表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
少女人形編 最終章<第8章 反逆の狼煙>
52/426

Act51 別離に贈る言葉

リィンの指に填められた翠のリング。


指輪に籠められた誓いと願い。

それを見詰めていたレィは?

微笑ましいと云うか、涙ぐましいと云うか。


「リィンは少しだけ大人になったんだなぁ」


離れた場所から覗き見をして、そう感じていた。


「それにしてもエイジったら、乙女心を分かっちゃいないわよねぇ」


憤慨モノだと、弟に対しては愚痴を溢して。

でも、姉としてはやれば出来る子だとも思えた。


「どこで拵えて来たのかしら、あんな指輪を」


機械の眼で指輪を観て判ったのだが、


「あれには守護の魔法がかかってる・・・ってのは冗談だけど」


冗談?


「着けた者が意図すれば、思わぬ威力を発揮するでしょうね」


威力とは?


「超細密構成されたレーザー波か。

 もし拘束されても手錠位は訳も無く斬れるでしょうね」


おお?!


「まぁ、リィンには使い方なんて分からないでしょうけど」


・・・それもそうでしょうね。


指輪の秘密を見破ったレィだったが、二人の邪魔は出来なかったのは姉である前に少女人形だったからで。


「私もエイジと話したいんだけどなぁ」


出来る事ならリィン抜きで。

見つめ合う二人に気が引けて、話しかけるチャンスさえ見つけられなかった・・・が。


「アークナイト社の御関係者は居られませんか?

 居られましたら内線電話までお越しくださいませ」


突然のチャンス到来。


「何よもぅ、もう時間が無いって言うのに!」


早速リィンが文句を吐いている。


「良いよリィン。大切な要件だろうからさ」


これ幸いな一言をエイジがのたまう。


「これは・・・チャァーンスゥ!」


少女人形の瞳が光る。


「分かった。

 エイジ、必ず・・・還って来てよね?」


「うん、約束したから。リィンの元へ二人で帰るから」


見つめ合う二人・・・に、じれったくなったレィは。


「最期でしょ~、お別れのキスとかやらなきゃ~」


小声でエイジの耳へ知らせる。

しかもそれとなく二人を応援する為に・・・



 ドコッ!



素知らぬ振りでエイジを突き飛ばす。


「え?!きゃッ?」


リィンにはエイジが突然抱きに来たと想えただろう・・・か?


「ご、ごめんリィン」


急に飛びついたのを謝ろうとしたエイジの眼に、リィンが眼を瞑ったのが映ってしまう。

その瞬間、歯止めが効かなくなるのは愛おしさなのか。


「はい。これで完了っと」


ポンポン手を叩くレィは二人から背を向けて待つ事にした。


「ごめんリィン」


「謝るのならしないでよ、馬鹿!」


いつも通り、リィンは気恥ずかしさから罵倒する。

でも、声から察して全然怒っていないのが分ってしまう。


「待ってるから・・・」


「分かってるよ」


約束を交わした二人が離れていく姿を見送ってから。


「私にもキスをするか、エイジ?」


弟へ向けて冗談で語り掛けた。


「レィ姉さん?!」


我に返って振り返って来る弟に、


「君が一緒に行ってくれるのは心強いのだけどな。

 これからは何事も自分がやり遂げなければならないんだぞ」


月へと向かう気心を教えようとする。


「分かってるって、それ位は」


強く頷き返して来るエイジの顔を観た時感じた。


「君、いつの間にか男っぽくなっていたんだね。

 こんなに大きくなって・・・強くなって・・・知らなかったわ」


自分よりも背が高くなり、背中も広く感じて。

それに、いつの間にか声までが雄々しく聞こえる。


「道理で。リィンがホレる訳だ」


別れの前だというのに弟へ微笑めた。


「これなら月へ行ったって大丈夫だよね。

 君に全てを託しても安心できるよ」


全てという処で力を込めた。

そうする事で本当の自分を託せると思うから。


「レィ姉さん、でもまだ確定した訳じゃないんだよ。

 本当の身体に記憶が残されているのか不確実だから」


「ああ、そうだったなぁ」


弟が心配するのは分からないでもないが。


「でも、身体を治せればリィンは喜ぶよ。

 それだけでも十分じゃないのかエイジ?」


「レィ姉さんは、飽く迄もタナトス教授を停める為に往くんだね?」


うん・・・と、頷いてしまってからしまったと思った時には。


「逝くなよ姉さん。どんなに辛くったって諦めちゃ駄目だぞ」


思いっきり抱きしめられていた。


「記憶だからって死んでも良い訳が無いじゃないか。

 月の姉さんが蘇ったとしても、此処に居るレィ姉さんが死んで善い訳が無いんだよ」


「あ・・・うん」


また弟に抱しめられてしまった。

しかもこんこんと説き伏せられて。


「僕達が月から戻るまで、勝手に死なないと約束してよ姉さん。

 リィンの為だけじゃなくって、僕達みんなの為に・・・さ」


それが出来るのなら・・・そう答えようと思った。


「戻るまで・・・か。

 どれだけ待てば良いんだろうな?」


でも、出来なかった。


「そうだね、レィ姉さんがホワイトチョコを食べれたら・・・かな」


無理強いは弟の口からは出て来なかった。

冗談で返してくれた・・・自分を想ってくれるから。


「少女人形はチョコなんて食べれないんだぞ」


「さぁ?どうだか。姉さんのことだからいつかは食べるんじゃないの?」


クスッと笑い合えた。

それだけで十分最期の別れを告げれたと思う。


「帰って来るんだぞエイジ。

 なにがあっても、リィンの元へ」


「分かってるって言っただろ、少女人形のレィ姉さん」


固い姉弟の絆を振り解くように、二人が離れていく。


「約束はいつの日にか果たさなきゃいけない。

 私の弟エイジは、必ず帰還すると誓った。

 そうだな?」


「誓うよ姉さん!必ず地上へ舞い戻るから」


宜しいと頷き、片手を上げて最期とする。

微かに哀しみが湧く心を捻じ伏せて。

そして行って来いと振り上げようとした・・・時。


「死ぬな姉さん!死んだら天国から連れ戻すからな!」


決別に弟が叫ぶ。死ぬなと・・・唯一声。


「ありがとう、私の一番大切なエイジ


姉と弟は誓い合った。

それがどんなに辛い事なのか分かっていても。


最期の日。

それがやって来てしまうのを懼れて。






受話器を取って話を聞く。

アークナイト社から何を報告して来るのだろうと思いながら。


「「大変です!少女型ドルイドが・・・いえ。

  少女人形達が勝手に居なくなってしまいました」」


「は?なんの冗談蚊と思ったら・・・って。ええッ?!」


リィンは訳の分からない話だとは思えなかった。


「全部で何体居なくなったの?」


確かアークナイト社に保管されている人形達は数百にも上ると考えて。


「「総合で2000体にも及びます。

  それだけの数が一晩で・・・方々探索しましたが」」


「まだ見つけられない訳?」


リィンの問いに相手は肯定して来る。


「そんな・・・雲隠れするにしたって何処によ?

 2000もの人形が何処に消えるって・・・・」


そう自問した時、行き着いたのは。


「直ちにオーク社にも報告しなさい。

 それとユーリィお姉様にも。一刻を争うのよ急いで!」


もはや事態は急転直下に堕ちたのだと悟ってしまう。

来るべき日が訪れてしまったのだと。


「せめて・・・このシャトル便だけでも無事に行かせないと」


明日の朝には打ち上げられる。

それまでは世界が無事であるのを願うよりはない。


リィンは最期の日が迫りつつあるのを肌で感じていた。


これが見納めだと言わんばかりに抱き締められた。

二人はエイジとの別れを惜しんだ・・・・


月へ辿り着いたら渡す約束だったリィンの小箱。

昔話に引っ掛けたリィンの言葉を思い出したエイジは?

浦島太郎となるのか?ならないでしょうけどW


次回 Act52 リィンからの便り

君の想いは彼に届くのか?届いてしまえばどうなると言うんだろう・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ