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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第3部 魔砲少女ミハル エピソード8<レジェンド・オブ・フェアリア>魔砲少女伝説フェアリア  第1章王立魔法軍
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あなたの正義に愛はあるのか   11話

車両検分は、意外な結末となった。

新たに加わることになる車体は魔鋼騎だと、白衣の開発者から教えられた。

だが、その性能は明らかにされた訳ではない。

新型の魔鋼機械の威力も明かされず仕舞いだったのだから。

そして、白衣の開発者が何者なのかも分らずじまいだった・・・

「はぁ~あ」


造兵局を後にする美晴が盛大な溜息を吐いた。

並んで歩いているマリアが、それを観て。


「なんか、御大層な検分になったなぁ美晴?」


数十分前の波乱に満ちた出来事を思い返して。


「まぁ、新しい魔鋼騎が与えられるんやから、ええんとちゃうか」


話題を受領できる戦車へと振ろうとしたのだが。


「うん・・・そうだよね」


話題に乗って来ない美晴は、何事かを思い悩んでいるようだ。


「何を考えてるんや美晴?」

「うん・・・ちょっとね・・・」


立ち止ったマリアに訊き咎められると、少しだけ黙り込んでから。


「ねぇマリアちゃん。訊いても良いかな?」


立ち止ると、逆にマリアへ何かを訊こうとした。


「なんや?改まって」


歩くのを止め、顔を向けて来た美晴。

その表情には幾許かの戸惑いが見て取れる。


「あ、あのね。

 さっきの女の人なんだけど・・・」


造兵局で出会った女性とは、ルナリーン中佐と白衣の開発者の二人。

戸惑いながら訊いて来る対象は決まっているだろう。


「ああ。金髪の女性開発者の事やろ。

 魔鋼騎を開発する位なら、軍属に間違いないんや。

 しかも、襟に付いていたんは一等官待遇を表わす金ベタやったんやで」

「一等・・・それって、軍で表すと?」


まだまだ軍隊に疎い美晴が、階級を訊ねると。


「せやなぁ~。

 日の本とは少々違うんやけど、将官待遇って処か」

「ふ~ん、ショウカン扱いなんだ・・・って?へぇッ?!」


フェアリア軍中尉のマリアから聞かされたのは、候補生でしかない美晴では天と地ほどの隔たり。

一介の少尉候補生がおいそれとは話す事も出来ない階級だった。


「あんなに若いのに?!将官待遇だなんて!」


気安く話して来た丸渕眼鏡の女性は、マリアや美晴とそれほど歳の差があるようには見られなかった。

話しかけて来た声も威厳があるというよりは、若く覇気に溢れていたように感じたから。


「やっぱり、王女殿下と関係があるのかな?

 ルナリーン中佐が吠えていたみたいに、本物のルナリィ―ン王女様と深い仲なのかも」


王女からの信任が厚いからこその一等官待遇なのではないか。

彼女が造兵局に現れたのも、王女様の計らいからなのではないかと美晴は考えた。

名前も知らされずに別れた開発者を思い、なぜ自分に対して厚遇して来たのかも思い悩んだ。


「ふ~~~~む」


思い悩んで、再び考えに没頭し始める美晴を観ていたマリアだったが。


「ぷ・・・くく。

 なんや、美晴ってば。

 悩んでたんわ、丸渕眼鏡の金髪女子のことやったんか?」


訊かれた際、もっと重い話だとばかり考えていたマリアには拍子抜けの様に思えて。


「そ・・・そうだけど。文句あるの?」


笑われて、ムッとなった美晴が訊き質したら。


「あはは・・・いやなに。

 考え方が美晴らしいなって、思わず笑えてもうたわ」


笑いを堪えてマリアが返す。

気の重い話では無く、明るくなれる話題だと思えたから。


「むぅ?失礼な。

 こうみえても彼女の存在が重要だって分ってるんだよ」


で。美晴はマリアの心配を余所に、自己の考えを披露する。


「あのタイミングで新型戦車を披露して来たのも。

 あたし達の窮地に現れ出たのも。

 全てが分っていないと出来ないと思うんだよ。

 特に、ルナリーン中佐を観ても動じなかった点を考えて」


金髪の一等官が、何を考えて現れたのか。

どうして二人の窮地に現れることが出来たのか・・・


「あの人を観た時に感じたんだよ。

 どことなくだけど、前に逢った事がある様な・・・不思議な感覚を」


丸渕眼鏡で隠された顔。

だけども、表情は分からなくても綺麗な顔のラインは伺い知れた。

若さに溢れる身体・・・それに白い肌が取り分け、印象に残る。


「ふ~ん、美晴は会ったかもしれないと思うんや?」


横で美晴の言葉を聴いているマリアが、


「フェアリア王女殿下に・・・最も近い存在と」


意味深にも思える言葉を吐いた。


「え?それって?」


どういう意味なのかと美晴が質そうとしたが。


「このフェアリアには・・・やな。

 王家に繋がりのある子孫がたくさん居るって言うことや」

「はぁ?マリアちゃん・・・なにか隠してるでしょ?」


マリアの答えが言い逃れに聞こえて、美晴が追及すると。


「分らへんのやったら、自分の頭で考えてみいや」


コツンと頭を突かれ、自分で解決を図れと言われてしまった。


「あぅ~。やったな!」


歩き始めるマリアの背を、拗ねた様な顔を見せながらも。


「待ってよマリアちゃん!」


小走りで後を追いかけるのだった。






新型の魔鋼騎<魔薙破マチハ>が車庫から離れた秘密工廠に停められていた。



「如何でしたか。ルナ様?」


まだエンジンの熱が冷めていない車体の傍で、降り立った白衣の開発者に向けて訊いて来るのは。


「うん、あなたの報告した通りだったわ、アクァ警護官」


金髪の開発者に対して、恭しく畏まる茶髪の少女。

紅いユニフォームを纏い、腰に二振りの剣を提げた王室警護官。


「奴等の気勢を削げたし。

 何より、あのを奪われずに済んだわ」


ルナと呼ばれた開発者が、警護官アクァに微笑んで応える。


「それは上首尾でございましたね」


頭を垂れるアクァ。

その髪色は茶色く、瞳は紅い。


「そうよアクァ。

 あなたが時間を稼いでくれたから、寸での処で間に合ったわ。

 ありがとうね、感謝するわ」

「いえ。ルナ様のお役に立てたのでしたら」


微笑む開発者のルナに、茶髪のアクァが謙遜して応えて。


「ドゥートル長官の御許しを頂いただけですので。

 ルナ様の露払いを御命じになられた閣下に謝意を告げられるのが宜しいでしょう」


この場に来れたのは直属の上官であるドゥートルのおかげだと教えたのだった。


「まぁ!叔父様が。

 私からもお礼を申し上げるから、アクァからも伝えておいてね」

「承りました」


再び頭を垂れて、申し出に服すアクァ警護官。


「あ、そうそう。

 捕えた偽のアクアを名乗る剣術師は?」


思い出したように、開発者のルナが訊き質すと。


「はい。既に警備局へと連行されました」


車庫で闘い破れた偽のアクアを捕縛したと答え。


「内密に取り調べを受ける手筈となっております」


アクァが欲していた通り、彼女の秘密を暴こうとしているようだった。


「そうね。

 あなたを騙った理由も、なぜ時の魔法を紛いなりにも使えたのかも。

 是非とも知りたいから・・・ね?」

「はッ!」


捕えた茶髪のアクアが、希少なる時の魔法を行使出来たのか。

なぜ、アクァを騙ってまで美晴に接近したのか。


「先ずは、彼女の生い立ちを調べなきゃならないわね」

「容易くは話してくれないでしょうが。私が観て参りますので」


捕えた偽物の生い立ちと、どうして<我が姫>集団に加担するようになったのかを調べると答えて。


「どうしても拒否すると言うのであれば。

 私が観て来るしかないと思われます」


時を司れる魔法を行使すると明言した。


「無理に過去へと飛ばなくて良いのよアクァ。

 彼女だけが<我が姫>を騙る集団では無いのだから」


過去へと戻ることが出来るアクァに、開発者ルナが柔らかく停めて。


「魔薙破をあの娘に渡せて、初期の目的は達成したの。

 今度は、私達に覆い被さる闇を祓う番でしょ」


新型魔鋼騎を美晴へと譲渡するのが初めの目的?

だとしたら、次の目的とは?


白衣のルナと呼ばれた開発者が、丸渕眼鏡に手を伸ばす。


「そうだとは思わない?アクァ・・・それに魔女のロゼ?」


そう語り掛けたルナが、眼鏡を外す。


「はい、姫の仰せのままに」


恭しく首を垂れるアクァの声色が変わった。


「如何にも。女神様の御心のままに」


紅く光る瞳は変わらなかったが、髪色が薄紅うすべに色の銀髪へと変わって。


「この月夜ルナナイト魔女ロゼが付き従いますから」


魔法を発現させ、ルナに従うと誓う。


丸渕眼鏡を外したルナの指先が、金髪を結わえていたリボンへと伸びて。


 ファサッ!


結わえてあった金髪が解かれて・・・舞う。


神々しいまでに麗しい顔。

光を浴びた髪が、淡く輝きを放って。


 ザッ!


脱ぎ放たれた白衣の下から現れたのは、女神と見間違うほどの流麗な容姿。


「ええ、判っているわ魔女のロゼ。

 これより向かうは、私が本当に居なければいけない場所。

 彼女との約束を果たさねばならない約束の地」


光を浴びるルナと呼ばれし可憐なる人。

魔女のロゼであろうと、時を司れる魔法少女でも敬い従う流麗なる女性。


「はい。御伴いたします、ルナリィ―ン皇太子姫殿下」


アクァか魔女のロゼの声だったのかは定かではない。

だけども、その声が教えた。

白衣の開発者が、本物の王女だと。

フェアリアでたった独りの王女であると。

腰に皇太子の褒章を着けていたのは、本人だったのだと・・・


美晴は白衣の開発者が王女と関係があると考えた。

本当のフェアリア皇太子姫だと言うのなら、もう一度逢ってみたいと思っていたが。


白衣の開発者・・・美晴にとっての想い人。

そう。

思ったとおり、彼女こそがフェアリア王女ルナリィーンだったのだ。

どうして名乗らなかったのか。

なぜ、暗躍する者達と対峙しているのか。

その謎は、皇太子姫の運命に関係しているようなのだが?


次回 あなたの正義に愛はあるのか   12話

替え玉の王女リィタは憂う。一刻も早く役目を終えたいと願って・・・

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