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四対四対一3

「そこて無言ちゃんに睡眠はイコール自殺と聞いたんです。それで、無我夢中でアオチさんを起こしに来たんです」

 アオチさんが珍しく無表情だ。形の良い唇が何か言いかけの彫刻のように見える。

「それで、無言ちゃんはどこに行った?」

「……僕だけ慌ててここに来ちゃって。、ドア越しの話の途中に別れた切りで、わかりません」

「じゃあオゼはどうした」

 アオチさんの声が向こうの船の中みたく無機質に響いた。いや、僕の後ろめたさのせいでそう聞こえるだけかも知れない。

「オゼさんなら……向こうの船にいます」

「どうして?」

 平坦な口調がやっぱり僕を責めているように感じる。

「……無言ちゃんが教えてくれたことがもう一つあって、僕たちは違う船の中にいる間は自分から生える刃に殺されることはないんです。実際、無言ちゃんはこっちの船に来てからぐっすり眠ってしまったのに、何も起こらなかったんです。なので、オゼさんは向こうの船に行ったんじゃないか、と言ってました。今頃、気持ち良く眠りの世界かも知れませんね」

 最後のは嫌味に聞こえたよな、僕はどんどんアオチさんに嫌われていく。恐る恐るアオチさんの表情を探る。

 ――やっぱり僕への疑いの色が滲んでいた。

「アオチさん、僕はただーー」

「四対四対一、どうしてそうなった?」

 静かにそう聞かれて、また穏やかな夜の始まりの海を恨んだ。

 耐えられなくなって立ち上がり、窓の外を見る。

 ここからは海しか見えない。気持ちが揺らいでしまう。あっちの船を見て気持ちをしっかり持たないと。

「アオチさん、食堂に行きませんか。僕、お腹が空きました」


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