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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第4章 光と闇を抱く者 
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Act5 黒き蟠り

作戦は成功裏に終えられた・・・が?


立案者のミハルは・・・とばっちりを受けて?


卒倒しているんですけど??

草むらに静けさが戻った。


「片付いたようだな、グラン?」


「がうう~!」


3体の機械兵はルシフォルとグランに拠って仕留められた。


手にしていた自動拳銃の弾倉を引き抜き、残りの弾丸数を数えたルシフォルが。


「残りは鞄の中の12発と、ここの3発だけか。

 焼夷弾が残っている間に辿り着かなければな」


旅の終末点まで残っているのかを不安に感じていた。




「もぅ!ミハル姉ってばぁ!」


ドラム缶娘を揺り起こすミルア。


「・・・・」


でも、損な娘は眼を廻したまま。


「ちょっとくらいタイミングが早かったとは思うけど。

 私の手がマリーに当たったのを観ていたじゃないのぉ?!」


電気ショックをマリーと共に受けてしまったミハルに言い訳をしても後の祭り状態。


と、そこへ。


「巧くいったようだね・・・って?

 あれ?どうしてミハルも眼を廻してるの?」


何も知らないような顏でルシフォルが現れた。


「確かカメさんを捕まえた作戦では、ミハルは手を放す筈だったんだが?」


「手を離したからスイッチを入れたのに・・・このドラム缶娘ときたら」


ミルアが言い訳ついでにミハルを指して。


「ぶっといドラム缶がまだマリーにくっついていたのよねぇ」


手を離しただけでスイッチを入れたのは作戦で決められていたからでもあり、自分の失策ではないと言い募る。

ドラム缶は金属で出来ており、電気を通す性質を持っていたから・・・


「なるほどね、ミルアちゃんは言われていた通りにスイッチを押した・・・でも。

 ミハルの身体は離れていなかったんだね。

 いやはや、ドラム缶娘はドジっ子だった・・・と」


はぁ~・・・っと、大きなため息を吐くルシフォルとミルア。


「さて・・・と。

 ドジッは蚊帳の外にして。

 早速マリー君の補修作業にかからないとね」


「えっと・・・はい」


ルシフォルが戦闘人形マリーベルを抱えてクーロブ爺の家へと運び始めるのに連添うミルアだったが。


「あのぉ?ミハル姉は?」


倒れたままのドラム缶娘を気にかけているようだ。


「暫くあのままにしておけば、自然と目が覚めるよ・・・多分」


「多分って?良いんですか彼氏さんなんでしょう?」


ほっとけば良いと言ったルシフォルとミハルを見比べて、少しだけ同情するミルアだった。


「ああ見えても、ミハルの身体は頑強なんだよ」


「鬼ですか。ルシフォルお兄さんは」


びっくりするやら呆れるやら。

でも、それだけ信頼しているのだろうと勝手に思い込むのはミルアが少女だった証か。


「さぁさぁ!早くしないとマリー君が起きてしまうよ」


今はマリーへの処理が優先だと、足を速めてクーロブ爺の待っている家の中へと入って行った。


「ミハル姉・・・ごめんね」


その後を追いかけるミルアも・・・・




ー ・・・・鬼ですかあなた達は?!


電気ショックを受けたミハルは、確かに眼を廻して卒倒したのだが。

ミハルの意識が飛んだ瞬間、もう一人が目覚めていた。


今回は怒りの感情ではなく、単なる意識の混濁が現世への扉を開いたようだが。


ー ホント、操られるのって嫌な気分よね。

  自分では何ともし難いって、悲しくなるわよね・・・


マリーベルとか言った子を観て、自分も同じように感じていたのを思い出した。


ー 操られている真似をするのも、傀儡にんぎょうとして存在するのも。

  人であろうが機械であろうが、嫌なものは変わりがないわ!


本意とは違う事をやらされ、意に反した結末を迎えるのは堪え難いのだと。


ー マリーベルはまだ救いがあったのよね。

  優しい人の手に還れたのだから・・・


同じ体に宿った、もう一つの記憶たましいに因って救われたのを。


ー 羨ましい・・・妬ましい位に!


嫉んでしまうのは、まだこんな体の中で隠匿しているから。

マリーベルを憎んだのではない、唯大切な約束を守るようになるのが羨ましく思えただけ。


ー でも・・・心の中が痛む。

  だけど、黒い感情が敵を求める・・・


戦闘人形としての記憶たましいが敵を求める?

それとも心のわだかまりが悪意に染まろうとしているのか。


ー 苛立ちを覚え、破壊衝動が湧いてくる。

  私はアイツを壊してやりたい・・・元の身体を手に出来たのなら・・・


黒い感情とは、恨んだ死神人形へと向けられているだけなのか?

それとも果たせなかった想いが、闇を引き込んでいるのか。


ー このまま旅を続けていれば、必ずアークナイトの戦闘人形にも出会えよう。

  その時こそが、宿り直すチャンスなのだ。

  この中途半端な性能ではなく、完全なる戦闘人形へと乗り移ってやれば良いんだ!


ミハルの身体に隠れているのは、完全な戦闘人形へとなる為だと言う。

その為の旅でもあり、死神人形を倒す目的と重なると嘯くのだ。





 ズザ・・・ザザザ・・・



ミハルの倒れている庭先に、風も無いのに草むらが揺れる音が。


ー ほぅ?送り狼ならぬ後衛が来たか・・・


聴覚を戦闘人形のそれに併せたレィの記憶たましい)が。


ー やって来たのは・・・人形ドールらしいな?!


敵の足音で識別して。


ー マリーの通信が途絶えたのを嗅ぎつけて来たのか、ハイエナめ!


迫り来る脅威の対象に敵愾心を燃やして。


ー ふ・・・ちょうど良い処に現れたな。

  私の怒りをぶつけられるとも知らないで・・・



眼を廻して倒れていたミハルの髪色が蒼さを増していく。

それに準じて瞳の色も・・・





 ザザザ・・・


草むらを駆け回っていた足音が、3体の破壊された機械兵の元へと辿り着く。


「「味方の機械兵は悉く破壊された。指揮官のマリーベルの姿は何処にもない」」


辺りを探索サーチする男型の人形ドールが、明かりの燈っている家を観る。


「「あの中に・・・反応が・・・」」


もっと接近して内部の情報を集めようと動く・・・瞬間。



 ザゥッ!


背後から何者かが飛び上がった。


急接近したのは機械の身体を持つ者の反応が返って来たが、それは探しているマリーベルとは明らかに違った。


「「誰だ?どこの部隊に属している?」」


機械の仲間だとの判断から、所属を質したのだったが。




 ドンッ!




問答無用でパンチを見舞って来られては。


「「敵・・・だと、判断するぞ」」


応戦の構えを執るのが常識だろう。


「答えてやろうか。

 私はプロトタイプだったゼロ

 お前等とは元から敵の・・・戦闘人形バトルドールの・・・レィだ!」


「「バ、戦闘人形バトルドールレィ・・・だとぉ?」」


男型の人形は、相手が観たことも無い乙女型の人形ドールと聴いて戸惑ったようだ。


「そうさ!お前等に恨みを抱く戦闘人形だと覚えておけ。

 尤も、直ぐに引導を渡してやるけどな!」


夜空から零れ落ちる月の灯りに浮かんだ<レィ>を名乗る人形が、敵を睨んで右手を突き上げる。


「「バ・・・馬鹿な?その手に燈るのは?!」


翠の輝き・・・それに。


「「ナンバー付き?!」」


ゼロを表す数字の<0>が浮かんでいた。


「気付くのが遅すぎたようだな・・・」


影を纏う貌に浮かんだ歪な笑みが、男型の人形へと向けられて。


「お前は・・・痛痒を感じられない体だろう?

 それなら・・・叩き潰したって構わないよなぁ?」


ニヤリと白い歯を剥いて嘲笑うのだった・・・・





庭で何かの物音が聞こえた。

部屋の中迄も微かに聞こえて来た、金属が潰れる様な異音が。


「あれ?表で何かが倒れたのかな?」


ミルアの耳にも聞こえたようだが。


「ほらミルアちゃん、しっかり見ていないと!」


ルシフォルがマリーの回路を操りながら促して来るから。


「あ?!はい!」


音なんかを気にかけている暇が無くなる。

体の機能を麻痺された状態で、戦闘人形マリーベルは少女人形のマリーへと戻るように機能の一部を改変されていた。

その作業中に聞こえて来たのがミハルによってなのだと知っていたのは・・・


ー ふふふ・・・やはり彼女が目覚めているようだな。

  ボクには感じられるんだよ、君がもう一度手にしようと藻掻いているのがね・・・


作業を続け乍ら、ルシフォルは誰にも知られないように頭脳の中で細く笑んでいた。

ミハルの中に宿るレィの記憶たましい・・・


戦闘人形だったころの記憶が、悪意に染まろうとしているのか?

それとも本来が恨みを抱いているだけなのか?


優しいミハルか、それとも猛々しいレィなのか。

いつか本性を剥くのはどちらだろう・・・


次回 Act 6 一つの希望

目覚めた少女は大切な人の傍に。人と機械の絆を希望に換えて・・・

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