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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第3章 闘う宿命
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Act 7 リィンよ銃を執れ

闘うのなら、それなりの準備が必要。


武器も食料も・・・それに。

練度だって・・・ねぇリィン?

放射線の被曝量がマスクを必要としないまでに低下している。



二人と一匹は、フロリダから北へ向けて旅路を進めていた。


「あの山を越えれば、ジョージア州に入れますね」


小高い丘を幾つも重ね合わせた様な低い山々が見えている。


「そのまま北上したら、サウスカロライナ州に。

 そしてノースカロライナ、バージニア、ワシントン、メリーランド。

 ペンシルベニアを越えれば、目的地のニューヨークですよ」


山を観ていたミハルが元気よくルシフォルへ話しかけるのだが。


「気が遠くなりそうだよミハルさん」


滅入ったのか、苦笑いを返したルシフォルと、


「がうがぅ~~」


ロボットの癖に、遠過ぎだと座り込むグラン。


しゃがみ込んだグランと、遠い目のルシフォルに振り返ったミハルは。


「あらら・・・旅は始まったばかりじゃぁないですか。

 遠大な道程ですけど、一歩進めばそれだけ近付くんですよ」


此処まで辿り着くのに5日を要していたのも忘れたかのように、一人で勝手に盛り上がっている。


「それに、州を越えれば。

 あの山の向こうにはきっと人が住んでいられる場所があるんですから」


フロリダでは核の脅威を懼れた人々が逃げ出してしまい、もぬけの殻状態だった。

何か所かの街を通り過ぎたが、人が生活している雰囲気ではなかった。

また、核を浴びてしまった人の亡骸だけが存在していただけだったのだ。


「ジョージアには放射能も届いていないと思います。

 あの山が防いでくれた筈ですから」


手前にある山のすそ野は核の光を浴びた部分が焦げて見えるが、奥の山々には緑が色濃く残っていた。


「山を越えれば、もうマスクなんかしなくても済むんですよルシフォルさん」


ニコリと微笑むミハルが、本当に言いたかったのは。


「そうしたら、ずっとルシフォルさんの顔を観ていられるから」


マスク越しではなく、素顔を観ていられるのが嬉しいのだと。


「ああ、そうだねミハルさん」


まだマスクを外していないルシフォルが答えて。


「ボクも防護服を脱ぎたいよ」


放射能から身を守っている服を脱いで、身軽になりたいと言った。


「ですよね!」


微笑むミハルがルシフォルの手を取り、


「だから!早く行きましょう」


山を目指して歩き始めるのだった。


そこはフロリダの最北部。

核攻撃を受けると知った人が避難した山があった。







2キロほど先に、人類が居住している街がある。



紅いレンズが街の光景を捉えていた。


「「ビーコンは正常に機能している」」


気配を殺して探索を続けているのは?


「「超長波ビーコンを放つ者は、間違いなく街に居る」」


機械兵の中でも、取分け索敵能力の高い斥候型の紅い眼が光る。


「「目標は在地に在り。

  直ちに攻撃するか?さもなくば偵察を続行するのか?」」


機械兵は奇襲をかけるか、それとも味方の来援を待つかと訊いたのだ。

直属の上司に。自分へ命令を与えた者へ。


「「了解した。

  我はこのまま見張りを続行する」」


返答が下され、斥候は目標を捉え続けるのが任務だと認識した。


「「目標の動きを観測する。

  我が方の先遣隊が攻撃を敢行したとしても・・・だ」」


上官からの命令に添うのが兵の務め。

紅いレンズを最大望遠に切り替え、目標を的確に捉えようとする斥候型の機械兵。

人型ではあるが、その容は人間とは全く違い、異様な程首が長かった。

 


 ズルル・・・



しかも長いだけではなく、どの角度にも曲げられ360度回転させることが出来た。

パノラマの探索範囲、それは偵察に特化した斥候型だけのことはあった。




ガリアテの街は、既に機械軍団の偵察圏内に落ちてしまった。



「令嬢はどちらに居られる?!」


ジュノーが幹部の一人に訊き質す。


「先程までは衣装係と揉めておられましたが」


「なに?化粧直しでもされているのか?」


純白のドレスを纏っていた姿を思い起こしたジュノーだったが。


「いいえ。なんでも身軽な衣装を好まれたとかで」


「・・・どういうことだ?」


幹部から意図しない返事を受け、皆目訳が分からなくなって。


「まぁ、後でお姿を見たら分かるか」


自分が探しているのも忘れてしまっていた。





 ガチャッ


金属の擦れ合う音が耳に入る。

地下の射撃場に、二人の影が揺れていた。


「うわぁ~・・・」


目を丸くして、置かれた武器を見詰めるリィンへ。


「先ずは小手調べにと思いまして」


「小手調べって・・・なによ、この大量の拳銃は?」


開いた口が収まらない・・・程の拳銃の山に。


「リボルバーに始まって・・・オートマグまであるじゃないの!」


見知っている種類だけでも数丁あった。

それ以外のも含めると20丁にもなるか。


「どれが一番手に馴染まれるか、分かりませんでしたのでね」


「まさか・・・これを全部撃てと?」


唖然となるリィンも顧みず。


「勿論、好まれる奴だけで結構ですぜ、お嬢」


数種類の中から選べと言って来た。


「うう~ッ?!拳銃を撃つなんて。

 やった事も無いから選ぶなんて分かんないよぉ?」


馴染むと言われても、どうしっくりするのかさえも分からない。


「それに、威力の弱い銃なんて持つ意味がないもん」


相手は金属のボディーを持つ機械の兵だから、当たっても撃ち抜けなくては意味がないと考えてしまう。


「いや。そいつはどうですかな。

 小口径であったとしても、ピンポイント射撃が出来れば倒せますぜ」


「え・・・そうなんだ?」


マックが手に取って差し出したのは、コルト社製の自動拳銃。

小型の割に9ミリ口径の実包を7発装填可能で、飾った部分がない代わりに実用性が高かった。


「これ?これを撃ってみろって言うのね」


見た目で判断したリィンは、少々不満げだったようだが。


「リィンお嬢なら・・・使いこなせますかな?」


ニヤリと哂うマックに手渡され、


「当たり前よ!こんなちゃちな拳銃なんて」


持ち前の負けん気・・・いや、天邪鬼が出てしまう。


「それでは・・・あの的を撃ってください」


射撃場の的は、サークルを描かれて建っている。


「観てなさいよぉ~」


防音用のイヤホンを被ったリィンが、颯爽とコルトを片手で構えると。


「連射される時は両手で持ってください」


腕を組んだマックが、リィンの後ろに立って忠告して来た。


「分かったわよ・・・」


連射なんて考えても居ない。

勢いで言っただけで、本当は心臓が爆発しそうなくらい緊張していたから。


初めて撃つ拳銃の重さが、これほどとは想像も出来なかった。

小型なのに、ずしりと手に重みが加えられて。


「撃つわよ・・・撃つんだから・・・」


自分に言い聞かせて、やっとトリガーに人差し指を載せられた。

こんな状態で、どうしたら標的に当てることが出来るのか。

撃つだけがやっとなのに、標的なんかが目に留まる訳がない。


「撃つ・・・撃ってやるんだからッ!」


眼を瞑る・・・なんて出来なかった。

恐さの反面、少なからず期待が籠められても居たから。


ググッと・・・トリガーに力を加えて行って・・・



 バムッ!



「きゃぁッ?!」


意図しないタイミングで発砲してしまったリィン。

驚きのあまり悲鳴を上げて・・・


 ドサッ


腰が抜けたようにそっくり返ってしまう。


「お嬢・・・初射撃ロストバージンされましたね」


射撃の反動と驚きで、リィンは後ろ側に倒れそうになった。

誰も居なかったら確かに尻餅を着いていただろうが・・・


「マック?!撃っちゃったわ」


撃てたとは言わなかった。

撃ってしまったのだと抱えてくれたマックに教える。


「手は痛みませんか?

 初めて撃った時には、大概手を痛めてしまいますんでね」


肩を掴んでくれて倒れるのを防いでくれたマックには、リィンがこうなる事が初めから分かっていたようだ。


挿絵(By みてみん)



「うん・・・大丈夫みたい。

 あ、あっと・・・ありがと」


背の高いマックに凭れ掛かっていたリィンが振り仰いでから。


「初めから言っておきなさいよね・・・もぅ!」


恥じらうみたいに拗ねてみせると。


「いいえ、こうしなければ記憶に残らないものですから」


危険な物を扱うのだからと、心に留めさせる為に教えずにいたと言う。


「さすがは教師せんせいって処ね」


頷いたリィンは、固まったように動かなくなっていた指をトリガーから外して。


「初物が終わったのなら。

 次はどうしたらいいのかしら?」


教師役のマックが何を教えてくれるのかと訊いた。


「そうですな・・・次はお嬢の手が棒になるまで撃ちましょうかね?」


「おっけ!やってやろうじゃないの」


あらゆる銃に玄人なマック。

対して全くの素人なリィン。


二人は教師と生徒となって。



その日、遅くまで射撃場から銃声が流れていた・・・


温かく見守ってくれるマック。

次第に惹かれていくリィン。


主従な関係だけに留まれるのか?

尤も当のマックにはお子様過ぎるリィンでしたが?


一方、フロリダから未だに出られていないミハル達だったが?


次回 Act8 恐怖!トンネルの中は・・・

トンネルを抜けるとそこは・・・の、前に!中に居たのは?!

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