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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
エピソード0 零の慟哭 少女人形編 復讐者の挽歌
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Act3 狂気の戦塵

崩壊する世界の中で・・・

人類は悪魔の機械達に反抗していた。


しかし、数多の命と引き換えにしても尚、目標を攻略できてはいなかった。

あまりにも強力なる<エネミー>がいるから・・・・

高く聳えるビルの頂上部分・・・


市街地の中心部にあるビルの頂には、巨大な紫の球体が備えられている。


地上700メートルに及ぶビルの頂に、なぜこんな球体があるのだろう。

どうして最上部に球体なんて造られたのだろう。



古の昔。

人類は神に近付こうとして塔を築いたという。

バビロニアの王は、自らを神と成さんが為に巨大な塔を築こうとした。

彼の地にある塔は、後にこう呼ばれた<バビルの塔>と。

だが、神の怒りに触れ塔は崩壊したとも謂われる。

神になろうとした王諸共、王国は滅び去ったとも・・・


今、目にしているビルは、その<バビルの塔>とならんとしているかのよう。


まるで世界を威圧するかのようにも見える建築物を、何故?誰が?


そして・・・紫に光る禍々しくも見える球体が存在している訳とは?


高慢なる人類が、再び神になろうとでもしているというのか・・・





都市中心部は炎と破壊の巷と化していた。

人類に敵対した機械兵マシンナーズの拠点を、一気に陥落させようと試みた人類により。


世界各国からの増援を得た現地軍が勢いを着けて攻め寄せた証。


無敵を誇る機械兵だとしても食い止めるのは容易では無かった。


だが、人類には時間が無い。

もう残された期限までのタイムリミットが迫っているのだ。


数多の命を奪われ続けた人類の最期の賭け。

その闘いが今・・・終わりを迎えようとしていた。





 ドグワッ!



戦闘機械兵バトロイドが砲弾を受けて炎上する。

最新鋭のロボット兵だろうとも、直撃弾を受けては堪った物では無かった。


「前方の一団を撃破!部隊を前進させろ」


旧式の戦車が一塊ひとかたまりとなって瓦礫の街を進む。

コンピューター制御の新鋭戦車ではなく、人が操る旧式な戦車が群れを成して突き進んでいく。

旧式と言えども、備えられた砲は破壊力では劣っていない。

現れ出る防衛機械兵達へ、束となって砲撃を繰り返しながら。


「我々にはもうミサイルは撃てない。

 ホーミングシステムも無線誘導もジャミングされているのだからな」


その通りだった。

人類の敵たる機械達に因り、全ての制御能力を奪われていたのだ。


優秀な航空兵器も、苛烈なる戦略ミサイルも。

コンピューターを搭載した兵器全てが使い物にならなくされていたからだ。


人類は機械に因って制御されていた。

機械の方が人を操るようになってしまっていた。


いつの間にか、機械は人を敵だと認識するようになっていた。

人類を排除するように、創造主にインプットされていたのだ。


創造主?それは人為らざる者なのか?

機械が己が判断によって人類を敵だと位置づけたのか?


スーパーコンピューターと呼ばれる演算装置が暴走でもしたのだろうか。


今となってはもう遅い。破滅の時は人類そのものが導いたとも言えるのだから。

機械に頼り過ぎた人類にツケが訪れただけなのだ。


「悪魔は地上の人類全てを駆逐すると言った。

 しかも残り2日しか残されていないと宣言しやがった」


戦車隊の指揮官が憂うのは、2日の間に決着を図らねばならなかったからか。


「あの尖塔は戦術核でも破壊出来ない代物なんだ。

 突入して内部から破壊しなければ、終わらせられないぞ」


巨大な紫の球体を頂部に抱くビル目掛けて戦車隊は進む。

だが、機械兵達の防衛能力は桁外れでもあった。


重装甲の戦車へ向けてバトルロイドが砲火を放つ。

徹甲弾がプスプスと装甲板に穴を穿つ・・・と。



 ドバン!



一両の戦車が弾薬庫を誘爆させて吹き飛んだ。

それを境に戦況は忽ちの内に坩堝と化した。


攻め寄せる人類部隊に対し、機械化兵バトロイドは圧倒的火力で応じた。

人力で装填する砲より、機械が自動で装填する方が余程早い。

同じ1門の砲でも、機械化兵の威力は数倍にもなった。


押し寄せた戦車部隊は数台もの仲間達を失う事になる。

部隊が数台と引き換えに漸く立ち塞がる機械化兵バトロイドを破壊出来た時。


現れたのは・・・想像すらしたくない<者達>だった。


「前方に人影?・・・いや、あれは?!」


燻ぶる砲塵の陰から現れた姿を見て、戦車兵は恐怖の叫びをあげる。


「ま、魔女だ!戦闘人形バトルドールが来やがった!」


幽鬼の如く湧き出て来る人影。

その殆どが少女の姿形を採っている。

靡く髪は魔女のように乱れ、紅く光る瞳には狂気を感じる。

現れ出た戦闘人形達は、手に手に得物を翳して戦車に向って来た。

まるで魔女達が人を襲うかのように。


「こ、後退しろ!」


戦車兵は少女を前にして逃げようとした。

いくら戦闘人形と呼ばれる相手だとしても、重装甲を誇る戦車が退くなんて有得るのか。


「撃て!この距離ならゼロ距離射撃だ」


そう。砲撃すれば事足りる筈だ。



だが・・・



 ドスン!グワン!



数両が狙った相手へ砲を放つ。

少女を模った人形に対して10センチ砲弾が跳び征く。

この距離ならば避けることも出来そうにない・・・そう見えた。



 シュッ!



直撃を見込まれた相手が跳んだ。



 ギンッ!


目前に迫った砲弾に何かが触れた。



 グワアァンッ!



爆発が数回起き、砲弾が炸裂したのが分かる・・・分ったが。



 ひらり


寸でで避けた戦闘人形が跳び来た。

そして・・・



 ザンッ!


手に携えた槍を戦車へ突き立てるのだ。


槍の穂先から1000度を軽く超える炎が装甲板を喰い破り、車内へと爆焔を撒き散らした。



 ド!



槍を突き立てた戦闘人形が体を躱して飛び退くと、槍の一撃を受けた戦車の砲弾が誘発してしまった。


砲弾を喰らった筈の魔女バトルドールが、爆発煙の中から現れる。

何事も無かったかのように、無表情のまま。

そして手にした銃口を、自分に向けて砲撃した戦車へと向けるのだった。



 ピカ!



紅い光を放つ銃口。

瞬きする間も無く、紅い光弾は戦車に穴を穿つ。



 グワ!



光弾を受けた戦車が一撃で車両内の弾薬庫を破壊されて爆発炎上する。

戦車を破壊する得物を持つ戦闘人形。


それは敵対した者への魔女の怒りだというのか。


対する戦車兵が逃げようとしたのも、相手が悪魔の化身に思えたからなのだろうか。


「駄目だ、奴等には勝てない。

 俺達の装備では悪魔の人形達に勝てる訳がない」


重装甲を誇る戦車だとしても、戦闘人形達の相手ではないのか。


現れ出た数体の少女人形に因り、部隊の進撃は途絶えてしまう。

たった数体の人形を相手に、人類は目的を果たせなくなるというのか。


黒い衣装を纏った戦闘人形達は、追い打ちをかけて来る。

逃げる者へも容赦せずに破壊と殺戮を繰り広げる。


戦車部隊は為す術もなく灰燼へと期そうとしていた。


残された戦車部隊は、それでも交戦し続けたが・・・


「残念だ!無念だ!誰か魔女を叩き伏せてくれ。

 俺達に代わって任務を全うしてくれ!」


決死の戦車兵が祈る。

自分達に代わって悪魔を倒せと。


願う戦車兵の目前に死神が過った。


いや・・・死神なんかではなくて。


<黒い何かが>彼の前を飛び来ったのだ。


 ー紅く光る刃を片手に持ってー



挿絵(By みてみん)



 ガシュ!




紅い剣が黒い戦闘人形を袈裟懸けに斬る。




 ずり・・・・



肩から腰までを一撫でされた戦闘人形。

斬られた部分がずり落ちていく。



 ビビビ・・・ビリビリビリ



機械の身体から電光スパークをたて・・・



 バムッ!



潤滑油を噴き出しながら爆発して果てたのだ。


「な?なにが?!」


命を拾った戦車兵が辺りを見回して気付く。

魔女達の前で、自分に背中を向けて立っている者に。

戦車を破壊しようとした魔女バトルドールに鉄槌を下した者に。


蒼き髪・・・そしてレーザーソードを手にする少女に。


姿は魔女バトルドール・・・

だが、長く靡く髪は気高い色。


「ま・・・まさか?」


戦車兵は噂を耳にしていた。


「彼女が・・・あの?」


仲間内で噂された<戦女神バルキュリア>の存在を。


「聖なるバトルドール?

 まさかあの・・・レィなのか?」


蒼く靡く髪が戦塵で吹きあがる。

その横顔に輝くのは、蒼く透き通る瞳。

少女の顔に浮かぶのは、決意を秘める蒼きまなこ・・・


斬撃の剣を携える戦闘少女バルキュリアレィ>が運命さだめの街へと現れた。





聖戦闘人形バルキュリアと呼ばれる<レィ


靡く髪、煌く瞳。

彼女はなぜ同じ人形の前に立ち塞がるのか?

なぜ人類の味方となったのか?


彼女の宿命とは?

彼女はなぜ抗うのか?

今、戦闘人形同士の戦いが始まる・・・


次回 Act4 孤独な聖戦闘人形<バルキュリア>

君は人間を超越した力を知る?!そして戦い抜けるのか?

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