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死の鳥3

 憑りつかれたように船の入口に向かって、人ひとり分の幅しかないステンレスだかアルミだか良くわからない素材の急な通路をアオチが上がって行く。

「おい、待てよ」

 いつも健康的なアオチの病人のような足取りが心配になり、後を追う。

「アオチさん!」

 オオミも続いて駆け上がってくる。通路が狭いせいで、アオチ、俺、オオミと連なって進んだ。後ろから「邪魔です」と言われているような強い圧を感じる。

「おい、押すなよ」

 そう言っているうちにやっと入口までついた。異常に長くかかった感じがした。思っていたより大きかったとは言え、たかが船だ。こんなグラウンドを何周かしたような気分になるだろうか。

「そこが地上の空気の吸い収めかもしれないから、しっかり吸い込んでおけ」

 突然掠れた男の声がして驚いた。

 目の前のアオチの背中で中が良く見えない。

「お前……誰だよ」

 言いながら大きく息を吸い込んでしまった。言いなりになったようで悔しい。

「それが地上での最後の汽笛」

 カサカサした声が楽しそうに言った。

「ちょっと……何なんですか」

 多分、俺より様子がわからないであろうオオミが後ろで背伸びをしているような気配がする。

 曖昧な場所に突っ立っていたアオチがやっと船内に足を踏み入れてくれたので、俺も続けて乗り込んだ。

「ここは狭いから気をつけろ」

 またハスキーな声の持ち主が言う。

「だから、どうしたんですか? 中に誰かいるんですか?」

 後ろから俺を押しのけて入ってきたオオミが一瞬押し黙る。

 が、次の瞬間にはアオチに駆け寄りその手首を握っていた。

 掠れ声の奴が言った通り、今俺たち四人が立っている場所は外階段の踊り場のような危うさで、予想外に激しく動くオオミが我を忘れていないか心配だ。

「アオチさん!」

 アオチの様子が明らかに変だった。

 オオミに身体を揺すられても一言も声を発しない。この得体の知れない男に憑りつかれてしまったようだ。そんな俺たちを無視してそいつは続けた。

「案内するよ」

「その前に、あんた本当に誰なんだ」

 意外そうな顔でそいつが言う。「知らないで乗って来たのか」と顔に描いてある。

「俺は心臓回収人だ」


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