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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第3章 闘う宿命
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Act8 恐怖!トンネルの中は・・・

このトンネルを抜けたら・・・きっとそこには。


希望の光が見える筈・・・でしたが。


まさかの展開が待っているのです。

山のすそ野まで続いていた広大なトウモロコシ畑の一部は、核爆弾の光を浴びて延焼し、焼け野原と化している。

それでも緑は残されていたが、放射能を浴びてしまった実は食用にはならないだろう。



焦げた大地に、山に向けて1本の道路が伸びていた。



「どうします?ルシフォルさん」


山の頂と焦げた大地の先を見比べて、どちらへ向かうのかを訊ねてみる。

少しばかり離れた場所に道路が見え、山へと向かっているのだが。


「あそこにあるトンネルを抜けますか?

 それとも山を越えて行きますか?」


山に穿かれたトンネル。

電源が絶たれて真っ暗闇の穴が、なんだか不気味に思えてしまう。


「トンネルを進めば、山を越えるよりは楽でしょうけど?」


ルシフォルの身体を想い、なるべく負担の少ない道程みちのりを採りたいミハルだが。


「なんだか・・・恐く感じてしまうんです」


トンネルの暗さに不安を感じているようだ。


「ががぅ?」


心細げにトンネルを観ている足元で、グランが小首を傾げてから自分が背負っているザックに顔を向けて。


「がうがぅう~」


荷物の中に懐中電灯があるのを教えて来る。


「グランはトンネルを進む方が良いっていうのね?」


「がう!がうぅ」


そうだと言わんばかりに二人に向けて尻尾を振るグラン。


「そうだね、グランの言う通りかもしれない。

 山を越えるよりは早い筈だし、危険が伴うとは限らないからね」


ルシフォルがトンネルを抜けると選択すれば、


「二人がトンネルを選択されるのなら・・・」


一緒に行くと言うしかない、怖がりなミハルだった。




トンネルの中は本当に真っ暗だった。


どれだけ続いているのか、進む反対側にある出口の光さえ届いていない。

入ってから僅か30メートルも進んだと思える付近から、懐中電灯の灯りだけが頼りとなってしまった。


「あ、あのぉ・・・二人共。

 何か喋って貰えないでしょうか?」


ビクビクしながら歩くミハルが、怖さのあまりルシフォルとグランに頼んでしまう。

・・・と。


 ピチャン・・・・


どこかに地下水が漏れ出ているのか、水が滴り落ちる音が・・・


「きぃやあああぁ~ッ!」


途端に悲鳴を上げるミハルが、思わずルシフォルに飛びついて。


「あわわわわッ!」


恐怖のあまりガタガタと震えて泣いてしまったのには、ルシフォルも毒気を抜かれてしまったようで。


「怖がりだなぁミハルさんは。

 あれは水が落ちている音だよ、怖がる必要なんてないんだよ」


ため息交じりでミハルの肩を撫でてやる。


「み、水の音・・・だったのですね」


それでも怖いのか、ルシフォルから離れようともせずに。


「私・・・怪談とか、ホラーとかが苦手で」


暗がりが想像を掻き立てるのか、少しの変化にも恐怖が先走ってしまうみたいで。


「ごめんなさいルシフォルさん。頼りない同伴者で」


少々凹んでしまう。


「そんなことはないよミハルさん。

 女の子なんだから、怖い物の一つや二つがあるのが普通だよ」


「女の子・・・女性扱いして貰えてないのですね、しょんぼり」


優しい言葉をかけて貰ったミハルは、少し勇気が湧いて来るのを感じて。


「ルシフォルさんに女性だと認めて頂けるように頑張らなきゃ、ですよね?」


掴んでいたルシフォルの服から手を放して、


「だって・・・紳士には淑女が似合うと言いますから」


自分の胸に手を添え直してルシフォルに微笑んだ。


「え?!ボクが紳士ですか?」


「え?そうじゃないのですか?」


見つめ合う二人・・・で。


「こりゃ参ったな、ははは」


「うふふ!そうですよ紳士様」


暗がりの中で、二人が笑い合った・・・時。



「がうううぅ~っ!」


急にグランが吠えたてた・・・闇に向かって。


「?!」


吠えるグランが睨む先に、二人が振り向くのが早いか・・・



 ゴソ・・・ギャリ・・・



トンネルの中に何かが蠢く音が流れる。


「な、なに?グラン」


「がう!がうううぅーッ!」


懐中電灯を向けて何の音なのかを調べようとするミハルへ、グランが更に吠えたてる。


「光を向けちゃ駄目だミハル!さがって早く」


手にしていたライトをルシフォルが握り止めて、


「ひゃん?!」


前に居たミハルを、庇う様に後ろへと廻す。


一瞬、何が起きているのかが判断できなくなる。

暗がりの中、何かが蠢いているのだけは気が付いたのだが。


「しまった!こんなトンネルの中にも潜んでいたのか?!」


緊迫したルシフォルの声が耳を打った。


「グラン!君はミハルさんを護るんだ」


「がぅ?!がう!」


前にのめり出ているグランに対し、ミハルを護るように指示を下す。


「相手は暗闇でもボク達が識別できるみたいだ。

 君なら相手も躊躇するかもしれない。

 暗視カメラではグランもミハルさんも機械だと映るかもしれないからね」


「え・・・ルシフォルさん?」


緊迫したルシフォルの声が教えているのは。


「どうやら機械の敵が待ち伏せしていた。

 人間がここを通って奥地へ逃れるのを見張っていたんだよ」


「え?機械の・・・敵?」


真っ暗な中で、どうやって・・・と、訊く前に。



 ゾゾゾ・・・・ゴソリ・・・



何かを引き摺るような音が間近で聞こえて。


「「お前達は機械なのか?それとも只の人間か?」」


機械マシン語が誰何して来た。


「「反応は機械に属していると告げているが、姿は人型だ。

  貴様たちは何者ぞ?ここを通れるのは我等機械だけ」」


聴こえては来るが姿は未だに掴めない。

音声は悍ましい位に重く、質して来る言葉は辛辣で。


「「答えは如何に?返答次第では容赦はしない」」


只、相手もこちらが何者であるのかが判別しきれていないようだった。


「グラン!ミハルさんと逃げるんだ。

 ボクが相手を食い止めている間に、早く!」


相手が躊躇しているのなら、その隙に逃げてとルシフォルが勧めるが。


「駄目ですルシフォルさん!

 あなたを置いて逃げるなんてできませんッ!」


踏みとどまるのならば一緒にと、ミハルは傍から離れようとはせずに。


「相手がルシフォルさんに危害を加える気なら。

 どんな敵だろうと闘い護るのが私の約束なんです!」


専守防衛が約束なのだと言い返したのだ。


「だって私は・・・機械の身体を与えられているのでしょう?」


相手が機械だと言うのなら、自分もまた同じだと。


「ミハルさん・・・すまない」


護ると答えられたからか、それとも機械の身体を与えたからか。

ルシフォルが真摯な表情で応えて来る。


「ボクは君に謝らなくてはいけない。

 君の身体について詳しく教えていなかったのを・・・」


迫り来る敵に、懐から拳銃を掴み出して。


「だから!ここから出ようミハル」


共に闘って脱出すると願うのだ。


「はい!ルシフォルさん」


頷き返すミハルも、護り抜くと決していた。



「「返答は・・・無し。

  しからば・・・直接身体に質すのみ!」」


機械語に怒りが垣間見れた。

答えを返さない3体に、姿を曝け出してでも暴こうと。



 ズル・・・ズザザ・・・ズアアアァッ!



暗闇の中から何本もの触手状の伸縮器官が現れる。

蜷局を巻きつつ伸びて来るそれは、金属で造られてはいたが悍ましいことには変りがない。


「ミハル!ライトを向けて」


もう闘わざるを得ないと判断したルシフォルが、相手が何者なのかを知る為に光を当ててと頼んだのだ。


「はい!」


伸びて来る触手状の伸縮器官の奥側へ、手にした懐中電灯を向ける・・・


「なに?!」


「ひッ?!」


光に照らし出された敵の正体は・・・


「がうううぅーッ!」


グランの吠える声がソレに放たれて・・・



「「われはこのトンネルの主なり。

  ここを通すかは、我・・・メデゥーサボールに委ねられている」」


トンネルの天井部分から垂れ下がった、赤黒い巨大な目玉が見下ろしていた・・・


・・・モンスターですか?!

モンスターではないですか!


大目玉のお化けが現れた!

しかも触手までおまけがついてますからッ!

さて。

いよいよお話が異世界モノと化しましたようでW


いやな予感が漂いますね・・・・・・・W


次回 Act9 メデゥーサボール

そのまんま。ここが異世界ではないと誰が言い切れるの?

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