四対四対一2
オゼさんが責任を果たしたというように、ふっと息をついて肩を降ろした。
「どういう意味ですか。何でオゼさんがそんな事、言い切れるんです」
「ローヌに聞いたんだよ」
「ローヌさんは向こうの回収人でしょ! 僕たちには関係ないじゃないですか!」
我を忘れて大きな声を上げてしまった。アオチさんが置いてかれるってどういうことだ?
「落ち着いてくれよ。俺はお前に……新しい世界に一緒に来て欲しいだけなんだから」
もう黙ってくれ、オゼさんを嫌いになりたくないのに! 乱れる呼吸を自覚しながら何とか答える。
「嫌です。僕もこっちの世界に残ります。それよりオゼさんとアオチさんを分けるものは何なんですか。僕が決まってないって意味もわからない」
しばらく沈黙があった。この船に乗ってから一番波の揺れを感じていた。雷雨の時よりずっと。
ピクリとも動かず、次のオゼさんの言葉を待つ。
「――ごめん、言えない」
「……出て行ってください」
自分でもびっくりするくらい冷たい声が出た。オゼさんが新しい世界に行くことは勘づいていた。それはいいんだ、でもアオチさんがこっちに残るのが決定しているなんて知らなかった。到底受け入れられない。
「オオミ、聞いてくれーー」
取り繕うとするオゼさんの腕を取ってドアまで引っ張った。広い部屋ではないから、ほんの一歩半くらいだったけど、僕よりずっと背の高いオゼさんが驚いた顔で言う。
「お前、すごい力だな。なあ、もう少し話を聞いてくれよ、ショックだと思うけど、わかってもらえると思う」
「聞きたくないんです!」
どうして僕は無駄に勘が良いんだろう。オゼさんの言おうとしている事が全部わかる訳じゃない。でもその風景の欠片が浮かんで、思い出したくないことまで思い出してしまう。今、外が嵐ならば良かったのに、こんなこと考えずに済んだかも知れないのに。
「お願いだから……」
すがるようなオゼさんの声が僕の耳を殴る。聞いていられなくて、そのまま勢いよくドアを閉めた。
オゼさんはしばらくそこに居たみたいだ。気配を感じていた。
ドアにもたれて呆然としていると、背中に控え目な振動が響いた。
オゼさんでないのはわかったので、振り返り、そっと扉を開ける。
そこにいたのが無言ちゃんだった。




