船の全て2
この船は回収人の身体から出来ているのは、知っての通りだ。
俺たちはこの旅の中で、本体が最後の一人に誰を選ぶのかを待つ。別に本体自身が残る必要はないんだ。誰かに本体の座を譲っても良い。
回収人たちは、移動の準備に間に合うよう、船に残る人間が一人になるのを促す。――俺以外はな。
ローヌのやった、自分の血液を飲ませて自殺させるなんて方法は論外だが、別の見方をすれば優しいのかもしれないな。
本体の罪の意識は軽減されるだろう。自分が選んだ、自分が邪魔だと思って消した、そんな感情は薄いはずだ。
回収人に選ばれ、勝手に死んだ、そう思い込むこともできる。
ここに飛んで来た、黒いコスモスを胸に詰めた心臓喰い鳥、あいつを助けた少年の話をしたな。
あの子なんかは、船に乗った途端、直ぐに気がついた。
自分で選ばなくては、とな。回収人に負担をかけさせないように、自分であっという間に決着をつけた。
強い子だよ。強さは自分との闘いだと言うのは間違えじゃないな。むしろ言葉通りだ。
そして神様の体質の話になる。
お前らがーーいや俺たちが必死に抗っている例の「次に世界に連れて行けるのは一人だけ」というルールだ。
神様を責めないでやってくれ、と前に言ったよな。あれは本心からだ。そして本体のオゼも責めないでやって欲しい。こいつはこれからお前たち以上の重荷を背負って行くんだから。
俺の心臓を喰って助かった人間たちは、次の世界で二度と会えない。この話には続きがある。
オオミとアオチ、そしてマモルにとっては次の世界はただ、お互いに会えないだけの世界だ。自分の中にまたここと同じような仲間を住まわせることになるだろう。
問題は本体のオゼだ。俺が聞いた話が本当なら、本体はもう心の中に、自分の仲間を作ることは叶わない。次の世界で何度生まれ変わろうと、絶対に。
オゼにとっては本当の孤独がこれから始まるんだ。
これから神様がここまで来るとすれば、その目的は二つだ。
本体であるオゼを永遠の孤独から救うため、そして、俺を神様の身体の一部にして、回収人を辞めさせるためだ。
普段回収人は、移動が終わると神様の右手に戻って、次の移動に備える。
今回神様は俺をその役割から降ろす。最後に会った時、神様に言われた。「僕の左眼になって。これからはずっとそこに居て」ってな。
俺は自分のやっている事が酷いことだと自覚しつつも、まだ回収人を辞めたくないんだーー。




