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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第4章 光と闇を抱く者 
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Act 6 一つの希望

ミハルが気を失うと現れるレィの記憶たましい


以前とは違い、なぜか暗くて。

しかも何かを謀っているかのよう・・・


ミハルとの対比が、まるで光と闇にも思えてしまうのだが?

月明かりに照らされた一人の影。


蒼髪が元の蒼銀髪に戻るのに併せて、顔に掛かっていた翳りも薄れて行く。


「宿命は消えていない・・・果たさねばならない」


俯き加減の口元から漏れ出るのは戦闘人形バトルドールレィの声色。


「こいつ等の仲間を打ち破って、奴の元へと辿り着かなければならない」


足元に転がる、破壊された人形を見据えて。


「この躰で闘うのにも慣れて来た。

 本来の力には及ばないが、並みの傀儡にんぎょうならば十分抗し切れる」


格闘の末、エネミー人形ドールを叩きのめした。

素手であろうと機械の人形を破壊し尽くす事が出来たのだ。


「これで武器を手に出来たのなら、手強い相手だろうと臆する必要はない」


敵同様に武器を携えれば、ナンバー付きの戦闘人形であろうと互角の戦いに持って行けるのだと言う。


「それと・・・後は。

 いつこの身体を支配するかだが・・・」


いつ本来のレィとなるか、どのタイミングで戦闘人形に戻るのか。


「あいつは私の本性を知っていて、助けるフリをみせた。

 しかも一部の記憶たましいを封印するような真似までしやがったんだ」


足元に転がる人形のむくろの傍に控える者へと手を伸ばし、


「そうだろグランド?

 君は何もかも観て来たから教えてくれたんだろ。

 あいつが何かを企んでいるって・・・」


今はグランと呼ばれている友の頭に手を添えるのだった。


犬型戦闘人形グランは、レィの手と繋がると友顔を見上げる。


「がぅぅ~~~(そうさ、レィ!ルシフォルと名乗る混合体キメラは何かを狙っているんだ)」


傍で聴いたら唸りにしか聞こえないだろうが、繋げた手を通して人の言葉が相手に伝えられる。


「が~うがう!(でも、まだ何が狙いでどうしようとしているのかが分からないんだ)」


困ったように唸るグランに、


「そうか・・・ならば。今暫くは様子見に徹しなければな」


表の顔として、ミハルで居ようと応える。

だがグランドである犬型の戦闘人形は。


「がう!がう~?(いっその事!アイツをヤッテしまわないか?)」


束縛を逃れて、一刻も早く宿命を果そうと勧めるのだ。


「慌てちゃ駄目だグランド。

 君はグランのままで居ろ。私はミハルを名乗り続ける。

 なぜなら、あの男はタナトスとの因縁を持っているのだから。

 僅かでもタナトスとの勝負に利用出来るのなら、壊すのはその後でも良いんだ」


しかし、レィは敢えて敵をして利すると言うのだ。


「いつかは奴の狙いが判明するだろう。

 その時までは表の顔で接すれば良いんだ、どうせ本気じゃないのだろうしな」


しかも、ミハルの心までも利用するとも言った。


「アイツを愛した・・・ミハルという仮の姿を見せ続けておけば良いんだよ」


「がうぅ~(そうか、レィが愛しているのは一人だけだもんな)」


グランドもレィが心変わりをしていないのを確証し、


「がうがう~?(しかしレィに戻れるのがミハルが気絶した時だけなのが問題だね?)」


出現出来るタイミングが限られていると注意した。


「それは・・・まぁ。確かに問題だよな」


口を歪めて認めるレィだったが、


「ミハルという娘が、損な体質で良かったとでも言っておこうか」


いつもあっさり気絶してくれるからと嗤い返した。





戦闘人形バトルドールレィが犬型戦闘人形ドッグドールグランと佇んでいる後ろから。


「起きていたようじゃのぅ娘さん?」


医師クーロブ爺が声をかけて来た。


「うむ?」


月明かりに照らされた庭先に観えるのは、ミハルとグラン、それに・・・


「おや?その男は・・・お前さんが?!」


ミハルの足元に転がる残骸を見つけて訊いてくると。


「あ?いえ、気が付いたらこんな状況だったのです」


自分も今気が付いた処だと答えて。


「どうやらグランが、襲い掛かって来た男型人形をやっつけてくれたみたいなのです」


気を失っていた自分を守ってくれたのだと、ミハルが答えると。


「なるほど、さすがは狩猟犬といった処かのぅ」


あっさりクーロブ爺は認めて、


「それはそうと。

 ミルアがお前さんを呼んどるぞ。

 あの娘が目覚めたようだからのぅ」


家の中で待っていると教えて来た。


「えッ?!マリーちゃんが目覚められたのですね?」


「ほっほっほっ。お礼を言いたいんじゃろう」


飛び跳ねるようにミハルが家へと駆け込むのに道を譲るクーロブ爺。


「慌てんでも・・・お?!」


ドアを破るくらいの勢いで駆け込もうとしたミハルだったが?



 バチコーン!



「自動ドアなんじゃが・・・」


ガラスの扉に顔からぶつかった娘へと。


「遅かったかのぅ・・・」


信じられないものを見る様な、呆れ果てた顏を向けていた。




「はらひれ・・・きゅぅ~」


顔面を強打してしまった損な子が、ふらふらとリビングへと入ってみれば。



「あ・・・ドラム缶娘だ」


ミルアが呆れた様なジト目で観ていた。


「うん、確かにそうねミルア」


その傍に居るのは・・・


「マリーちゃん?!」


名を叫んだミハルの目に映るのは、群青色の瞳を輝かせるマリーベル。


「操られなくなったのね!」


闇色むらさきの髪、白い肌。そして人一倍大きい目をした少女人形が笑っている。


「おかげさまで、ミハルお姉さん」


外で聴いた金属製の音声ではなく、明るい少女らしい声が返される。


「自分の意識で話せるのね?」


人形というよりは人の意識を持つようにも感じてしまう。


「人と同じように・・・自分で考えたのを言葉に出来るのね?」


「ええ。元々私には対話出来る人工頭脳を搭載されていましたし。

 ママやパパがいろんなお話をしてくれましたから」


自意識により対話が可能で、しかもミルアの両親から話し方まで教わったという。

それに・・・ミルアの両親をパパ、ママと呼んだのだ。


「そっか・・・あなたには両親が居たのね。

 ミルアちゃんと同じ・・・姉妹としての両親が」


姉妹だと言っていたミルアも。

嘘偽りなく、マリーも認めていたのだと分かり、


「辛かったわね、二人共」


犯行によって両親が亡くなったのを悔やみ、


「でも、御両親は天国で喜ばれているわ。二人が元に戻れて」


二人の仲が元の鞘に収まったのを祝うのだった。


祝うミハルに、二人が顔を併せて頷いた。


「ありがとうミハル姉」


感謝の言葉がミルアから贈られて。


「助けて頂いてありがとうございました」


悪夢から救ってくれたとマリーが喜んだ。


「あ・・・いやそれは。

 私は何も出来なかったから・・・ね?」


単にドラム缶娘となって掴みかかっただけだったから・・・とは、言わない。


「カメさんを捕まえた作戦を考案しただけだから・・・」


立案した計画が巧くいっただけだと謙遜したら。


「そうじゃないだろ、身体を張ったじゃないかミハルは」


どこまで聴いていたのか、不意にルシフォルが口を挟む。


「電撃を喰らって気絶する位、真摯に向き合っていたじゃないか」


「え・・・まぁ。その・・・気絶したのはドジでしたけど。あはは」


苦笑いで誤魔化そうとするミハルの肩に手を置いたルシフォルが、


「それはマルアちゃんとマリーちゃんを想ったからこそだろ。

 二人の仲を取り戻す為に、必死になっていたからだろう?」


ミハルの蒼い瞳へと語り掛ける。


「ミハルは二人の想いを自分のことのように思った。

 奪われそうになっているマリーちゃんの想いを繋ぎ止め、

 失いかけているミルアちゃんの希望を叶えようと。

 誰の為でもなく、それは失いかけた自分を取り戻す為だったのではないのかい?」


紅い瞳のルシフォルが訊く。

蒼い瞳の中に居る記憶たましいへと。


「そんなことは・・・」


真剣な眼差しで質され、真摯な言葉で訊かれて。


「私には、たった一つだけの約束があるのですから」


失った物よりも大切な約束があると答え、


「それにルシフォルさんが居て下さるのですから・・・」


今は大事な人の傍に居られるからと、


「今の私には、失った物より大切な人が居ますから」


肩に載せられたルシフォルの手に、細い指を併せて微笑むのだった。



「ミハル姉って・・・好き好き光線放ちっぱなしだよね~」


「うん、惚気のろけられちゃうとぶん殴りたくなるね」


ミルアとマリーがぶぅぶぅ囃し立てる。


「そうじゃのぅ。

 致すのならダブルベットでも用意するかのぅ?」


で・・・何てことを言うんだ、この爺は!


「お前さん方を連れて来れて良かったんじゃ。

 ミルアもマリーも。人の子も機械の子も救えたのじゃから」


でも、感謝の言葉には裏表がなくて。


「この世界も、やがては二人のような仲に為れれば良いがのぅ」


人も機械も分け隔てなく、


「それが本当の未来あすであれば、救われるじゃろうがのぅ」


温かく接する事が出来たのなら、幸せな未来が来るだろうと。


「はい!そうですよねクーロブお爺さん」


大きく頷いたミハルが、


「うん!そうだよね」


マリーと目を併せるミルアが、


「きっとそうだね!」


人形として産まれた姉妹のマリーが。


「いつの日にかは希望(デザイア)が叶うんだ!」


微笑み合って人と機械の共存が未来なのだと声を揃えるのだった・・・



ミハルの中に潜むレィ。

でもルシフォルには分かっている?

そうなるように仕向けていたのか?


二人が騙し合っているのを、ミハルだけが知らない。

いつの日にか、ミハルはレィの記憶と替わってしまうのだろうか?

それは・・・いつだろうか?


次回 Act 7 陽に染められて

旅立ちは朝日の下で。

陽の光に照らされて、ミハルは希望の明日を夢見るのだった・・・

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