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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第6章 思い出を穢す者
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Act41 戦闘人形レィ起動!

現れた死神人形ファースト

リィンの前に凶刃を翳す・・・


その時蒼き光が現れる・・・

黒い円環に灯が燈る。

緑色に浮き出た(ゼロ)の数字。


胸のリボンに着けられた黒曜石に、戦闘状態を表すデジタルの0<ゼロ>が点灯した。


各部への動力の伝達が終えられ、身体の全てに戦闘力を取り戻したのだ。

少女人形は今や、戦闘人形バトルドールへと変貌する。


体の自由を取り戻した瞬間、瞼を閉じたレイ。


「リィンを護るのが私に課せられた使命」


短く呟き瞼を抉じ開ける。

見開かれた眼に輝くのは蒼き瞳。


「リィンに危害を加えんとする者は、誰であろうと排除するのみ!」


穏やかだった少女人形の顔に現れるのは、敵を討つ戦闘人形レイいかり


リィンを斬ろうと刃を構える相手が現れた今、絶対無二の約束を果そうとする。

どんなに闘いが嫌いであろうと、我が身が潰えようとも。


闘う相手が、譬え旧友であったとしても・・・






「止めるんだフューリー!リィンから離れろ」


友の名を名乗った少女人形に対して、


「これ以上罪を重ねるんじゃない!」


一瞬で駆け寄り、刃を持つ手を握り締める。


「レィちゃんッ?!」


リィンの声が戦闘少女レイを呼ぶ。

刃を振り下ろさんとしていた少女人形の顔が引き攣った。


「バ・・・馬鹿な?」


今の今迄、固まっていた少女人形が手を掴んでいる事も驚愕に値したが。


「レィ・・・だって?」


その名を聞かされた死神人形と呼ばれる暗殺者アサシンが眼を剥く。


「まさか・・・お前は?!」


考えよりも先に身体が反応した。

掴まれた手を引き剥がし、飛び跳ねるように後退る。


「唯の少女人形では無いとは思っていたが・・・」


掴まれていた手を一目見てから、考えた結論を口にする。


「タナトスは失敗だと言っていたが。

 お前は宿っていたのか、リィンの人形の中へと。

 ・・・蒼騎あおき 麗美れいみ!」


通常の人形であるのなら、誰かによって遠隔操作されている筈。

それならば、この大広間では動けない。

動けても人工頭脳では、細かな言動など執れる訳も無い。

ましてや、自分をフューリーと呼んだりはしない。


「そう・・・だとしたらどうなのよ、フューリー!

 どうやらあなたも転移したみたいだけど?」


リィンを庇う為に前へと進み出るレイが、刃を持つフューリーへと質す。


「あの事件も、あなたが起こしたのね?

 人形に転移してまで、人を殺めるなんて・・・」


「クククッ!その通り。

 あれは私個人の恨みを晴らした復讐劇だっただけよ」


正体を晒したフューリーは、事件の真相を教える。


「あの姉妹には嫌になる程扱き使われ続けた。

 どんなに尽くそうが、涙を呑んで耐えようが、酷い仕打ちを受け続けた。

 あなたも見知っているでしょう、メイドだった私がどんな目に遭わされて来たのかを。

 でも、それだけじゃなかった。

 あいつ等は私の両親を殺した機械兵をガルシアに密輸した張本人だった。

 秘密を知った私を追い込んだ挙句、裁判でも口を封じられてしまったのよ!

 そして・・・私はあの監獄で拷問を受け続ける羽目になった・・・」


ぎろりとリィンとレイに目を向けて。


「リィンにはまだ分からないでしょうけど、女の私が受けた拷問。

 看守や受刑者に群がられ、身体中を穢され続けて・・・死んだ方が楽なくらい。

 でもね、復讐を遂げたい一心で・・・耐えたのよ。

 悪魔に魂を差し出してでも、恨みを晴らしたかった・・・」


筆舌を絶した苦しみの果てに、辿り着いたのは?


「そこに居るおっさんがね、私を牢屋から出した。

 オーク社の金で私をタナトスに差し出したの。

 人体実験を遂げさせる為に・・・よ」


ニヤリと口を歪ませる少女人形のフューリーが、タナトス教授から受けた実験を教える。


「彼は言ったのよ、人間を憎むのかってね。

 復讐を遂げたくはないのかってね。

 当然、全ての復讐を遂げたいと答えたわ」


一旦口を閉ざしたフューリーが、レイに目を向けて。


「彼はこう言った。

 一度目は失敗だったが、今度は間違いなく成功させると。

 私を機械の身体に転移させ、不死身の復讐者へと成してやるのだって」


人類最初の転移者へと刃を突きつけて来る。


「だから・・・私が1ファーストの筈だったのよ?

 レィが成功していたなんて聞いてなかった。

 失敗者だったのに、なぜ私の前に居るのよ」


睨むフューリーからは、怨唆の声しか返って来ない。

だが、聞いたレイはほっとした表情になる。


「?!なにが可笑しいんだレィ?」


笑われたと感じたのか、フューリーが目を吊り上げる。


「いいえ、何も。

 唯、タナトスは失敗したのだと思い込んだままなのが分かったから」


少女人形同士が向かい合う・・・蒼い瞳を見つめ合いながら。


「でも、タナトスは第二の実験を繰り返した。

 そしてあなたが此処に居る・・・人間が手にしてはならない技で。

 魂を操る彼は遂に・・・悪魔に身を貶めた」


自分だけで実験を諦めてくれたのなら、まだ救いはあったのに・・・と。


「やはり彼は。

 どうあっても人類再生を成し遂げようと目論んでいるのね」


出来るなら、最初の一回きりで諦めて貰いたかった。

人間の魂を操るなんて、悪魔にも等しい悪行だと分って欲しかった。


「だとしたら・・・どうなんだレィ?

 彼の為そうとする再生を阻むとでも言うのか?」


「もし、本気でやり遂げようとするのなら」


睨みあう二人。

もう既に仲は分かたれ、敵対する者同士となってしまったかのよう。


と・・・急にフューリーが笑い出す。


「あははははッ!これではっきりしたわ。

 これでやっと手に出来たのよ、フューリーとしてもファーストとしても。

 蒼騎麗美の名を冠する者を・・・殺す口実がね!」


タナトスの思想に属する人形少女が言い切った。


「人類に復讐すると決めた私に歯向かうのなら。

 邪魔な存在として殺して あ げ る 」


瞼を細め、舐めるように相手を睨むフューリーだった人形。


「ついでに、リィンは貰い受けるから。

 喜んで頂戴よね、少女人形の<ゼロ>!」


ニヤリと嗤い、刃の先をレイへと向けてくる。


戦闘状態になっているレイも、リィンを奪うと聞かされては黙ってはいられない。


「奪えるものなら奪ってみろ。

 だが、私は護ると約束したんだ。

 この躰が壊されようが、無碍には渡すものか!」


リィンを庇って身構える。


「レィちゃん?!」


目の前で始まろうとしている闘いに、リィンは双方を停めたかったのだが。


「リィンはロッゾアさんを!」


息絶えようとしている祖父を観ていろと勧められて。


「う、うん。レィちゃん」


もはや仲裁は無理だと分かってしまう。


「無茶は駄目だから。

 相手をフューリーちゃんだとは思わないで。

 死神人形のファーストだと割り切って!」


だから、闘う事が嫌いなレィに忠言を与える。


「人形の試合だって同じなんだよ。

 どんなに仲の良い相手にだって、遠慮したら駄目なんだ。

 手を抜くのは相手を愚弄する事にもなるんだからね」


情けをかけるのもご法度だと。


「分かった・・・全力で叩くわ」


リィンがかけて来た声に、レィへの信頼が伺えた。

絶対に負けないと確信しているのだと分かったから。



「フン!なれ合いはそこまでよ。

 刃に懸って死んでしまうが良い!」


死神人形フューリーは手にした刃を突きつけ、何も手にしていないレイを嘲る。


「そう?

 じゃぁ・・・やってみなさいよ!」


刃を向けられていても動じない声が戦闘人形レイから返されて・・・


「ほざけがぁッ!」


目を吊り上げる死神人形の刃が閃く!

戦闘は回避不能。

だったら・・・闘うしか道は無い。


闘え少女人形レイ!

いいや、敵を倒せ戦闘人形バトルドールレィ!


次回 Act42 思い出を穢す死神人形

零を超える為に造られたファースト。今、宿命のゴングが鳴る!

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