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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第3部 魔砲少女ミハル エピソード8 第2章 Phoenix Field <不死鳥の戦場>終焉を求める君への挽歌 
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チャプター4 災危のマリオネット<悪堕ち少女人形は闇夜に踊る>Act10

魔砲での攻防は、防ぐ側に利があった。

強力な魔砲でも女神を倒す事が出来ず。

漆黒に染まる少女人形を苛立たせる結果となる。

そして、光と闇の決闘は新たなる展開に?!


光の盾が破られる直前、神力を使って跳躍した。

天界に居たのならば造作もなく飛べるが、今は現実世界に居て、しかも人の身体に宿っているから跳躍するのが関の山なのだ。

でも、必殺技を繰り出して来た漆黒のミハルは簡単なトリックを見破れなかった。

絶大な魔力に因る過信が、捉えられた筈の跳躍を見逃させたのだろう。


「攻撃は最大の防御なり・・・か」


攻め続けていれば、相手は防御に重きを置く。

休まず攻め続けているのなら、反撃を警戒する必要は少ないと言える。


「それは相手との力の差が歴然だった場合だけ」


圧倒的な力でねじ伏せることが出来る場合に限るのだ。

力が均衡していたら、僅かな隙を突かれて攻守が逆転する可能性があるのだから。


「今の私と、堕ちた美晴では魔法力に大差は無い。

 どちらが秀でているとか劣っているとか。

 そんなの今の段階で言える訳が無い」


闇の魔砲で攻撃する漆黒のミハルに対し、光系の神力で応じた誇美。

流石は双璧を名乗るだけに人智を超える魔砲を使いこなしてきた美晴に、女神の誇美コハルは防御に徹した。


「だけど。

 それだからこそ、無闇に反撃を加える訳にはいかないの」


反撃を加えなければ勝つ事はおろか、勝負にもならないと言うのに?


「美晴は一撃必殺の魔砲を撃って来るだろうけど。

 こっちは軽いダメージを与えるぐらいの魔法しか撃てない。

 弱い魔法で攻撃したら、こちらの意図を読まれてしまうから」


攻撃する際、誇美からは強力な魔砲戦を挑めない?

その訳とは?


「お願いよエイプラハム。一刻も早く還って」


女神の誇美は待っているのだ。

魔界へと遣わせた使徒の帰還を。

魔界の王から禁忌の秘術を下げ渡されたと思って。


「この美晴の身体はきっと仮初。

 人の魂が宿れるのは、魂の無いモノだけだもの。

 良く出来てはいるけど、あの身体は・・・人形ひとがた

 闇の王に支配された操り人形。

 マリオネットに違いないから・・・」


闇に堕ちた美晴だとしても助けたい。

前から言っていた通りに、誇美は取り戻そうと策を練った。

喩え悪魔の様に穢れた魂であろうとも。

それだから使徒エイプラハムの早期の帰還を待っているのだ。

魔界の王に因って、魂の転移を許されると考えて。


「少なくとも、美晴へ身体を還せれば。

 死を求めることはなくなるでしょう。

 私に対する怒りは解けないにしても」


それが果たせたのなら、怒りを一身に受けても構わないとさえ思った。

この現実世界から追放されても良いと思っていた。


「美晴さえ生きてくれるのなら。

 私は黄泉に堕ちたって。堕神に成っても構わない」


その最大で最期のチャンスが巡って来た。

今夜を限りに、美晴を解放させようと図ったのだから。


「だから爺。早く、早く戻って。

 穢れた世界の王に気取られる前に。

 美晴の魂をこの躰へと還す為に!」


誇美は攻撃出来なかったのではない。

聖なる光の魔法が、攻撃系の魔砲を撃てないと言う訳でもなかった。

秘めた作戦に因る時間稼ぎ。

防御一辺倒に見せかけたのは、戦闘を長引かせる手段として。

使徒エイプラハムの帰還と、魔界の王からの支援で決着を図るつもりだったのだ。


「あの子が言ったもの。

 直ぐにでも滅びたいって。

 もうこれ以上永く、苦しめたくはないから」


何度でも戦い、何回でも勝利する。

その内にチャンスが巡って来るだろうとは考えた。

でも、囚われた美晴を想えば忍び難い。

だから、この再戦に本当の意味での勝負を挑んだのだ。

失敗すれば元も子も無くなる。

不幸にして失敗に終わったのなら、二度とチャンスは訪れなくなるかもしれない。

だけど、悪魔と化した美晴を救うには挑むより他はないと思えた。


「もしも失敗するのなら。

 私は責任を取るつもりだから・・・」


美晴を救えなかった時には、誇美はどうするというのだろう?


「そうならない為にも。

 爺。帰って来て早く・・・」


漆黒のミハルを見詰めて想っていた。

きっと。もう間も無く・・・帰還が果たされると。



執拗に攻撃を繰り出した。

しかし悉く防がれてしまった。

ダメージを与えることすら出来ず、いたずらに手の内を曝け出す結果に終始した。


「魔砲攻撃が役に立たなくても・・・」


双璧を名乗る魔砲の使い手だと自負している。

但し、それは人に対してであって女神には通用しなかった。

如何に闇の魔力を与えられたにしても、人が神に対抗するのは無理だったのか。


「あたしには誰にも負けない・・・これがある」


魔力を秘めた手を握り絞め、培った能力を現わそうとする。

その能力とは?


「くっくっくっ!

 魔砲が駄目でも、あたしには剣戟があるわ!」


握り絞めていた右手を開く。


「さぁ!これからが本番よ。

 この躰に与えられた特別な異能で。

 女神を斬り刻んでやるんだから!」


 ボッ!


開いた手の平に、妖しく燃える赤黒い炎が燈る。

それはまるで悪魔が本性を表す前触れのよう。


「観てなさいよ女神。

 これがあたしに授けられた本当の異能ちから

 神とも悪魔とも呼び畏れられた。

 始原ゼロ戦闘人形バトルドールの姿よ!」


 ビリリィーッ・・・バサッ!


黒髪を振り乱し、ドレスを引き裂く。

舞い散るドレスの端切れ。

現れる黒の魔法衣・・・いいや、闘いに特化した魔闘衣。

ゴスニックなフワフワのドレス姿から、一瞬にして各部が引き締められた戦闘服スーツ姿へ。

魔法で変身したとしか思えない衣装チェンジ。


「フフフ・・・お遊びはお終い。

 この姿を観たからには・・・生かしてはおけないのよ」


振り乱した髪が怪しく靡き、顔を半ば迄隠してしまう。

漆黒の魔闘衣に身を包み、嘲笑う口元は醜く歪んでいる。

乱れた前髪の隙間から漏れるのは、血に飢えた魔物の如き紅い瞳。



始原ゼロ戦闘人形バトルドール?!」


初めて聞く名称だと感じた。

魂が籠められていない人形だとは薄々気が付いていたが、まさか人形マリオネット以上に危険な存在だったとは考えもしなかった。


「冗談じゃないわ・・・こんなの」


そして感じてしまった。

目の前に居るのは、神にも等しき強大なる力を秘めた存在なのを。


 ズォオオォ・・・


闇の異能を身に着け、神と同等の魔法力を誇る。

それだけではない。


 オオオォオオォ・・・


先程までとは全く別の存在と変わり始めたのだ。

破り捨てたドレス姿から現れたのは、魔法衣とは異なる偉容を醸し出す黒の魔闘衣バトルスーツ

黒髪に黒いスーツを纏い、紅い瞳で睨んでいる。

その出で立ちを例えるのならば。


「悪魔・・・まるで黒衣の悪魔じゃぁないの」


目の当たりにした誇美が呻く。

あの可憐で清らかだった少女とは思えぬ姿に変わり果てたのを観てしまって。


夜の闇に溶け込むかのような黒い姿。

乱れ舞う黒髪が、燃える様な紅い瞳が、彼女の存在を誇示していた。


「フフフ・・・驚いたの?

 この躰は王から授かったのよ。

 誇美達が穢れた世界と呼んだ異界で。

 女神を倒すという目的を果たす為に・・・ね」


先のドレス姿では感じられなかった程の威圧感。

魔法の闘衣姿となってから、急激に雰囲気が変わった。

まるで女神を呪う悪魔のように、死を振り撒く死神のように。

姿形が美晴とは懸け離れた存在へと変わった。


「確かに驚いたわ。

 貴女が美晴だとは到底思えなくなる程にね」


醸し出される悪意に屈しないように、努めて冷静な口ぶりで言い返す。


「だけど!

 いくら戦闘人形バトルドールと言えども、女神に勝てるなんて思わないで」


背筋が凍り付くような恐怖を感じていても。


「勝てない?このあたしが?

 いいわ、良いわよ。そこまで言うのなら・・・見せてあげる」


凍てつくような紅い瞳で応える、悪魔と化した戦闘人形マリオネット

瞼を半ば閉じ、唇を歪めて嘲笑うと。


「あたしの剣で・・・斬り捨ててあげるわ!」


右手を突き出して・・・


「出でよ・・・神滅の剣。漆黒魔剣デモンゾディア!」


高らかに出現を命じる。

神をも切り裂く、呪われた降魔の大剣を!


 シュルン!ゾワワワッ!!


赤黒き塊が、悪魔に因って覚醒する。

血の如き紅い刃の大剣が、戦闘人形の手に納まった。

妖しく、紅く光る刀身。

獣が咆哮を放つかのような形状の鍔。

現れた剣は、闇を放っているかのように黒いオーラを溢れ出していた。


「さぁ・・・女神を喰らい破りなさい、デモンゾディア」


剣を突きつけるのは、漆黒の悪魔。

溢れ出る悪意と、呪わしい言葉が表している。

最早、人形少女は闘う為だけに存在しているのだと。


対して、剣の穂先に居るのは光を纏える女神。

切っ先を突きつけられては素手ではいられなくなる。


「神滅の剣が相手だと言うのであれば。

 私も応じなければいけないようね」


スッと右手を突き上げて招聘する。


「剣使ラファエルに命じる。

 私の手の中へ・・・最終形態と成って現われよ!」


光を纏う大剣を。


「最後の剣よ、我に力を示せ・・・煌神剣メタトロン!」


 ドォオオンッ!


現われるのは神の剣。

強大なる剣の神が容どる刃で、一振りで小国を滅亡に追い込めるほどの威力を誇ると言う。

ひかりを放ち、闇を葬る神剣。

全能神エールが鉄槌を下す際に用いるとされた、審判の剣とも揶揄されている。


神滅の剣と煌神剣が対峙する。

神を喰らうとされる魔剣と、魔を戒める神の剣が拮抗するのだ。

ここは天界でも魔界でも無いというのに。


「始めようか・・・最期の輪舞を」


邪悪な声で戦闘人形が吠える。


「ええ。闘いの果てで何が待とうとも」


応じるのは人の世に降りた女神。


「あたしに剣で勝てると思うなぁっ!」

「いいえ!私は負ける訳にはいかないっ!」


二人の姿が交わる。

文字通り・・・火花を散らせて。

 


遂に本性を現す少女人形。

いいや、その姿は最早悪意の塊と化すのだ。

始原の戦闘人形・・・それが何を意味しているのか。

女神であっても知り得る筈も無かった。


次回 チャプター4 災危のマリオネット<悪堕ち少女人形は闇夜に踊る>Act11

剣技を誇る美晴に誇美は堪えられるのか?勝負は一層苛烈になる!

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