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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第2章 奪うモノ 奪われるモノ 
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Act12 追撃

追って来るのはホバークラフト!


機動性に富み、敵に襲い掛かる。

近寄られでもしたら戦車では御し難いのだが?

急追して来るのは3機のホバークラフト。


それぞれに2体の兵が乗り、各々が各種の武器を手に携えて。



今にも攻撃を加えて来そうな雰囲気の敵ホバー車がモニターに映っている。


「敵ホバークラフト近付く!」


キャミィがモニターに映し出される機影の速力を計り、


「相対速度30キロ!敵は時速70キロを出しています」


隊長パスクッチへ報告する。

全速で走る<魔千破マチハ>よりも30キロも早いホバー車。


このままで推移したら、後3分もしない間に追いつかれてしまうだろう。


「榴弾で敵の足を食い止めますか?」


パスクッチの命令で、砲塔を後ろに向けて備えていたアルが。


「当たらなくても、回避させるぐらいは出来ますが?」


砲撃を加え、敵に対して脅威を与えるぐらいは出来ると言ったのだが。


「いいや、奴等にはコケオドシなど意味はない。

 当てなければ迫るのを辞めはしないだろう」


パスクッチは無意味な砲撃より、撃退する方法を考えているようだ。


「しかし・・・当てるって言っても。

 機動力では勝ち目はありませんよ隊長」


操縦を任されているラミアが自嘲気味に言い返し、


「砲撃しても、奴等がこっちを見失わない限りは回避されちまいますって」


砲火を観て、弾を避けるだろうと答えたのだ。

機械兵達が射撃のタイミングを捉えて弾道を計り、避けてしまうだろうと。


「ふむ・・・その手があったな」


だが、ラミアが与えたヒントでパスクッチが思いついた。


「アル!スモークは残っているな?」


「え・・・ええ?はい!」


砲手アルに発煙弾スモークを準備させて。


「キャミィ!奴等は熱源を発しているか?」


「え?えっと・・・はい?!」


電探レーダーをも受け持っている無線手に確認する。


二人から情報を得て、パスクッチが頷くと。


「これより煙霧内で砲撃戦を展開するッ!

 照準器を赤外線照射に併せろ!

 敵を煙の中で正確に捉えるんだぞアル!」


戦闘の開始を告げるのだ。


「キャミィは砲座とのリンクを行え!」


射撃装置に情報を入力し、発煙弾の煙の中で敵影の捕捉に務めろと命じて。


「ラミアは極力揺れないように操縦しろ!」


荒れ地を走行する車体を揺らすなと命じて・・・


「敵がこちらの狙いに気付く前に仕留めるんだ!」


3機のホバー車を叩くと厳命したのだ。


了解ラジャー!」


3人が揃って応える。

隊長の命令を疑いもせずに。




戦車との距離が開き始めた。

自分達5両のRV車が全速力で走っているからかもしれないが。


「いいや、違うな。

 パスクッチ達はやり合う気なのだろう。

 勝てる公算がたったようだな・・・」


鈍重な戦車が、軽快なホバークラフトに挑むというマクドノー。


「奴等は魔女を狩る者。

 魔女殺ストライカーズしとか名乗っていたからな」


魔女殺ストライカーズしって?」


助け出された処のリィンは知る筈も無かった。

後ろで走る戦車が味方なのも今教えられた処だったから。


「そうですお嬢。

 あの旧式な戦車に乗っていやがるのは、魔女と呼ばれるロボットを葬る奴等。

 俺達に雇われた傭兵達なのです」


「だから・・・魔女を狩る者なのね」


次第に離れていく戦車を眺め、リィンは心配そうに訊く。


「でも、戦車だからって。

 相手はミサイルを装備してるかもしれないのよ?」


砲撃なら勝てるだろうが、対戦車ミサイルでも放たれたら負けてしまうのは戦車の方だと思ったのだ。


「そこは・・・観ていれば分かりますよお嬢も。

 俺達も信じられなかったんですから、ホンの数時間前まではね」


「・・・そうなんだ?」


救ってくれたマクドノーがそう言うのならば・・・と。

自分が知らないだけで、戦車は3機のホバークラフトを撃退してくれるのだろう。


後部座席から背後を振り返り、闘う戦車を眺めて。


「どうか御無事で」


救援に来てくれた人達へと祈りを捧げるのだった。




5両のRV車が停まらずに駆けて行く。

追手から逃れる為に、不整地を全速力で。



「ここで食い止めなければ・・・いけませんよね」


照準器に敵ホバー車を捉えていた。

だが、この状態で発砲しても機動性に富んだ敵には命中できない。

発射焔を観られたら、回避されてしまうのは分かり切っていた。


「外したりしませんから・・・絶対に当ててみせます!」


照準モニターを睨んだアルが、射撃トリガーに指をかけた。


「連続装填ならびに射撃の準備よしッ!」


いつでも発砲できるからと促して。


「隊長!やりましょう」


命令一つで戦闘に突入すると言うのだ。



「よぉし!発煙弾斉射!」



間髪を入れず、パスクッチが発動を命じる。


「スモーク!」


アルの指が、砲塔外部側面に備えられてある発射機に火を入れた。



 ボム! ボボムッ!!



砲塔両側から、計6発の発煙弾が飛び出した。

白い煙を曳きながら、追って来たホバー車の前を覆い隠していく。


煙の柱が6本立ち込め、戦車とホバー車双方を包み隠す。

影絵となった3機に対し、戦車砲を向け続けるアルへ。


「撃ち方・・・始め!」


射撃の開始を命令するパスクッチ。


「榴弾!敵にはこれで十分だから」


軽くする為に、ホバー車には装甲が無い。

硬い装甲を打ち破る必要が無いのならば、破裂して危害を加える榴弾が適役だろう。


「アル!赤外線探知機の反応濃し!」


キャミィから受けた観測情報と測距儀の位置を照らし合わせて。


「照準よし!撃てぇッ!」


間髪を入れずに発射する。



 ドゴォ!



10センチ砲が火を噴き、瞬く間も無く・・・



 バガンッ!



1機のホバークラフトが消し飛んだ。


「命中ッ!」


キャミィが撃破報告を入れて来る前に。


「続けて第2射!」


アルの眼は、次なる標的を捉えていた。






見守っていた戦車から、白い煙が飛んで行く様が観えた。

噴煙に包まれた中へ、戦車が次々に発砲するのも。


「お嬢!どうやらカタが着いたみたいです」


3発を撃ち終えた戦車が、再び速度を上げて追って来るのが見える。

砲撃を終えた砲塔が、次第にこちらへ向けて回って来るのも。


「もう撃つ必要もないようですぜ・・・勝ったようですな」


マクドノーが教えて来る。


「凄い・・・ね」


勝ち目のない戦いだと思ったのに、終わってみれば完勝だった。

勿論戦車の方が・・・だ。


「どんな方達なの?魔女殺ストライカーズしって?」


あまりにも手際良いからと、リィンが訊いたのだが。


「それはご自身でお確かめください。

 俺から言えるのは傭兵だって事くらいですからね」


苦笑いを浮かべるマクドノーが、


「パスクッチという隊長と、3人の娘達。

 都合4人が魔女殺ストライカーしなのですよ」


戦車に乗っている傭兵を教えた。


「このまま追手が係らなくなったのなら。

 あいつ等にも会ってやってください。

 お嬢を助け出せたのも、奴等が請け負ってくれたからなのですよ」


リィンを奪還できたのは、パスクッチ達の功績があればこそだと。

歴戦の魔女殺し達がいればこその奪還劇だったのだと教えるのだ。


「うん、分かったわマクドノー。

 安全を確保出来たら、感謝を伝えることにするから」


もう少し逃げられたら。

身の安全を確保できる場所まで行けたのなら。


「リィンタルトお嬢。

 差し当たっては我等オーク家の支配地まで行きましょう。

 そこでならば、敵が来ても持ち堪えられる筈ですから」


「任せるから、マクドノーに」



後方から戦車が追って来ていた。

追手の追撃を頓挫させた魔女殺しが乗る戦車が。


その姿を見るに付き思うのは。


「きっと、まだ人類には勝てるチャンスが残されているんだわ」


自分が背負う宿命にも、微かではあるが希望は残されているのだと感じられた。


「最期まで諦めてはいけないんだよね・・・レィちゃん」


助けられた自分の様に。

絶望するのはまだ早いのだと・・・

追撃を振り切る6両。

逃げ切れたのかは判りかねたが・・・


逃がした者と逃げた者。

結果は奪われたモノに因る。

リィンはマクドノー達に奪い返されたと思われたのだが・・・


少しお話を巻き戻して死神人形がなんと言っていたのかを思い出してください。

リィンを取り逃がした折に

~リィンに知られない間に着けておいた発信機からの位置情報で分かった~

・・・そうです。

発信機が着けられていたのです!


一体どこに?どんな形をしているのか?

そしてそれが意味したのは?!


次回 Act13 奪われたモノ 奪われるかもしれないモノ

君の宝物は無事なのか?君は奪われたモノに気がつかなかったのか?

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