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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第6章 思い出を穢す者
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Act40 裏切りの刃

祖父と孫として縁を交わした2人。

やっと復讐を捨て、人の心に戻ったロッゾア。


孫娘でもあるリィンが、祖父の手をとろうとした時・・・

祖父と孫娘の抱負に気を取られていた。

最初から何かの気配を感じていたというのに・・・



「え?!どうかしたのロッゾアお爺ちゃ・・・」


手を取り合っていたリィンが最初だった。


携えていたロッゾアの手が離れていくのを不思議そうに眺め、


「え?!え?」


倒れていく祖父を、信じられない物でも観てしまったかのように・・・




守る為の位置取りとして、リィンの後ろに立っていた。

ロッゾアが襲い掛かる気配を執ったのなら、直ちに駆けつけるつもりだったから。


それがリィンによって呪いが消され、二人は祖父と孫娘の間柄となった。


最高のフィナーレを迎えられる・・・リィンの希望通りに。


そう思い込んだ・・・少女人形レイも。



それが油断でしかなかったと、思い知らされることとなる。



 ・・・ドサッ・・・



崩れ落ちたロッゾアが床へと倒れ込む。


「お、お爺ちゃんッ?!」


何がどうなったのか、把握できないリィンが声を限りに呼んだ時。


「あ?!嘘?」


倒れたロッゾアのホームウエアに紅い染みが拡がって行くのが眼に入る。


「何?なぜ?なにが?」


目の前の光景が信じられず、狼狽えて立ち竦んだ。


「リ・・・リィンタルト。

 俺の孫娘は・・・無事なんだろうな?」


倒れたロッゾアは、苦しげな声で呼びかける。


「はッ?!

 あ、あたしは・・・無事よ!

 どうしちゃったのロッゾアお爺ちゃん?」


混乱で我を忘れていたリィンを正気に戻した声が、


「奴め・・・俺を裏切りおったか」


自分の背後に隠れている者が居ると知らせる。


「奴って・・・誰なの?」


倒れたロッゾアを抱き起そうと手を伸ばすリィンが、相手が誰かを問うのだが。


「奴め、俺がリィンタルトを許したのが気に喰わなかったのか!」


怒りの呻きを返しただけ。

だが、リィンの手が触れたと分かった途端に。


「この子だけは。

 俺の孫娘だけは!お前などに渡すものか」


決死の形相で背後を観ようとする。


「お爺ちゃん・・・あのカーテンに誰が?」


ロッゾアの動きを知って、垂れ下がっているカーテンに目を向けた。


「じゃれ合うとは・・・お前も人間でしかなかったようね」


そのカーテンから、ハスキーな声が聞こえて来た。


「私はお前を裏切った訳ではない。

 端から利用していただけ。勘違いしないで貰いたいわね」


ふわりとカーテンが揺れ、黒いブーツが見えた。


「誰よ!隠れていないで姿を見せたらどうなの!」


声から想像して、暗殺者ヒットマンか若しくは諜報員スパイか?

どちらにせよ、敵と思って間違いない。


「リィンタルト・・・俺を盾にしておれ。

 必ず守ってみせる、お前だけは失って堪るものか」


一撃を喰らったロッゾアが、何としても護り抜くと言うのだが。


「ロッゾアお爺ちゃん・・・やめて。

 こんなに深手を負っているんだよ?」


衣服に拡がる紅い染みを観て、リィンは泣き出しそうになる。


「いいや、俺は一度たりとも護れなかった。

 だから・・・最後くらいは守らせてくれリィンよ」


「お爺ちゃんッ?!」


起き上がるロッゾアが、リィンの手を跳ね除ける。


「俺の孫娘は、死神人形ファーストには渡さんッ!」


「ファ・・・ファーストって?」


聞いたことの無い名前。

でも、何かしら悍ましい気がしてならない。

カーテンの向こうに居る者が、悪魔の手先にも思えてしまう。


「フ・・・くたばり損ないめ。

 どうして人間はこうも愚かな存在なの・・・」


フワッと。


そしてギラリと。


「だったら・・・死んでしまえ!」


カーテンが捲れ上がった・・・何かが飛び出して来た。


「あ・・・」


金髪が靡いて、白刃が閃く。


「あなたは・・・」


目の前に現れ出た者が、白刃をロッゾアへ突き立てる。


「あの・・・

 エリザ姉様とリマダ姉様を殺した・・・あの少女人形?!」



一瞬の出来事。

だが、リィンにとっては時が停まったかに思える。



  ざぅッ!



「ぐぅッ!」


ロッゾアの呻きが耳を打つ。

背中まで貫通した刃の先が眼を射る。


「きゃあああああぁッ?!」


頭の中が空白となり、信じがたい悲劇に叫ばずにはいられなくなる。


「ロッゾアお爺ちゃぁ~んッ!」


眼を見開き、白刃に倒れる祖父を呼ぶ。


「いやあああぁッ!」


折角打ち解けあえたのに。

やっと呪いを解いてあげられたのに・・・それなのに。


「レィーーーーーッ!」


護る筈だった少女人形を呼ぶ。

悲劇を解決してくれる、魂を宿した人形を呼んだ。




ー しまった!


臍を噛むとはこんな場面だろうか。

手を拱いてしまった自分を叱責する。


ー まさか・・・あの子が居たなんて?!


人感センサーには反応が無かった。

この広間にはロッゾア・オークとリィンだけが存在していた筈だった。


そう・・・人間としては。


もし、機械人形だとしたら身動きが取れない筈だった。

自分が固まっている様に、操手からの電波は妨害されているのだから。


しかし、目の前に躍り出て来た少女からは人の反応が見当たらない。

つまり・・・


ー 私と同じ?!この子も・・・転移者!


あの実験が繰り返された?

また一人の犠牲者が現れてしまった?!


少女人形は目の前に惨劇を食い止めることが叶わなかった。

動力を作動状態へと持っていく暇さえも無かったのだ。


ー 待っていてリィン、今行く!


動力が各パーツに行き渡るのが、もどかしく感じる。

再起動された躰を動かせる状態にする、僅か0コンマ3秒が何時間にも思えた。




「レィ・・・だって?

 リィンの人形には打って付けの名だこと」


邪魔なロッゾアを斬った人形少女が切っ先をリィンへ突きつける。


「あ、あなたは・・・何者なの?

 どうしてこんな酷い事をするのよ!」


ロッゾアに縋り付き、上目遣いで人形を罵る。


「私・・・か。

 良く知っているだろうに、忘れたのか?」


「あの試合の時以外は知らないわよ」


記憶を辿っても、悲劇の試合会場でしか知らないと答える。

すると、少女人形は何を思ったか。


「ぎゃはははッ!

 リィンは知らないだろうけどね、私は良く知ってるのよ。

 なにせフェアリー家のメイドとして暮らしていたのだからねぇ!」


「え?ええッ?!」


嘲笑いながらリィンを嘗めるように見詰めて。


「ほら・・・私よ、リィン。

 あなたが一番良く知ってるフューリーなんだよぉ」


ギラリと輝く蒼いレンズを向けて来るのだった。


「嘘・・・嘘よ!

 フューリーちゃんは刑務所に居る筈・・・」


「いんやぁ~、此処に居るのよねぇ。お生憎様!」



挿絵(By みてみん)



呆然と見上げるリィンへ白刃を突きつける少女人形フューリー


「そのおっさんは必要が無くなった。

 あなたを私の物にするのに利用しただけ。

 ここにあなたが来ると教えられたから用心棒を買って出ただけ。

 そして、我が主の許しで・・・殺しに来ただけなのよぉ?

 分かったかしらぁ、糞野郎のロッゾア!」


まだ息のあるロッゾアを罵倒するフューリー。

嘲笑い、リィンを連れ去ると言い切ったのだが。


「ぐ・・・馬鹿な。

 タナトスの許しだと?」


「もうね、あんたの馬鹿さ加減には飽き飽きしていたのよ」


へらへらと笑う少女人形が、刃の先をリィンへと向けて。


「リィンは元々、私だけのモノ。

 お前が奪うなんて馬鹿も休み休みに言えよな」


「俺の孫娘だぞ!お前のモノではない!」


ロッゾアが言い返すと、白刃の先をまたもや変えて。


「まだ口が利けた様ね・・・」


トドメを突き立てようと振り上げた。

その瞬間、リィンが咄嗟に庇う。


「やめてぇ!もうやめてよぉ!」


身を挺して白刃から庇う姿を観た。


「くっ?!」


流石にフューリーの手が停まる・・・筈だった。


切っ先がリィンの背中まで後10センチにまで迫る。



「そこまでだ!少女人形のフューリー」


突然横合いから、


「私が相手になる!」


身動きできない筈の少女人形が突っ込んで来た!


黒い髪には蒼さを滲ませ。

蒼い瞳には正義を湛え。


少女人形<レイ>が約束と誓いを胸に抱き!



「レィちゃん!」


視界の端に映る姿に、リィンは思わず少女の名を呼んでいた。

凶刃に倒れたロッゾアを庇うリィン。

二人の前で嗤う少女人形が名乗った。


・・・自分がフューリーなのだ・・・と。


リィンの窮地に蒼き瞳が開く。

秘められていた闘争力を全開にして!


次回 Act41 戦闘人形レィ起動!

遂に闘う使命を身に纏った戦闘人形レィが目覚める!

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