第2話 村が襲われると思うから行ってくる少女……
2羽目
あれから1週間と5日ほどたった今日。いつもと違う雰囲気の少女が教会から出て来ていた。棚にあった貴重な魔物の素材を使った装備の[魔導師の〜シリーズ]に身を纏い、腰にはミスリルを使ったショートソードより短く、ナイフより長い剣、武器名は[ハーフソード]を左右で抜ける様に刺し、オシャレ装備のネコミミフード付きの外套[迷い猫の外套]のフードを深く被り、呟いた。
「今日が、襲撃日。絶対に守る」
無駄にシリアスで決意を秘めた眼がフードからチラチラと見え、その外套は溢れんばかりの闘志によってバサバサと揺れる。
そして少女は振り返り、
「ありがとう、ココは今日でお別れ……だけど悪いヤツが使えない様に結界を張って……これで良し」
気合いバリバリの結界を張った。並の魔法使いが結界を破っても迎撃魔法でぶっ飛ばされ、すり抜けても電撃を喰らった後に吹き飛ばされ、しかも破られても1時間で全て修復されるというやべー結界に仕上がっていた。
結界の出来を見て満足そうに頷いていた少女はパチンと頬を叩き一言、
「村の人達は、私が守る!」
と言ってから村へ向けて走り出した。
村へ走り出してから二十分もしない内に村の入口付近まで辿り着いた。幸い、魔族は近くに居ない様で、中からは子供の無邪気な声が聞こえて来た。
その声に間に合った、と少女が安堵の溜息を吐きそうになった瞬間、ガサガサガサ!!と遠い茂みが鳴り村の門番が持っていた槍を向ける。
そこから現れたのはゴブリン。そう、本編ではこのゴブリン達のせいで村が滅び、主人公の幼馴染や母親等の女達全てがプレイヤーの予想通りの結末を迎えていた。
それを仄めかされていたゲームのシーンにプレイヤーからクリエイターへ通報があったくらいだ。
そして現れた数匹のゴブリンを門番が相手をしている内にゴブリンはどんどんその数を増やし、その数を50匹位にまで増やしたその時、1人の門番が体制を崩し、ゴブリンに殺されそうになった―――
「大丈夫!?これからは私が相手よ!」
一瞬でその門番とゴブリンの間に入り込み、その威力でゴブリンに足技を喰らわせ、他のゴブリンに小さな雷を落とす魔法で威嚇して、少女はそう言った。
最も、半数のゴブリンはついさっきの威嚇攻撃を耐えきれずに死に、残ったゴブリンのかなりの数が重症で動けなくなっていたが……
「そこそこ弱いね。だからって見逃す訳には行かないからとっととくたばってもらうわ!」
そう言うと少女の魔力が昂り、ゴブリンに狙いを定め雷を落とした。
門の前の門番はその余りの強さに呆然とし、近くに居た門番は落雷の音で目を回した。
「ふぅ、間に合ってよかったわ!」
そう言って顔の見えないフードの中で笑うが、さっさと出て行けば門番が危ない目に遭う事すら無かったのだが……これは言わぬが花である。
「なっ!何者だ貴様!この四天王最弱のトラーガ様の配下のブーガ様の配下であるコブンヌ様の計画をよくも台無しにしてくれたな!許さん、許さんぞぉぉ!!」
突然現れた大人2人分位の背の高さのゴブリン、恐らく種族はゴブリンキングかロードと言った所。
「え?四天王最弱ってww……その部下の部下って……アッハハハ!おっかしい!上司の上司を最弱って……」
少女がツボったのはそこ、仮にも上司の上司に対して最弱と言うのはその上司が残念過ぎるだろう。
そして無視されている事に余計にキレるゴブンヌ。
「き、ききき、貴様ァ!許さん!ブチ⚫して⚫したあと人の見える場所で磔にしてやるぅあアア!!」
激高してピー音が入るほどの暴言を吐くゴブンヌ。
少女に掴みかかろうとするも、ドタドタという足取りの重さからヒョイッと避けられると抜き出した剣でザクッザクッザクッと急所に切りつけた。
「左脚付け根とお腹、それに首の重要な血管を切ったから歩く事所か息すらし辛いでしょう。今、楽にしてあげる」
一瞬の間に左脚付け根を斬り、そのままの勢いで腹を斬り、返す剣で首筋を斬った。
辛そうにするゴブンヌの首を楽に死ねる様に一太刀で切り落とした。
その手は震えていたが、1回だけギュッと握りしめ、再び開けた時にはもう震えていなかった。
フードの中には一筋光る物が流れた。