第1話 村の近くにある教会に居る少女……
久しぶりです。
早朝の優しい木漏れ日、神々しくも時代を感じさせる程古びた教会。木の葉の奏でる音楽、それを聞きながら木剣を一心不乱に振る少女。少女は白銀の髪を一括りにした髪を風に靡かせて強い意志を感じさせる蒼色の瞳で正面を睨み付けながら、数字を数える声は凛々しく……。だか、その数字は異次元の物だった。
「99994、99995、99996、99997、99998、99999……100000!!!」
全身に珠の様な汗を浮かべ、肩で息をしてもその身体は厳しい鍛錬にも負けず、ふらりとよろめきすらしない。
そればかりか持っていた木剣を教会に立て掛けたかと思うと1周500メートルはある協会の周りをグルグルと回り出した。1時間後と少し後……
「200、周……目!!終わり!」
そう言って流石に疲れたのか、深呼吸をしながら何かを念じた。すると目の前に水玉が浮かび、それに直接口をつけてゴクゴクと飲んだ。
「ぷはー!それなりに冷たーい。給水の魔法は完璧に出来るし、アレンジも出来てる!!」
ウンウンと頷きながら自分の魔法の腕前を確認し、出来たら一端の魔法使いと呼ばれる程完璧に魔法を使える所か、冷たくするという賢者級の難しい魔法技術を扱って見せていた。そして今は身体の中の魔力を操りながら小さい魔法を発動したり消したりを繰り返していた。と、そこまで笑顔だったが不意に顔を曇らせて、
「うーん、これからどうするかなぁ。恐らくだけど後2週間もしないうちにあの村が襲われて……」
と言った。あの村とは恐らくこの教会がある森の麓に出来ている開拓村の事で、偶に旅人として物資を買いに行ったりしている村だ。そんな面識がある村が襲われる事を何故少女が知っているのかと言うと……
「恐らくこの世界は……「魔王に故郷を滅ぼされたので強くなって復習します」っていう結構なインディーゲームの世界だよな……そして、恐らく襲われる村はあの村……ちょくちょく言って調べたら、村長さんの名前が一致、主人公親の名前も知り合いの名前も一致。……はぁ、て事はやっぱりあの村が襲われるんだ」
と、言う訳なのだ。この少女、ゲーム好きがラノベの様にトラックに吹き飛ばされこの世界に転生したのだ。だが、一つ誤算があった。それは……
「こんな何処に居るモブ(自分の事)なんていたか?」
自分の事であった。そう、こんな所にある教会なんてイベントが沢山ありそうなのに、ゲームでは実装されて無かった。更にこんな美少女がゲームには存在すら無かった。
「やっぱり名前、考えとかないとなぁ」
そう言って魔力操作をやめて教会の中へ入っていった。
中は聖堂があり、奥の左右に神官が寝泊まり場所、倉庫や書斎、台所等の物を作る器具がある場所に別れていた。左が寝る場所で右が倉庫等の部屋だ。少女は右の通路に出て、書斎へ行く。
書斎には沢山の本があり、魔法の事が書かれている魔導書や沢山の国の歴史の本、他にも武術や薬学、礼法の事まで多岐に渡る本が置かれている。
とある本棚にある本を2回引いて押してを繰り返し、魔力を流すとガコンッ!ズズズ……と、本棚の後ろの壁が後ろへ外れ、横にスライドした。現れた階段をコツコツと鳴る足音を気にしながら降りる。そして、見えて来た特殊なドアを魔力で解錠し、中へ入る
「はぁ〜、やっぱりここは何度見ても凄いや……。鍛冶師が飛び付くだろう鍛冶場に錬金術師が涎を垂らすだろう器具の数々……職人によって工房をキチンと分けられてるからさらに凄いんだけどね……他の職人にも対応した場所があるけど、今用があるのはこの錬金術師が羨む設備がある工房、ここでポーションを作っておこうか」
見えてきたのは沢山の機材が詰まった職人が見たらこの工房じゃなきゃヤダー!と、幼児退行する位のレベルの工房だった。
そして目当ての錬金工房の中へ入ると目に入る魔法陣や少女が3人は余裕で入る大きな釜、フラスコにポーション瓶。沢山の材料がある棚。
そして少女は棚から必要な材料を取り出し、2つのフラスコと他の器具を取り出し、魔法陣の中に入れて魔法陣を発動する。するとそれぞれのフラスコに薄緑の粉と、明るい緑の粉が出来た。
それを何回か繰り返し、釜を魔法の給水で3分の2程入れ、グツグツと煮込む。自動で掻き回す掻き混ぜ棒を鍋に突っ込み火加減を調節しながら少女は考えている。
「多分だけどここ、エンドコンテンツっぽいんだよなぁ。魔王を倒した後、村の周辺を見回っていたら見つけて……ゲームに職人システムがあったから、伝説の〜〜みたいな感じで終わるんじゃないかなぁ。そんな感じのボーナスみたいな扱いなんじゃ無いのだろうか此処は……。まぁここに住み着いてる私は何者なのかって話なんだけどさ……」
そして少女は自分なりの予想を組み立てて、寂しそうにふっ…と笑っていた。
こんな感じでしたかね?