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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第2章 奪うモノ 奪われるモノ 
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Act6 待ち伏せ

砲撃を開始した魔千破マチハ


戦車の有利な闘い方。

それは物陰に潜み奇襲を射掛ける<待ち伏せ>だ!

目の前にある丘を越えればパスクとかいう街に到着する筈だった。


しかし突然、左側の脇道へと先頭車両が曲がり始めたのに不信を募らせる蒼穹の魔女ファイブ


「なぜ・・・迂回するのだ?」


真っ直ぐに丘を登りきれば、目的地が見えるだろうにと。

先頭車両の自動運転装置が何を考えて曲がったのかが分かりかねた。


先頭車両に引率された、後続車両も後に続いて左折を始める。


脇道へは、速度を落とさなければ曲がり切れない程の急カーブ。

つまり、後続車両はつんのめるようにブレーキをかけてスピードを殺さねば追突してしまう。


団子状態になりつつも先頭車両に追随する運搬車両達。

載せられた機械兵達の重さでサスペンションが軋む。


「馬鹿な!何をやっているのだ」


3両目。

丁度真ん中に位置した指揮官車両で、魔女ファイブは苛立って怒鳴るのだが。


激しく傾く車内にあっては、配下の兵にもあたる事だって出来はしない。


スピードを減殺され、ターンを終えた車両達が上り坂に差し掛かろうとした時だった。


丘の左側へと続く道の右側。

丁度丘の上あたりから何かが光るのが見えた。



 ピカッ!



紅い光が瞬き、何かが飛んで来たのだ・・・一番先に曲がった車両へと。



 グワッ!!



側面に紅い光が吸い込まれた瞬間、


 

 ドガァアアァン!!



先頭車両が真っ赤に燃えて弾け飛んだ。


「?!」


咄嗟には何が起きたのか判断がつかなかった。

まさかこんな場所で砲撃されるなどとは思いもしなかったからだ。


炎に巻かれた車両には機械兵6機が載せられてあったのだが、10センチ榴弾をもろに当てられては無事で済む訳も無く。


「1個分隊が破壊されたぞ?!」


燃え盛る車両を観て、容易ならざる事態だとは思うのだが。


「人間の攻撃か?それとも機械兵の自爆か?」


向かって来た光に因るとは思うのだが、こうもあっさり命中弾を喰らうとは考え難かった。


「レーダーはどうした?!近くに敵が潜んでいるのが分からなかったのか?」


自分を含めて、探索電探パッシブレーダーには反応が現れてはいなかった。

近くに潜んでいる人間が居るのなら、生体反応探知機にも影が現れている筈だったのに。


吠える魔女ファイブが光が見えた辺りを睨み、敵の所在を確認しようとしたが。


「何も見えない・・・だと?」


長距離戦に長けた魔女ファイブは、瞳に備えられた望遠レンズで丘の上を探すのだったが。


「どこだ?!どこから撃ったのだ?」


砲撃を仕掛けた相手を探りかねていた。


・・・と、また。


 ピカッ!


今度は確実に光が瞬く瞬間を捉えた。


紅い光の弾が、二両目の装甲運搬車に吸い込まれ・・・



 バッガァアアアァンッ!



載せられてあった機械兵を宙へと吹き飛ばす様を目撃することにもなった。

側面の装甲板を貫通され、デッキ上にあった機械兵達の真ん中で爆発が起きたようだ。


2両目を破壊した発射地点は、丘の上では無かった。

先程見えたと思われる場所から左側にズレ、自分達が進んでいる方角だと分かった。


それが意味したのは?


「敵は動いているぞ!我々の前方に廻ろうとしている」


動標的・・・砲撃を繰り返す相手。

しかもかなりの速さで進み来る敵・・・


「敵は動力を備えた戦闘車両だ!

 のろのろと進んで来た我々に対して有効打を放てるくらいのな!」


魔女ファイブの人工頭脳が一瞬で悟った。


敵は動きながらも確実に命中させれる砲を装備していると。

しかも道路上からではなく、荒れ地を動きながら当てられる砲を装備しているのだと。


弾が飛んで来た方角を睨み、背中の弓に手を添える。

前方へと回り込むつもりなのは砲撃の移動位置からも判断出来た。

だが、未だに敵の正体を掴む事が出来ていない。


人間や小型の車両ならば、自分の矢で対処が出来る。

距離にして300メートル位ならば、確実に命中させることが可能だった。


「しかし、あの砲の威力。

 ジープに載せた無反動砲如きでは無かろうな」


初めの1発は榴弾を撃って来た。

2両目の装甲を備えた運搬車を撃破したのは、徹甲榴弾だとも思えた。

弾種を簡単に変えることが出来るのは、無反動砲には不可能なのも分かっていた。


考えた末に導き出した結論を、魔女ファイブが口にする瞬間だった。


前方で砂煙が上がる・・・と、同時に。



 ピカッ!



3度目の光が。


それが自分の乗った3両目に目掛けて撃たれたのが分かるや否や。



 ダンッ!



魔女ファイブは部下達へ、何も告げずに飛び退いたのだ。

走行中の指揮官車両から。


 

 ズッダダァーンッ!



運転席から車内へと砲弾が貫通して、一瞬で車体が炎上して果てる。

指揮車輛に載せられてあった機械兵も、自動運転装置の人工頭脳も。

何をどうする事も出来ない内に、只の金属へと変わり果ててしまう。


これで5両の内、3両が撃破されてしまった。

30体の機械兵の内、18体が戦闘不能になったのだ。


部隊の半数を破壊され、指揮官の乗っていた車両からの命令も下されなくなった。

残りの2両に乗っている機械兵達も命令が無ければ、回避行動すら自らの判断で行う事が出来なくなってしまったのだ。

それは自動運転を司る装置にも当て嵌まる。


3両が停車炎上する後ろでは、残りの2両が為す術も無く動けなくなっていた。

機械兵を降ろすでもなく、道を外れて回避するでもなく・・・だ。


砲撃すれば簡単に撃破炎上出来る。

敵を全滅させることも赤子の手をひねるよりも簡単だと思えたのだが。





3発を放った戦車で。


「停車!砲撃中止」


キューポラからパスクッチが命じる。


「奴等は動きを停めた。

 どうやら3両の中に命令を下す者が乗っていたらしいな」


撃破した車両が燃え盛るのをモニターで確認し、後ろに控えた2両が動かなくなったのを見て。


「増援部隊にしてはお粗末すぎる。

 どこかに潜んでやがるのかも知れんぞ」


強敵を警戒しているのだ。


「戦闘人形が居たのなら、まず間違いなく逃げ出しただろう。

 こちらの砲撃を受けた先頭の車両には乗ってはいなかった筈だ。

 2番目にも・・・だとすれば・・・」


モニターに映る映像を巻き戻し、詳しく見聞するパスクッチが。


「・・・居やがった」


正面からの砲撃を喰らった3両目から、黒い何かが飛び退くのを発見して。


「魔女・・・戦闘人形が逃げやがったか」


手練れの勘で、そう来るのが分っていたのか。


「俺達が残りの2両を平らげるのを待ち伏せる気だな」


停車している2両を攻撃するのなら、右か左のどちらかに舵を切って回り込まねば撃てない。

真っ正面には撃破した3両があり、邪魔になって撃てないからだ。


逃げ出した魔女が、どこかに伏せているのなら。


「接近戦を挑まないのなら、奴は中遠距離戦を目論んでいるようだ。

 得物が飛び道具なのは、まず間違いではないだろう」


パスクッチには敵の魔女の戦法が読めているのだ。


これまでにどんな戦いを経験して来たのか。

魔女殺ストライカーズしと呼ばれるだけあって、戦闘人形狩りにも長けているようだが。


「我々の砲で立ち向かえるのかが問題だな」


魔女を一撃で破壊することの出来る10センチ砲だが、当たらなくては話にもならない。


「今も砲撃を未然で避けたんだ。

 何度撃っても避け続けるだろう・・・」


戦闘人形の機動性から考えても、人型のロボットに砲弾を当てる難しさも考慮に入れて。


「どうやら・・・俺達の真価を見せてやらねばならんな」


部下の3人娘達に心つもりを促した。


「アイ!オーリア隊長」


キャミィが腕を捲る。


了解ラジャー!」


アルが大きく頷く。


「やってやりますかね」


操縦桿から手を離すラミアが、パスクッチに振り返る。


「ああ。対魔女装備ストライカーユニットを発動しろ」


ラミアに応えるように、パスクッチがニヤリと笑うのだった。



対魔女装備ストライカーユニットとは?

戦闘人形に戦車で挑む気なのか?

機動性でも、攻撃力でも劣る戦車に勝ち目があるとは思えないが?


パスクッチ等が如何なる手段で蒼穹の魔女ファイブと闘うのか?


姿を隠した戦闘人形との闘いが始る・・・

砲撃を間一髪で避けた魔女ファイブ?!

どこかへ消えた?どこかに潜んでチャンスを窺うのか?


まだ、戦いは終っていない。

これからが魔女と魔女殺ストライカーズしとの戦いなのだ!


次回 Act7 魔女を狩る者<ストライカーズ>

決め手は・・・魔女には心臓がないこと!いいや、戦闘人形には心臓なんて元から無いのだ!

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