三角五行1
三角五行 無言ちゃん
アオチさんは勘違いをしている。
わたしが霧の中に見たのは親友との思い出だったけれど、そこでずっと疑っていたことが確信に変わった。
きっと、この人だけが全く真実に気がついていない。
オゼさんはわたしに似ている。孤独に生きてきたことも、大事な人をこの船で失っているのも。
彼はどんな選択をするんだろう。他の二人のこと、マモルくんのこと。現実を受け入れて、諦めるのか、それとも自分を殺してでも他を救うのか。
わたしはどうだろう? アオチさんとじゃれているウルウを見て考える。わたしよりこの子の方が、次の世界に行くのにふさわしい。
回収人の心臓を分けてもらえば良いらしいけど、弱虫なわたし達の回収人が、そんな事をするとは思えない。
やっぱりわたしが、手から伸びる刃物でーー。
考えに耽っていると、マモルくんと話しているオオミくんの声がした。
この子とは夕方、船の中で話した。
とても勘の良い子で、なんならオゼさんより早くこの船の仕組みに気がついていた。
動揺はしていたけれど、それでも他の二人を守ろうとする姿勢は立派だし、何より自分を犠牲にしようなんて思っていないところが凄い。
自分も次の世界に行くと強く信じている。死にたがりのわたしやオゼさん、何も知らないアオチさんとは大違いだ。
マモルくんはどうだろう。この子はオゼさんに呼び戻された一度死んだ子。二度死んでしまったカオリさんのようになってしまうのか。
オゼさんは間違えている。オゼさんがカオリさんを二度殺したんじゃない。カオリさんは役目を果たしたから、私たちの前から去った。わたしの髪をずっと撫でていたカオリさん。まだ、あの感触が残っている。
カオリさんの役割はオゼさんを守ることだった。オゼさんが強くなったから、元居た場所へ還っただけ。マモルくんが泣かないのはそのことを知っているから。
わたしも心を決めよう。わたしにはもう守ってくれる人はいないから、ウルウを守って二人でーーいやここにいる三人とマモルくんと、誰も欠けることなく、次の世界に行く。
しばらく深夜の海にみんなで突っ立っていた。
神様の投げかけて来る罠がうるさくて、本来の海を忘れていた。
夜の海は艶めかしい黒。うねうねと誘うように揺れている。
「神様のいない海の方がきれい」
無意識に呟いていた。




