死の鳥2
アオチ
オオミが耳元で訳のわからない事を言っていたが、正直今はそれどころではなかった。
さっき船の横顔を見上げた時、そこに開く狭い入口に、死人を見たからだ。
しかも、他の二人の様子から察するに、あれに気が付いているのは俺だけだ。
死人と目が合った。氷が張り付いているような肌をしている。薄い灰色の、あんな作業服があるんだろか? つなぎの服に、同じ色の分厚いコートを羽織っている。
何歳だ? 灰色の髪に艶のない――瑞々しい死人などいないかも知れないけれどーー肌を見る限り年寄りに思えるが。ここからじゃ良くわからない。
そいつの口が「早く」という形で動いた。口の中が吸い込まれそうに暗い。日本人なのか? 彫が深いように見える。老人だとしたらーーその割にずいぶん背が高くて体格が良い。
――何で俺は今、怖くないんだ? 凄く懐かしい。
俺の祖父とか、子どもの頃近所に住んでいたじいさんに似ているとかじゃないのは確かだ。でも……今だって俺を呼んでいる。
足が勝手に船に向いてしまう。
船に近づくほどに足元がおぼつかなくなる俺に、オオミとオゼが不安気な視線を送っくているのを感じた。




