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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第2章 奪うモノ 奪われるモノ 
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Act9 急襲!

死神人形は嘲笑う。


自らの欲望を満たそうと、戒めを填められたままのリィンへ手を伸ばす。


死神人形フューリィーは、最後の復讐に手を染めるのだった・・・

手枷足枷を填められ、逃げられないように鎖で繋がれた状態だったのに。


「「出て来ないのなら・・・引き摺り出す迄だ!」」


起きる事さえ出来ないというのに、機械兵が鎖に手を伸ばして・・・



 ジャリ!



繋がれた戒め諸共、鎖を引っ張った。


「あッぎぃ?!」


無理やり掴み上げられた鎖に繋がる手枷が、腕に痛みを奔らせる。



 ブツンッ!

 ずりずりずり・・・



壁に繋がっていた鎖を引き千切り、機械兵は激痛に顔を顰めるリィンを引き摺り出す。


全身に痛みが奔り、目も眩むほどなのに。


「痛ぁぃいッ!」


あまりの痛さに叫ぶのも無視し、引き摺り続ける鬼のような機械兵が。


「「もう全ての準備が整っているのだ」」


処罰が一刻も早く執り行われるように急かしてくるだけだった。


装甲防護車カーゴから引き立てられて向かった先は、観たことも無い街の建物。

高い楼閣が見える建物の裏口から中に連れ込まれてしまって・・・


「「連れて来ました、軍団長ファースト閣下!」」


手を差し上げて鎖で繋がれたリィンをぶら下げる。

手枷足枷を填められた状態のまま、死神人形の前に晒されてしまう。


目の前には戦闘人形のコスチュームを着たままの死神人形ファーストが哂っていた。


「う・・・フューリィ?」


最後に観たのは・・・確か?


「なぜ・・・レィちゃんを・・・」


炎に巻かれた少女人形の面影が過り、


「殺したのよ?」


目の前に居る仇に訊いたのだったが。


「これより人間に対しての処罰を行う。

 我々機械に対しての反逆罪、ならびに犯行未遂罪とそれに・・・と。

 後は何でも良いわよねぇ、フェアリー家の娘にだったら」


全く無視を決め込んで来た。

おまけに良く分からない罪状を言い渡しても来るのだ。


「判決は・・・勿論のこと有罪よねぇ。

 で、刑罰なんだけど。

 あなたには人間と機械の両方の刑を執行してあげるから」


顎をしゃくりリィンを見下す死神人形が、


「知っているかしら?

 人間だった頃の私が監獄で受けた拷問を。

 それと同じ事をあなたには受けて貰うわ、人の刑として。

 そして機械の刑とはね、レィが死に際に受けたものと同じ事よ」


悍ましい程に歪んだ貌をリィンに向けて来たのだ。


「死にたくなるくらい・・・だったわ。

 もしタナトスの誘いを受けなければ、確実に気を狂わされてしまったでしょうね。

 もし復讐心が萎えてしまっていたら、死刑を望んだでしょうけど。

 お生憎様なことに、こうしてあなたの前に来られたのよリィン?」


自分が人間であった頃に刑務所で受けた拷問リンチを知らしめ、


「人形でも集団で襲われでもしたら、痛痒が無くとも苦しい事には変りがないわよ。

 あのレィだって・・・最期まで悲鳴を上げ続けていたのだから。

 生憎なことに、人間のあなたには聞けなかったでしょうけどね」


機械兵に囲まれて痛撃を喰らい続けて果てた娘を指したのだ。


「くぅッ!」


聞かされたくない悍ましい言葉を吐かれ、リィンは顔を背けて抵抗するしかなかった。


「今度はねぇ、あなたの番なのリィンタルトお嬢様。

 私が受けた屈辱と恥辱。その全てをあなたに返してあげるから。

 死にたくなったら教えてくれるかしら?

 ただの一度キリなんかで死なせないから・・・簡単にはね」


「・・・ケダモノ。あなたなんかにアタシは負けないから」


キッと死神人形を睨みつけ、抗う態度を見せるリィン。


「そう・・・その眼よ。

 人を恨み、復讐を誓った頃の私と同じ。

 瞳の奥に私への憎しみが宿ったわね」


睨んで来るリィンの顎に手をかけた死神人形が、


「そうでこそ犯し甲斐があろうってもの。

 憎い相手に穢され、恨んだ相手からの屈辱に耐えるの。

 死にそうになるくらいの苦痛や恥辱にも耐えて、復讐する事だけに心を染めるが良いわ!

 それでこそ復讐者となり闇に堕ちる者なのよ!」


自分がそうであったように、リィンも完全に貶めようと目論んでいたのだ。


「簡単には堕とさないわ。

 甚振れるだけ甚振り、苦悶の果てに望みなさい。

 私の様に人を捨て、人為らざる存在になりたいと」


ギラリと光る欲望に染まった紅き瞳で。


「私が望むのは、あなたを永遠に我が手中に収めること。

 誰の邪魔も受けずに弄べる、完全無欠の傀儡にんぎょうに墜としてやるのよ!」


狂った欲望をリィンへと注ぎ、己が運命をも終焉へと導こうとしていた。


「言いたいのはそれだけなの?ケダモノ」


顎を取られて顔を背けることも出来ないリィンが強がる。


「誰が!あなたみたいに堕ちるものですか!

 人を辞めてまで命を永らえるものか!」


「ほぅ?強がれるのは今しかないと悟ったようね」


だが、死神人形には通じなかった。


「その減らず口がいつまで利けるかしら?」


ニヤリと哂い、顎を取っていた手をリィンの首元へとずらし・・・


「さぁ!刑の執行を始めるわよ!」


言うが早いか・・・シャツへと手の降ろして一気に?!



 ビリリリリィ~!



引き裂いたのだ!


「ひぃうッ?!」


布地が塵尻に裂かれ、肌が露出させられる。

上着のパーカーが無ければ、ひとたまりも無く半裸にされただろう。


「嫌ぁッ!」


身を捩って盛り上がった二つの胸と、その谷間を隠そうとしたが無理だった。


白いキュートなブラが破けた服の間から覗いていた。

大きく育った胸の谷間を何とか手で隠そうと身を捩るが、手枷を填められ釣り上げられた状態ではどうにもできない。

きっと死神人形達は獣の様な目で観ているだろうと思うと、恥ずかしさよりも怖さで震えそうになる。

いいや、肌を見られるよりも隠さなければいけなかった。

胸の谷間に記された紋章だけは。


・・・だけど。


「まさか・・・そんな?」


死神人形ファーストの声が耳元で、


「リィンが・・・タナトスの欲しがる鍵なのか?」


自分の秘密を観られてしまった。

悪魔と化したタナトスを停めれる、希望の紋章を。


挿絵(By みてみん)


「そ・・・そうだとしたら、どうするのよ?」


強がったのではない。

本当にどうする気なのかと問いかけたのだ。


「それは・・・しまった!」


驚愕と混乱を宿した目で、死神人形ファーストが胸の紋章を見てから。

周りを囲む機械兵の傍らで回り続ける録画装置や放送器具に目を遣り・・・


「迂闊だったわね・・・知られてしまったじゃないの」


自分の仕出かした衛星放送に、地団太を踏んで悔やんでから。


「もうタナトスにも知られたわよね。

 それならあなたを穢すのを停めて来るに違いないわ」


機械兵を使って拷問する事も、純潔を奪おうとする自分も停められてしまう。


「通信を遮断しなければ・・・もう遅いか?」


全世界に放送したのが却って仇となった。

折角、衛星から観えない屋内で処刑する筈だったのに、自らリィンの秘密を晒してしまったのだ。


「秘密裏にしておけばよかった・・・」


そうすれば停められる事も無く純潔を穢せたのに。

知られなければ、タナトスに対して決定的な弱みを握れたものを。


「糞ぅッ!こうなれば電波が到達する前に!」


せめてリィンを穢してしまおうと手を伸ばした瞬間。




 ドゴォッ!!




教会の壁が猛烈な勢いで崩れ去った・・・


「なッ?!」


何が起きたのだと叫ぶ暇さえも無かった。

壁をぶち破って来た装甲運搬車が機械兵を圧し潰したからだ。


「お、お前は?!」


指揮官席に座ったままの人形が見える。

銀髪で翠の瞳を持つ魔女ファイブが見えた・・・のだが。



 ドサリ・・・



勢い余って側壁に再度ぶつかった運搬車が強制的に停まって、魔女ファイブが落下したのだ。


「な?なんだお前は?!」


訳が分からない。

乱入して来た理由も、ぶつかった拍子に斃れ去るのも。


喚く死神人形を守ろうと、機械兵達が束となって運搬車を囲む。

それはリィンを拘束していた機械兵にも言えた。


死神人形の許しも得ず、鎖を放して運搬車から守ろうと身を乗り出したのだから。


「どうしたのだ?!

 これは何の戯言だ?」


死神人形は我を忘れて魔女ファイブへ質すが、機能を停められた者からの返事などない。


「衛兵達は何をしている?!

 これは暴動なのか?それとも壊れてしまったとでも・・・」


教会の中は壊された壁から舞い上がった塵で煙幕が焚かれたように煙っている。

その粉塵の中、見通しの悪くなった状態で機械兵達が事態の収束を計っていたのだが。


「これではリィンをこの場に置いておくわけにも・・・」


人間なら粉塵で咳込み、肺がやられてしまう虞があると。


「な・・・ん・・・だ・・・と?」


振り返った先に居る筈のリィンが・・・見えなくなっていた。


「ど、どこ?何処に行ったの?!」


足枷を填めた状態で走って逃げれる筈は無い。

だが、今の今迄いた筈のリィンの姿は掻き消えていた。


「さ、探しなさい!今直ぐに見つけるのよ!」


周りに居る機械兵達に命令し、自身も探知能力をフルに使って探るのだが。


「馬鹿な・・・いつの間に?」


リィンに知られない間に着けておいた発信機からの位置情報で分かった。

自分が居る教会から物凄い速さで離れていく・・・信じられないが。


その理由と魔女ファイブの姿を見て判った。


「キサマ等ぁッ!私のリィンを返しやがれッ!」


人間の走れる速度などとは桁違いで離れていく。

それが意味しているのは・・・


「警報を鳴らせ!人間共の襲撃だぞ!」


死神人形ファーストが戦闘配置を執れと叫んだ!

遂にリィンは奪い返される?!

魔女ファイブの使い道がこんな作戦にあったとは。


騙されたのは機械達。

自分達の仲間だと認識したのが運の尽き。

機械は識別能力が高い。高いが故、疑う事を知らなかったのか。


作戦は成功裏に進む。

そうなった訳をマクドノーの視線を交えて知らなければならない。

奪還が成るかは、彼にかかっていたのだから・・・


次回 Act10 奪還

男は決死の覚悟で臨もうとした。交わした約束と誓いを胸に抱いて・・・

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