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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第4章 光と闇を抱く者 
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Act4 カメさんを捕まえた作戦?!

ミルアの心を知ったミハル。

助けてと懇願した子に、何が出来るのか?


導き出した計画。

ミハルが立案したのは<カメさんを捕まえた作戦>?!

草原の一軒家に夜が訪れた。


辺りの草むらが夜風に吹かれてざわめいている。

その音の中に・・・



 さわ・・・<ザッ>さわ・・・さわ・・・<ザザッ>・・・



草を掻き分けて進み来る足音が?




「がぅ!」


小さく吠えるグラン。

夜目の効く犬型ロボットが、何かを捉えたようだ。


「がぅががうッ!」


自分の見ている方に注意しろとばかりに吠えて来る。

その草むらを紅い瞳が観て、


「来たようだねグラン」


暗視ゴーグルを被り直した。


戦闘用に造られた暗視ゴーグルに、動点が表示される。

その数は・・・


「1・・・2・・・3・・・合せて3体。他にはいないみたいだね」


黒い影が3つ。それぞれが目標と認識されているようだ。


「影の大きさからみて、あれは機械兵だな」


斥候として現れたのか、それとも3体だけで十分との判断なのかは分かりかねたが。


「グランとボクの相手は決まったね」


迫って来る機械兵を相手にする気だと?


「がうがうぅ~?」


でも、物足りないのかグランが機械兵とは反対の方に首を廻して唸ると。


「ああ、あっちはミハルだけで進めれば良いんだよ」


腰のホルスターから自動拳銃を掴み出したルシフォルが言い切った。


「今の彼女なら、やり遂げられる筈さ」


「がぅぅ~ん?」


でも、グランは心配気に闇の中を伺っているが?




その闇の先では・・・


「んふふふふッ!槍でも鉄砲でも持って来なさいよってば」


クーロブ爺の家の前。

広い庭先に観える大きな影が、含み笑いを溢しているのだが?


「あ~のぉ~ねぇ、ミハル姉。

 どうしてそんな恰好に??」


呆れ果てたのか、ミルアがため息を吐きながら訊いている。


「ふッ!これならどう見ても機械兵の類にしか見えないでしょ?」


「・・・どこが」


ジト目で観ているミルアの前に居るのはミハルなのだが、その格好ときたら。


「フフ!ドラム缶に雨樋、それにバケツ。

 私には機械兵に化けれる能力があったんだわ!」


「・・・誰に?」


胴にドラム缶、両手両足に樋を填め、頭に被ったバケツが・・・痛いのですけど?


「どこから観たって機械兵だわ!」


「どこから見ても・・・只の案山子」


呆れ果てて頭が痛くなったミルアがどうでも良い物を見る目になって。


「絶対に人選を誤ったんだわ」


これならルシフォルとグランをこちらに備えさせた方が良かったなと思う・・・のは、間違ってはいなさそう。


「私は機械兵だ。誰が観たって機械兵なのっ」


当のミハルさえもこの調子なのだから。


( ^ω^)・・・



眼をグルグル回して、緊張しているミハルの耳にもそれが聞こえて来た。



 ざわ・・・ザッ・・・さわ・・・ザッ・・・



ー 来たッ!とうとう来ちゃったんだ!


草を掻き分けて進む音。

相手はワザと音をたててやって来ている。


それは自分が此処に居るのを相手にも知らせる行為でしかないが。


「小鬼だ・・・少女の容の小鬼だ」


クーロブ爺の口癖を真似て、ミハルは現れた相手を見続ける。


闇色の髪。

陰ではっきりとはしないが、瞳には蒼さが見て取れた。


「あれが戦闘人形のマリーベル?」


身長はおよそミルアと同じ150センチ程。

少女を模して造られただけあって、華奢な体躯。


ー あの体つきなら、パワーはそれほどでもなさそうだけど。

  機動力は想像を超えているかもしれないわね・・・


小さめの躰故に、小回りが効きそうに思えて。


ー 捕まえるには、余程奇襲を加えなければ難しいのかも・・・


どうやらカモフラージュしているのは捕まえる気だったようだが。



 ジャリリ・・・



マリーベルと思われる少女型人形が得物である鞭を携えて・・・


「へッ?!」


ヘンテコな姿をしていたミハルへと?!



 ビシャンッ!



問答無用で撃ち当てて来た。


ー ひぃいいいいぃッ?


撓る鞭がミハルの胴目掛けて飛んで来たのだ。



 ガッ!キィン・・・



ドラム缶に衝撃が奔り、金属音が流れ出る。


ー ひぃやぁッ?!危なかった。

  もし素肌だったら一撃で切り裂かれちゃってたかも?!


ドラム缶に奔った疵を観て、ホッと安堵のため息を吐く。


ー あの鞭は、金属で造られているみたいね・・・


鞭というよりは鎖と呼んだ方が良いのかもしれない。

そんな得物を使われては、おいそれとは近寄ることだって難しく思える。


ー あれは小手調べ?それとも私が無害かどうかを調べたのかしら?


あのメデゥーサボールだってそうだった。

ミハルと言う存在が何者かを探ったように、マリーベルという戦闘人形も先ずは調べようとしたのではないかと考えたのだ。

ヘンテコな姿をしているが、機械の身体を持つ相手に対して。


ー どうか、敵だと認識しないでマリーちゃん!


蒼い瞳がこっちを探っていると感じたミハルが、祈るように動かずにいると。



 ザッ・・・ザザッ・・・



興味でも無くしたように、案山子なミハルの傍をミルアの居る家に向けて通り過ぎようとした。


ー 良しッ!ここまでは順調よ


被ったバケツを動かさないように気を付けながら、目でマリーを追うと。


「来たわね・・・マリー」


後ろに隠れていたマリーが姿を現して、


「パパやママは・・・あなたが?」


「・・・・」


分かってはいるのだが、真相を訊こうとしたのか。


「答えてよマリー!あなたが殺したんじゃぁない筈よね?」


「・・・・」


それとも、ミハルから言われてあったことを忠実に守ろうとしたのか。

近寄り切らないマリーに対して、もっと自分に寄るように嗾けるミルア。


「答えられない程・・・操られているのね?

 自分の意志では動けなくされているのね?」


どうにかマリーからの答えを聞き取りたくて。

もっとこちらに近寄らせる為にも。


「分かっているよマリー。

 あなたはパパやママを殺めていないって。

 それに逢いに来た本当の訳だって・・・知ってるもん」


「・・・・ミ・・・・」


ガクンとマリーベルの身体が揺れ動いた。

目の前に居る人間の少女が発した言葉に応じたかのように。


「今夜此処に来たのは・・・あたしに逢う為。

 それと、全てを粛罪する為なんでしょう?」


「・・・ル・・・ア・・・」


マリーベルの表情は変わっていないが、身体は惨い仕打ちに抗っているのか。


 ガク・・・ガクガク・・・


啜り上げるかのように細かく震え、鞭を持っていない方の手が腰へと回り何かを掴み出して来た。



ー そう・・・やはりあなたは、それで最期を迎えたいのね?


鋼の物体を掴み出したマリーベルが、重い唇を開くと。


「人間ヨ。私ニ素手デ歯向カウノハ赦サン。

 誇リ高イ戦闘人形バトルドールニ対シテ、武器ヲ持タナイノハ赦サレナイ」


ミルアへ向けて、手に取ったモノを投げて寄越した。



 ドサ



それは・・・


「あの日の拳銃ね・・・マリー?」


予測はしていたが、突き付けられた現実に戸惑いを感じて。


「これで・・・撃って欲しいのよね?」


ミハルから教えられた通りだから、尚の事悲しく思えた。


「撃テルモノナラバ、撃ッテミルガ良イ。

 私ハ・・・敵対スル者ニハ、死を以ッテ報イルトスル」


戦闘人形マリーベルは、赤毛のミルアに勧告して来た。

これで何もかもが終わりにするのだと。撃たれて果てれるようにと。


マリーは操られながらも<敵対する者には>と、言っているではないか。

<敵対する者は>とは言っていないし、その後では<死を以って報いる>と言っているではないか。


つまりこれは、ミルアに教えてもいたのだ。

心の中では謝罪し、死を以って罪を拭いたいと願っているのだと。


その心中は、どれ程哀しみに暮れている事だろうか。

なまじ機械の身体を持っている為に、自ら死ねない事を悔やんでいるだろうか。


「撃テ・・・早ク。

 サァ!ココヲ目掛ケテ・・・撃ツノダ!」


ミルアの前で、マリーが胸を差し出して来た。

左の胸の中にある心臓部を、唯の一発で射貫けと。


でも・・・


「撃たないわマリー。あなたを喪いたくはないから」


銃を拾い上げていたミルアが首を振ってから、


 ポイ・・・と。


父と母を奪った狂銃を投げ捨てたのだ。


「グ・・・何故ダ?」


戦闘人形が苦悶の表情になる。


「ソノ行為ハ、私ヲ嘲タトデモ?」


伝えられなかった想いに歯噛みするかのように。

だが、ミルアから返されたのは。


「言ったでしょ。あなたを喪いたくないって。

 だって初めから赦していたんだよマリーの事を」


約束の事も両親を守れなかったのも・・・何もかもと。


「・・・ミ・・・?!」


ミルアが許してくれたと知ったマリーの声が、歓喜に染まっていると感じた。

だから、もうやり遂げる他は無いと。


投げ捨てた銃の代わりにミルアが差し出して来た物を観た。

その瞬間、マリーの斜め後ろからドラム缶娘が飛び縋って。


「ミルアちゃんッ!」


「・・・みるあ?!」


後ろから戦闘人形を羽交い絞めにしたミハルが叫ぶ。

取り押さえられた戦闘人形がマルアの手にした物を観て呼んだ。


・・・手に握られていた物が触れた・・・



 バチバチバチ!



強烈な電気ショックが、スタンガンから放射されて。


「ガ?!あああああーッ?」「きゃいん?!」


マリーベルが悶絶して。


・・・ん?なんだかもう一つ叫びが聞こえたような?忘れよう・・・



ガクガク と、固まったマリーベルが電気ショックに震えている。


「やったわ!これで一時的に動きを封じられたのよ」


後ろから羽交い絞めにしてくれているミハルに、感謝を込めて。


「後は、左の胸へ悪意の命令を拒絶するプログラムを組み込めば!」


この作戦を立案したミハルへと。


「ミハル姉の<カメさんを捕まえた作戦>は完遂だね・・・って?!」


褒め称えようとしたミルアだったが・・・


「ほえええぇッ?!」


 プス・・・ぷすぷす・・・と、痺れているようだが?


マリーの後ろに居るミハルも焦げている?

・・・マジか?


どうしてこうなったのかと言うと、マリーを羽交い絞めにしていたから?


「どうしてミハル姉も?!」


ミルアがミハルの手が離れる前にスイッチを入れたから・・・でしょう?


「ぷしゅぅううぅ~~~~」


眼を廻して卒倒してしまったミハルは・・・やはり損な子だったようでW


巧く行きましたね!

約一名、負傷者が出てしまいましたけどW


やはり、<ミハル>を冠された娘は損だっただけ?

いいや、単にドン臭いだけか・・・


次回 Act5 黒き蟠り

損な子が気絶すれば・・・現れるのは戦闘人形?!

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