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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第3部 魔砲少女ミハル エピソード8<レジェンド・オブ・フェアリア>魔砲少女伝説フェアリア  第1章王立魔法軍
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あなたの正義に愛はあるのか   7話

闇から現れたのは、金髪の女性仕官。

美晴も一度だけ会ったことのある・・・ルナリーンを名乗る陸軍中佐だった。

士官服を着た金髪の女性。

蒼い瞳には、翳りを纏ったような澱みを感じる。


「ルナリーン・・・中佐」


このタイミングで、この車体の前に現れたルナリーン中佐が何を求めているのかを感じ取った美晴が、月夜の晩に一度だけ会った事のある相手の名を呟く。

再び会う時には、何もかもを差し出せと言っていたのを思い出しながら。


「何を言ってるのです中佐殿」


歩み寄って来る女性中佐に、マリアが美晴を庇いながら訊いた。


「美晴の魔法力を奪う気なのですか?」


予てからの計画を実行に移すのかと警戒して。


「マリアちゃん・・・」


その庇われている美晴が、そっとマリアに今迄の経緯を教えようとしたのだが。


「・・・必要ないわ、今はね。

 魔力の測定と、属性だけが分れば良かったから。

 それさえ分かれば、魔法武具を試作出来る。

 神にも劣らぬ世界最高性能の戦闘武具を造れるもの」


問われたルナリーン中佐が、必要は無いと答えたのだが。


「でもねぇ、マリア中尉。

 その子は余計な真似を仕出かしちゃったのよ。

 計算外の攻撃魔法を・・・その中で放ってしまったようだから」


俯き加減の顔に、邪な笑みを浮かべて続けた。


「え?!美晴が・・・魔法を?」


どのような経緯で魔法を放ったのかも分からず、焦りを顔に露わにさせたマリアが。


「そうやったのか?!それを狙って状態異常に堕とされてたんか」


操られて魔法を放ったと思い込んだ。


「フフフ。

 おかげで最高の測定結果を残せた。

 車内の計測器を分析すれば、強力な武具に活かせる筈だ」


二人が立つ車両を見上げて、ルナリーン中佐が嗤う。

美晴がアーニャを昇天させる為に撃った、極大魔砲呪文エクセリオ・ブレイカーが齎した結果を知らずに。


「ねぇ、マリアちゃん。あのね・・・」


余裕を噛まし、嘲笑い続ける中佐から隠れるようにマリアの陰で。


「壊しちゃったんだけど。受領出来るのかな?」


ツンツンとマリアの背をつついて教える。


「中にあった機械を。

 ぜぇ~んぶっ、ブレイカーで消し飛ばしちゃったんだ・・・てへぺろ」


マリアにだけ聞こえるくらいの小声で。


「・・・なんやと?」


すると、ぴくくッと顔を引き攣らせたマリアが。


「そないな強力魔砲を放ったんやったら、車外にも影響を及ぼす・・・」


知らされた事実に疑問を投げかけようとした。


真実は、全ての機械を消し飛ばした美晴を、女神の誇美が防御魔法で護り抜いた。

荒れ狂う魔砲力から美晴を守り、必要の無い破壊を車体外へと流出するのも防いでいたのだ。


「それはアーニャさんも望まないから。

 車外にはマリアちゃんだっているんだし・・・ね」

「アーニャ?誰なんやそれ?」


小声で話す二人。

計測出来たと思い込んでいるルナリーンには教えるつもりはないが。


「この中に囚われていた人。

 あたしを頼って、呼んでいたの。

 もぅ、この世界からは居なくなっちゃったけど」

「魂を・・・閉じ込められていたんか?

 その人が、アーニャってだったのか?」


うん・・・と、頷く美晴が経緯を知らせた。


「哀しいけど、今の私達では助けてあげれなかった。

 出来ることと言えば・・・憑代の破壊だけだったんだ。

 穢されて魔女と化してしまう前に、人の心を持ったまま。

 運命を受け入れて、天へと召される道を選んだんだよ、アーニャは!」

「そうやったのか・・・」


知らされた真実に、マリアは過去に遭遇してしまった悲劇を思い起こす。


「まるで・・・邪操の虜と、同じやな」


悪鬼が送りつけて来る災禍と同じだと。

悪魔の所業とも言える、魂への拷問と変りが無いと。


 ギロリ


怒りの眼で、マリアはルナリーン中佐を睨む。


「これではっきりしました。

 私は、あなたの命令に従う気はありません。

 喩え上官命令とはいえ、人の命をないがしろにするなど。

 魂を悪魔に売るような真似は出来かねます!」


そして、きっぱりと絶縁を言い放ったのだ。


「金輪際、私の隊に関与しないで貰いたい。

 大切な部下に手を出す気ならば、全力で阻止しますので」


背に寄り添う幼馴染ミハルを護る為にも。


関わるなと警告したマリアを眺めていたルナリーンの瞼が閉じる。


「プッ・・・あ~はっはっはっ!

 何を言い出すのかと思ったら・・・」


閉じた次の瞬間には、大笑いした中佐だったのだが。


「つけあがるのはいい加減にしなさい!

 魔法軍に入れたのも、警護官に抜擢されたのだって。

 <我が姫>たる私が居たからでしょうに!

 このルナリーンの推薦があったからだったのを忘れたというの?!」


怒りを露わにして吠えて来た。


「もう良いわ。

 お前なんかにその子を預けておけない。

 私が直々に教育を施してあげる。

 我が姫たるルナリーンの戦闘人形に造り変えてあげるわ!」


欲望のままに、己が正義を振りかざして。


「人形?戦闘人形?」


吠えるルナリーン言葉を聴いた美晴の顔に翳が差す。


「その言葉・・・聞いてしまったことがある」


傍に居るマリアにも聞こえない小声。


「フェアリアへ来る前に・・・あの時、あのお婆ちゃんから」


記憶が蘇り、何かを思い出して。


「あたしは・・・人形なんかにはならない」


拒絶する言葉が喉から出た。


「そや!美晴は決して生贄の人形なんかやあらへん!」

「へ?」


知らず知らずに言葉にしていたのを、マリアが肯定して。


「残念やけどな、中佐。

 生憎やが、ウチから美晴を奪えるとは思わんこっちゃで!

 いいや、光の御子を失う訳にはいかへんのや!」


今こそ約束を果たす時とばかりに、中佐へと応戦した。


睨み合うマリアとルナリーンを名乗る中佐。

バチバチと、視線が火花を放っていたが。


「もう、話すだけ無駄ね。

 仕方がありません、あなた達二人を・・・」


ルナリーン中佐が収拾を図り、誰かを顧みて命令を下そうと・・・


「私達の仲間へと招き入れてあげましょう。

 尤も、私の命に服すことを拒まなかったら・・・ですけどね」


 パチン  と、指を一回だけ鳴らした。


その瞬間、室内に異変が起き始める。


 ざわ・・・ざわわ・・・ざわざわ・・・


陰の中、何個かの影が蠢き。

光の届いていない部屋の隅から近寄り始めたのだった。


「「美晴ッ!緊急事態よ!」」


頭の中で誇美からの警告が告げた。


「判ってるよ、コハル」


翳りに気付いた美晴も、


「イザとなれば。マリアちゃんだけでも」


緊張感を滲ませて誇美に同調する。


翳りは静々と近寄り、やがてその姿を露わに・・・


する。


その時だった。


 バッガアアアァアァアアァーンッ!


大音響が室内に響き渡った!



遂に牙を剥く<我が姫>たる者。

美晴を囚らえようと謀る中佐が手下を以って仕掛けた瞬間。

破壊音が車庫に轟いた?!

何が?次ぎに始まるのは?

美晴達は魔の手から逃れられるのだろうか?!


次回 あなたの正義に愛はあるのか   8話

今度こそ?!本当の騎兵隊が救援に来てくれたのか?それとも?

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