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【電子書籍・コミカライズ】心を閉ざした公爵閣下と婚約したはずなのに、なぜか大切にされてしまってます!  作者: 伊賀海栗


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第45話 私には私の役目があります


 初めてのパーティーを楽しんでいるうちに、加護魔法を競う大会のほうではスペシャリスト部門の準決勝までが終わったようでした。これよりジョエル様の出場する武闘部門、およびミリアムの出る技巧部門が並行して行われます。


 やっぱり魔術師の方々が競うと魔法のひとつひとつの威力や規模が大きくなるらしく、他の部門と同時に開催できないのだとか。どれくらい派手なんでしょうか、決勝戦はぜひ拝見したいものです!


 大会へ出場するため、ジョエル様が演武場へと向かわれます。こういった場に不慣れな私のために、ジョエル様がいらっしゃらない間はエレナがそばにいてくれることになりました。


「決勝が始まるまではわざわざ見に来なくていい。移動時間のほうが長くなるからな」


「すごい自信! ふふ、さすがジョエル様ですね。承知しました」


「エレナから離れないようにしてくれよ」


「は……わっ、もう、ジョエル様!」


 お返事をしようとした私の頬に触れながら、頭のてっぺんにキス。もー、今日のジョエル様は様子がおかしいと思います。全部大切な思い出にしようと思ってたのに、こんな様子では記憶を封印しないでって我が儘を言ってしまいそう。気を付けなくっちゃ。

 演武場へと向かうジョエル様の背中を見送って、切ない気持ちに蓋をしました。


 会場を振り返ってみればかなりの人が演武場へ移動したことがわかります。歓談していた時に誰もが口をそろえて言っていたのですけど、ジョエル様の出場が久しぶりなのでその雄姿を見たいのだとか。

 わかります、私も見たい! 本当なら予選から全部拝見したいのですけど、私には()()()()()()という大切なお仕事があるので……。


 それからほどなくして、エレナが自身のドレスにワインを盛大にこぼしました。着替えのためにエレナが控え室へと向かい、私はふらりと庭園を目指します。


 現状、ミリアムだけは言い逃れができる立場にあるのだと聞きました。誘拐の件はディエゴ卿の証言だけで証拠はありません。私を店から連れ出した少年も、依頼したのはディエゴ卿だったそうです。

 禁制品の密輸も指示をだしているのはお父様とお義母様ですから、ミリアムだけは知らぬ存ぜぬが通るだろうとのこと。ですからここで自白させるのが私の役目なのです。


 不安を抱えつつも事前に打ち合わせをしておいた所定の位置にたどり着くと、ホッと息がこぼれました。高さのある彫刻の周囲は開けていて視界も良好。少し離れた生垣などの陰に私を護衛するための銀竜騎士団の方々がいらっしゃるはずです。

 話を聞きだすというミッションですから、彼らは姿を隠している必要があるのですよね。そのためもしミリアムが突発的に危害を加えようとしたら間に合わない恐れがあり、自衛しなければなりません。うう、緊張してきた。


 ミリアムは本当に来るでしょうか。彼女の予選の順番は最後のほうにしてあるとファビオ殿下から伺っていますから、まだ時間的に余裕があるのは確かだと思いますけど。


 と、そのとき。背後から誰かの近づく足音と衣擦れの音が。


「お姉さま、改めてデビューおめでとう」


「……ミリアム」


 本当に来た! やって来たのは大会出場用のドレスへ着替えたミリアムでした。技巧部門は動きやすさより見栄えを重視するのか、美しいドレープのタフタに妖精の羽のようなシフォンが重ねられています。


「ちょっと話があるのよ。婚約の話は今することでもないでしょうし後日改めるとして、至急の話よ」


 思ったより大人しい雰囲気のミリアムですが、婚約の話は諦めてなかったんですね。ちょっと驚きました。まだ彼女にとって起死回生のチャンスがあるってことかしら? まぁ、阻止しますけど。

 とは言え別件で一体どんな話があるというのか、見当がつきません。まさか誘拐の話を自分からペラペラ喋ってくれるとか……?


 ロヴァッティ伯爵から譲り受けた扇を広げ、頷いて先を促します。


「お父さまが言ってたの、今あたしたちが加護魔法を上手に扱えないのはお姉さまのせいだって」


「どういうこと?」


「今まではお姉さまがあたしたちに凄い力を使わせていたんでしょう? あたしたちは知らず知らずのうちにそれに慣らされてたってことじゃない。なのに今さら魔法を上手に使わせないってのは酷いわ。責任持って今後もずっとどうにかしなさいよ」


 なるほどっ?

 あー、なるほどー、そういうことでしたかー。これから予選が始まるんですものね。いつも好成績を残しているのに、失敗するわけにはいかないと。なるほどー。しかもなんかいい感じに被害者ぶってますね、凄い!


「そういった能力が私にあることは、私も最近知ったの。でもね、ミリアム。今までが良くなかっただけで、今後は是正していかないと」


「何言ってるの? あたしは、誰にもできない繊細なコントロールで蝶や花を作って、喜ばれてきたの。アンタと違ってあたしはそれを期待されてるの。そうさせたのはアンタなのよ?」


「ええとね、この件はもう王家もご存じなの。それでね、今年から演武場には他者による強化系の術式を弾く結界を設置してあるそうよ。だからもし私があなたの魔法を強化したとしても、それが大会に活かされることはないの」


「は?」


 みるみるうちにミリアムの表情が険しくなっていきます。

 どうしましょう、このままでは聞きたいことが聞きだせないかもしれません!




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― 新着の感想 ―
[一言] コレは教育やろなあ( ˘ω˘ )
[良い点] おおう! 囮役なのか! これはハラハラします。 (((;゜Д゜)))ドキドキ
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