心配だ。

「アオチさんのせいじゃないです」

「そうだよ、俺たちみんな勝手にこの船に乗ったんだ。気にするな」

 僕らがいくら声をかけてもアオチさんの表情は暗いままだ。

 回収人に乗り間違えを宣言されたあと、一応周囲を見回したが、少し前まで当たり前に足元にあった陸地の方が幻想だったのではないかと思うほど、どこまでも海しか見えず「降ろしてくれ」も「戻ってくれ」も諦めた。

 こうなったら、この船の向かう先と、あえて僕たちを乗せて出港した理由の二つが気になって仕方ない。

 恐る恐る回収人に尋ねると、当たり前のように「今から話す」と静かに言い、ここは寒いから娯楽室で待っているように促された。 そして自分は銃をしまってから向かうから、と先に甲板を去った。

 明らかに僕らとは異質の容貌ながら常識人っぽい振る舞いに、思わず素直に従った。

 ふと、娯楽室に置いてあった、古いけれど手入れの行き届いた置時計を見ると十時三十七分だった。陸を離れてから二時間ほど経っている。僕らは今、どの海にいるんだろうーー。


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