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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第1部 零の慟哭 戦闘人形編 魔弾のヴァルキュリア 第2章 奪うモノ 奪われるモノ 
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Act3 救助隊<騎兵隊>

機械兵を束ねる死神人形ファースト。

やっと核の脅威から抜け出せた場所まで辿り着けたのだが・・・


それは人間達にとっても同じ事。

放射能の影響を受けなくなったのならば?


救出作作戦の発動となるのか?

人工衛星からの情報が得られない今、頼りはコンパスと地図だけだった。


出発点のフロリダ州からニューヨークのオークタワーまではかなりの距離がある。

オーク社フロリダ工場から二千の機械兵達が強行軍するなら、数週間は掛かってしまうだろう。

途中で何も起こらなくとも。


しかも機械兵達を載せれる鉄道も破壊されて動けなくなっているから、自らの足で行軍しなければならない筈だ。

それならば歩行スピードで北上しているのは間違いない。

どれ程早くても時速20キロメートル以上は出せないだろう。


それだけが追跡者チェイサーの頼みの綱でもあったのだが・・・




夜の静寂の中で、車輛達はエンジンを停めていた。


日中の暑さの為にエンジンを冷やしてでもいるのか?

はたまた、どれかの車両に故障でも起きているのか?



「マクドノーの兄貴。良いんですかい?」


車の陰で珈琲を啜っているスキンヘッドな男に黒服が伺いを立てる。


「一刻も早く追いつかなければいけない筈では?」


夜間であっても車ならライトを点けて走れる。

悪路とは云えども、それ相応の車両なら問題は無い筈だった。

自分達が乗っているRVタイプの車両ならば、走行に支障など無いと思っているようだが。


「お前、舐めるのは自分の頭だけにしておけよ。

 相手はレーダーを装備した機械兵だぞ、夜闇が利かないのはこっちの方だぜ?」


「あ・・・そうでした」


マクドノーは夜間でも相手の動きを読める電波探知機レーダーの有効性を言ったのだ。


「まぁ・・・そう言ったのはあいつだけどな」


皮肉を溢して、珈琲を入れたカップを戦車へ向けて教えてやる。


「あのパスクッチとかいう戦車野郎が・・・ですかい?」


砲塔上部に着けられてあるキューポラと言われる開口部ハッチを見上げる黒服。


「ああ、奴が言うんだ。

 夜明け前までは動きが取れないんだとさ」


「え?!そんなに・・・動けないんですかい?」


この辺りには機械兵の出没が考えられ、いつ襲われるかも分からない状況なのだが。


「下手にエンジンに火を入れれば、赤外線探知機にも引っ掛かるそうだぜ」


熱を感知する赤外線探知機も、機械兵は装備しているだろう。

下手に走れば、奇襲を受ける虞があるという事か。


「・・・とどのつまりは、何も出来やしないってことさ」


世界中に広まった怪電波により、人工頭脳を持った機械達は悉く人間の敵となった。

機械兵でなくとも、ロボットならば攻撃してくる虞があるのだ。


「おまけになぁ、この辺りの州兵に装備されていた新式の戦車が反逆したって話だぜ」


「うへぇ?!こっちはたったの一両だけなのにですかい?」


マクドノーが言う新式戦車は、人が乗らずに戦える。

人工頭脳を装備し、無人で闘えるリモート戦車だった。


「州兵に配備された車両は少ないらしいが、侮りがたい事には違いないらしいぜ」


「それはそうでしょうが・・・こんな場所に留まる方が危ないのでは?」


黒服は自分達が留まっている小高い丘を見回して、心配そうに訊くのだ。


「だからお前は頭でも舐めておけと言われるんだ。

 下手な場所に行けば、袋のネズミにされちまうのが分からんのか」


相手は機械兵だけには留まらず、人工頭脳を持つ戦車もいるのだから・・・と。



黒服を煙に巻き、一啜り珈琲を口に運ぶ。


「戦闘のプロが言うんだから、間違いないだろう?

 俺達はあいつ等に任せておけば良いんだよ、少なくとも救出場面まではな」


マクドノーは焦ってはいないのだろうか?

パスクッチという男に任せっきりで?


「お嬢を無事に救出出来るまでの我慢さ。

 お救い申し上げれば、あいつ等なんて用無しになるんだからな」


いいや、マクドノーは端から任せっきりにしようなんて考えていない。

傭兵を利用する事だけしか考えていないのだ。


「それまで、精々機械共の相手をして貰おう。

 俺達がリィンタルトお嬢を奪還できるまでは!」


「オーケー、リーダー!」


黒服もどうやらマクドノーの考えが分かり、納得したようだった。





車内灯の下で、パスクッチの話を聞き終えた3人が・・・


「人質を無事に奪還するなんてなぁ?」


ラミア操縦士が腕を組む。


「たった一両で・・・ムズイな」


キャミィは戦闘帽を阿弥陀に被る。


「砲弾のストックも心許ないですしね」


砲手席に座るアルがラックの弾を数えて上を向く。

その視線の先に居るパスクッチへ質してもいるようだが。


「言っただろう?戦車を囮にするんだと」


レーションを一口咥え、金髪のパスクッチが笑う。


「ですから隊長、囮にしたらアタシ等はどうなる?」


ラミアがツィと身を乗り出して質問する。


「決まってんだろドライバー。

 ウチ等の得意技を披露してやるんだよ」


下げていたヘッドホンを外し、キャミィが腕をぶん回して。


魔女殺ストライカーズしの異名を取るパスクッチ隊の本領を・・・さ!」


それが自分達が傭兵として生きて来た証であると言うのだ。


「まぁ、相手が機械兵如きならば良いんだけどねぇ」


ラミアは幾分乗り気ではなさそう。


「黒服達の情報に因れば、魔女も居るそうじゃないか?」


魔女・・・それは?


「ああ、なんでも新式でナンバー持ちの凄腕らしいけど?」


砲手のアルが口を挟む。


「アークナイトの戦闘人形バトルドールらしいわ。

 一体で機械兵数百に相当するとか・・・」


情報で得られた敵の正体を明かすのだった。


「ヘッ!相手にとって不足はないって処だね」


でも、キャミィには虞を抱く相手ではないようだ。


「こっちは海外で数百の戦闘人形バトルドールを駆逐して来た経験ってもんがあるんだよ」


ふんっと胸を反らして意気込むのは、自信の表れか。


「まぁ・・・そうだけどさ。

 今はソナーもレーダーも使えないんだから、少々気を引き締めないとな」


ラミアはキャミィを嗜めるように言ってから、隊長であるパスクッチを見る。

それに釣られて残りの二人も隊長を見上げた。


3人が答えを求めて来たと分かったパスクッチが、こほんと咳払いすると・・・


「キャミィもラミアも、それにアルにも言っておくぞ。

 俺達は金で動く傭兵だ。いいや、今迄はそうだった。

 だが、今度は自分の意思で闘いたくなった。

 たった独りの娘っ子を助ける為に、命を張る気になったんだ。

 あの禿親爺が言っただろう、リィンタルトとかいう娘は世界を救える唯一人の人間だと。

 この糞ったれな機械共を駆逐してくれるのはあの子しか居ないのだと。

 だからなぁ、俺は何としても救出する。

 何が何でも人間の世界を護りたくなったんだ」


ひと息に考えを披露して3人を見据えて、


「どうだお前達。

 俺と運命を共にしないか?」


マクドノーから聴いた話を真に受けていたのだ。


「そりゃぁ、パスクッチ隊長がそう考えるのなら」


「あたしはオーリア隊長に続く」


「是非も無し・・・ですよ隊長」


3人は即座に頷き合う。


「だって!パスクッチ隊長が居てこその<魔弾のヴァルキューレ>ですもの」


「そうそう!」


「ウチ等は地獄までだって一緒ですからねぇ」


キャイキャイ言い合う3人の娘達。

その顔には死を怯える素振りも無い。


「すまんな、アル、ラミア、キャミィ」


同じ心を持つ者同士、意気投合は当たり前。


「そんじゃぁ、俺達の闘い方で奪還作戦を執り行うぞ!」


「アイ!パスクッチ隊長!」


車内に3人の声がハモる・・・




小高い丘の上にはRV車が5両。

これには黒服を指揮するマクドノーが陣取り。

旧式だが、10センチキャノン砲を装備する戦車<魔千破マチハ>にはパスクッチと3人の娘が乗車している。

この6両がリィン救出隊の全て。

敵機械兵軍団2000に対して、たった6両で挑むと言うのだ。


一体如何にして?

どんな作戦を執る気なのか?


そして<魔弾の戦女神ヴァルキューレ>と呼ばしめるのは?


間も無く始まる奪還作戦。

その結末や如何に?!


一両の戦車で救出作戦をやってのけると?

いくら傭兵の中でも優秀者揃いといっても数が違いすぎるのではないか?


だが、彼らは<魔弾のヴァルキューレ>だと嘯くのだ。

戦闘人形だろうと構う事も無いと嘲笑うのだ。

どんな戦法で?如何なる手段を用いると言うのか?


間もなくその秘術が公開される。

その時、リィンは無事に奪還できるのだろうか?!


次回 Act4 無意味な戦い

分派された斥候隊の機械兵達は、小さな町で思わぬ抵抗に遭っていた?!

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