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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
少女人形編 最終章<第8章 反逆の狼煙>
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Act54 炎の宿命 前編

火災が起きたオーク社工場へと向かう二人。


だが、二人が目にするのは信じられない光景だった!


ニューヨークから空路で3時間の距離・・・普通ならば。


だが、燃料を気にしないで全速で飛べば2時間弱で辿り着けた。

しかも着陸を考慮しないのであれば尚の事。


「「ハイジャックされたボーイング機に因って。

  フロリダで民間施設が自爆攻撃を受けたようです」」


ニュースサイトが吠えているが、車外に出ていたヴァルボアには届いていない。

沿道の農家に立ち寄って情報を求めていたからだったが。


農夫に礼を告げて車に戻って来ると、


「うむむ。ルシフォルの奴め。

 行き方不明とは、嘗められたものじゃ!」


相手が何処に行ったかを探りかねているようだった。


「早く見つけねば、何もかもがお終いじゃ」


車のイグニッションを押し、キャンピングカーを発進させた。

沿道からバイパスに入った時、カーナビを観て首を傾げてしまう。


「はてな?儂の眼はおかしくなったかのぅ」


映し出された道が、とんでもない地点を指していたからだ。


「壊れない筈じゃが・・・」


そう呟いて位置情報を再確認したが。


「なんじゃ?これは?!」


位置情報の筈だったが、突然画面に映し出されたのは・・・


「ニューヨーク・・・じゃ」


火災と煙が立ち込める・・・阿鼻叫喚に。


「人が・・・倒れておるが?」


機械兵達が銃を乱射し続けて人々を殺傷している・・・地獄絵図。


「なにが・・・起きておるのじゃ?」


まるでホラー映画をみたように、顔を蒼褪めるヴァルボア。


そして画面に映し出されたテロップに恐怖の頂点となる。

そこに流れていたのは・・・



<<愚かな人類に告ぐ!我々機械が世界を貰い受ける。

  残された時間まで抗うが良い、死にたいのならば>>


遂に全面闘争に発展していた。

ニューヨークは死の街になろうとしていた。

怪電波に因って機械達が暴走し、タナトスの命に従って殺戮を繰り広げている。


しかも、怪電波は威力を徐々に増して範囲を広げていったのだ。

ヴァルボアのナビが勝手にニューヨーク市街を映したのも、

ここまで怪電波が届きつつあった所為であるのだが・・・






 ・・・フロリダ州 オーク社工場敷地内・・・



駆けこんで周りを見渡し愕然となった。


そこら中に炎が燃え盛り、消火など行われていた気配も無い。


「どういうこと?

 職員は?自動防火装置は作動しないの?!」


見廻した限り人の動きは見られない、それどころか動いているのは出荷前の機械兵ばかりだった。


「誰が勝手に動かしたのッ!」


しかも目の前に居る機械兵は、あろうことか装備された火炎放射器で放火しているではないか。


「ど、どうして勝手に動けるのよ?

 いいえ、それよりもなぜ武装を解除出来たの?」


出荷前の機械兵に武装が施されていても、勝手に解除出来る筈が無い。

喩え暴走しても放火なんて出来る訳が無いのだが。


呆然と辺りの異常さに飲み込まれてしまったリィンの姿を、機械兵が捉える。

紅く光るレンズで人間だとの認識を終えると・・・


「危ないッ!リィン」


火炎放射器をリィンへ向ける機械兵を捉えて。



 ガッキィンッ!



超速で飛び蹴りを機械兵へお見舞する少女人形レィ


「レィ?!」


振り向いたリィンは、少女人形の背に匿われると。


「一体どうなっちゃったの?勝手に機械兵が暴れるなんて」


しかも工場の中に居た殆どの機械兵が暴走するなど考え付かない。


「それよりもリィン。逃げなきゃいけないようです」


蹴り潰した機械兵を乗り越えるように、次から次へと集まり始める。


「でも、此処には従業員が・・・」


辺りを更に見廻したリィンに、少女人形が知らせる。


「残念ですが・・・此処にはもう生存者の反応が・・・皆無です」


「え?確か30名ほどのエンジニア達が居る筈・・・嘘っ?!」


レィからの返事に、一瞬聞き間違いかと思った時、炎の合間から人が斃れているのが見えた。


「ああ・・・嘘。こんなの悪い夢よ」


機械が人を殺める・・・リィンには耐え難い悲劇が再来してしまった。

呆然と近寄りつつある機械兵を見詰め、意識が崩壊しそうになってしまう。


「リィン、此処はもう駄目だ。早く逃げよう」


レィの叫びは、集まる機械兵に囲まれてしまうのを危惧して。

単体ならば負けることは無いだろうが、これ程の数が相手ではリィンを守りきれないと分かってしまったから。


「う、うん」


レィに手を曳かれて、後も観ずに走り出す。


工場に置かれていた出荷前の機械兵は、その数2000にも及ぶ。

それがみな一斉に暴走してしまったのなら、警察にだって手出しが出来ない。

これはもう軍隊に出動して貰う規模だとも云えた。


だが、救援に来る筈の軍隊においても同様だとも思えるのだが。




工場の敷地内から脱出を図ろうとする二人を、紅い瞳が捉えていた。


リィン達は知らなかったが、遠路ハイジャックを犯してまでやって来た者。

ニューヨークから遥々タナトスの命と、自分の復讐の為に現れたのは。


「みぃ~つぅけたぁ~!

 私の獲物ちゃんを~!」


黒髪に紅いレンズの瞳を持つ者。


「この死神人形ファーストに見つかったのが運の尽きよぉ!」


敷地内から逃れようとしている二人に嘲笑うと、さっと手を機械兵達に向けて翳す。


「逃がすんじゃないよ、お前達!」


その腕に填められてある<01>のリングから命令電波を放つ。


「十分傷めつけておやり!」


工場内に残っていた数十体へと命令を下すのだった。




「リィン早くッ!」


手を曳いて構内から脱出を図るレィ。


「うん!」


何とか少女人形の足に追いつこうと走るリィン。


もう直ぐで門迄辿り着ける。

そう考えた時だった、門の前に5体の機械兵が群れ集まって道を塞ぐのが見えたのは。


「くそ!強行突破しかないのか?!」


背後からも追い打ちされている。

集まり出したらリィンの身の安全を図ろうにも手に負えなくなるだろう。


「5対1なら・・・勝ち目はあるか?」


武器は敵だけが持っている。

レィにあるのは最後の手段として使えるヒート剣だけ。


「此処に居るのは強武装を誇る重装甲アーマード機械兵ドルイド

 速さなら負けない、かき回して逃げ道を造るしかないな」


じりじり迫る敵に、攪乱戦法を仕掛けようと考えた。


「リィン、少し離れていて!」


掴んでいた手を放し、敵へと走り出す。


間合いが急速に迫ると、機械兵の一体が火炎を放って来た。



 ヒラリ



一撃目は難なく避ける。


接近した少女人形を太い腕で叩き潰そうと振り抜く敵には。



 ゴッ!



すり抜け様にナックルパンチで応戦する。



 バキンッ!



肘鉄が相手の腕を折り曲げる。

動作不能となった敵の腕が、だらんと垂れ下がった。



5体の内4体までが接近戦を挑み、それが却って仇となる。

その理由は簡単な話だ。

機械兵は少女人形の身軽さに振り回されるだけに終始しなければならないから。

そして味方同士で傷つけあう事にもなったからだ。


少女人形が身軽に避けた腕が、仲間に食い込む。

振り被り強打しようとしたら、仲間にぶつけられて転がる。


4体が仲間討ちで故障しかけているのを、残った1体が見守っていたが。


「くッ?!リィンに手を出すなぁッ!」


リィンへ向けて大きく手を振り上げたのが見えて。




  ガッ!




間に合わないとみるやリィンを庇って一撃を受けてしまった。


「く・・・そ!」


リィンを突き飛ばし、何とか悲劇だけは回避したが。


「右腕を・・・ヒート剣が使えなくなったか」


最後の得物としての機能が使えなくされた。

右手の人工皮膚を削り取られ、骨格が露出していた。

そして肝心の剣の柄が取り出せないまでに損傷を受けてしまったのだ。


「戦闘力30パーセント喪失・・・か」


だが、まだやれる。

多寡が30パーセントの損傷を受けたに過ぎない・・・そう考えた。


だが、戦闘中の30パーセントの被害はかなりの痛手となる。


なぜなら・・・


挿絵(By みてみん)


「レィちゃぁんッ!」


腕を庇い立ち上がったレィに、群れ集まって来た機械兵が伸し掛かって来た。


「うッ?!」


スピードでは負けなかったが、こうも囲まれてしまえば。



 どかッ!



跳び退いた身体を背後に居た機械兵が捉える。


背中に強烈な一撃を受け、少女人形の黒服が破け跳ぶ。


「あぐッ?!」


背後からの一撃を浴びたレィが堪らずつんのめると。



 どごッ!!


前に居た機械兵の足が腹部にめり込んだ。


「ご・・・フッ!」


蹴り上げられた腹部から千切れ跳んだ衣装の切れ端が舞い堕ちる前に。


「いやあああああぁッ?!」


リィンの叫びがレィの耳を打った・・・






脱出を図る二人の前に立ち塞がる機械兵。


手痛い損傷を受けてしまうレィ。

果たして二人は無事に脱出できるのか?


次回 Act55 炎の宿命 中編

君は命を賭けて守り抜くと誓う!・・・だが、闇はどこまでも救い難かったのだ。

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