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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第3部 魔砲少女ミハル エピソード8<レジェンド・オブ・フェアリア>魔砲少女伝説フェアリア  第1章王立魔法軍
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魔砲の戦車と王女の秘密  15話

漸く整備された小隊保有車両を、訓練とはいえど壊してしまった。

事故の責任は誰が負うのか?

搭乗員達は小隊長に申告しなければならない義務があるのだが・・・

たったの一度っきりではあったが、魔鋼騎と呼ばれる魔法の戦車に乗れた。

初めて乗り込んだ戦車で、疑似戦とは言えど闘いを経験できた。

意図した訓練では無かったが、自らの魔力に依る魔鋼機械の発動をも知ることが出来た。

そして小隊が保有する魔鋼騎では、美晴の魔法力を十分に発揮できないという事実も判ってしまったのだった。



訓練中の事故を、上官に申告して来たマリア小隊長の前で。


「申し訳ありませんでした。マリア中尉」


ミーシャ少尉が改まって謝罪する。


「監督不行き届きの責任は、このレノアにあります」


一緒になって謝るレノア。

当事者としての責任は、二人の少尉にあるのは誰の目にも明らかだった。


「いいえ。事故を起こしたのは・・・本官の技量不足にあります。

 両少尉に責任はありません、クルーガン小隊長」


訓練の当事者であり、事故を引き起こした一号車の代理車長だった美晴が申し開きをして。


「責任は一号車を指揮していた私に有ります。

 魔鋼機械が暴走してしまったのも、魔法力を抑えきれなかった未熟さ故ですから」


全責任を一身に受けると言ったのだった。


一歩前に出て申告する美晴に、周りに居合わせた小隊員が注目する。

独りで罰を受けると言った候補生に感心して。

そしてマリア小隊長が、どう決着を図るのかに興味を示して。


「本件は、既に車両配属課へ詳細を申告してある。

 魔鋼機械の故障が事故の一因である事も、訓練中の事故という事実もだ。

 因って上層部からは一切のお咎めは無い」


3名の現場指揮官からの申告にマリアが応える。

事故による損傷は、上層部から不問にされたと。


「だが、以後このような無断訓練を禁止するのは当然と心得よ。

 車両の故障は、以後の訓練にも影響を及ぼす。

 保有車両での訓練だけでは無く。

 身勝手な振る舞いは、軍紀を乱す元となると心しておけ」


今後の訓練に、忖度は必要無いと命じられた。


「はい。分かりました」


二人の少尉が、緊張が解れて了解の意思を示す。


「あ、あの。私も、無罪なのでしょうか?」


事故を引き起こした車両を指揮していたから、無罪とは思えずに訊き直す美晴。


「あ~?うん、そうだな。

 一応、物損事故扱いだから・・・担当所轄部に書類を作成して貰うとするか」

「え?それだけでいいのですか?」


物損とは言え、事故は事故なのだ。

担当の所轄がどの課に属しているのかは分からないが、書類申告だけでお咎めが無いのは不自然ではある。


「良いんだよ、ミハル候補生。

 形式だけでも書いておけば、お偉いさん方が処理してくれるさ」

「はぁ?そういうものですか」


何とは無く、マリアの言葉使いが気にはなったが。


「それじゃぁ、報告書の作成はお任せください」


ここは穏便に取り図ってくれたマリアに感謝しておくことにした。


マリア小隊長の粋な計らいに、小隊員達は挙って感謝の眼差しを向ける。

事故をうやむやに近い扱いとした手腕にも。


「よぉ~し、ここからは我等整備班の出番だぜ。

 補給課から必要な部材を掻き集めて、早急に直して見せろ。いいな!」

「はい!了解しました」


ビッグが班員達に命じ、直ちに損傷の復旧にかかると告げ。


「来週には、2両共動かせれるようにしてやるぜ」


修復を短期日で終えると豪語した。


「お願いする。ビッグ班長」


マリアが年長のビガーネル少尉に敬礼して頼み。


「お願いします、整備班長」


美晴も同じように頼んだ。


「おぅ!お嬢ちゃんに頼まれたらやり遂げなきゃな。

 なんせ、魔鋼機械をぶっ壊せる程の馬鹿力を無碍には出来んしな」


応えるビッグは冗談めかして。


「もう一度見せて貰いたいもんだぜ。

 本物の魔砲って云う、異次元の異能ちからってもんを・・・よ」


ニヤリと美晴へ笑って見せるのだった。


「こら、ビッグ。調子に乗るな」


横からマリアが間に割って入り、


「ミハル候補生は私と一緒に庁舎に出向くからな」


美晴を小隊員の輪から引っ張り出すのだった。




八特小隊の車両調整所ブンカーから離れた所で、マリアが話の口火を切った。


「エライことやっちゃったやんか、美晴?」

「あ・・・うん。ごめんなさい」


事故を引き起こしたのは美晴の所為ではなかったのだが、マリアが観ていなかっただろうと思って謝る、


「うん?何を謝ってるんや。

 エライって言うたんは、魔鋼騎を変化させたんを言うてるんやで」

「へ?!魔鋼機械を動かした事?」


マリアの言っている意味が理解出来ない。

何故、魔鋼騎が変化したのをエライと言ってるのか?


「そやで美晴。

 そんでもってのアノ変化だったやろ。

 気を惹くには最高の演出やったみたいやで」

「・・・なにを言ってるのか、ちんぷんかんぷんなんだけど?」


マリアは美晴の肩に手を廻して燥ぐように話し、語られた美晴は小首を傾げるだけ。


「今日は・・・やな。

 事前に訓練を行うって知らせてあったから。

 白髭の老将が観に来られたんや、美晴の初搭乗を・・・や」

「白髭の・・・誰なのよ、それって?」


教えられたのは、誰かが参観に訪れていたという事と、


「あたしの初搭乗を?何の為に」


一介の候補生でしかない自分の訓練を知らせていたのかということ。


「それはやなぁ。

 美晴を初めから期待していた人が居ったからや」

「初めから?そんな人が居ただなんて知らない・・・」


思い当たる節が無い・・・そう思った美晴だったが。


「白髭の老将官って言ったよね?」


初めから・・・と、そうマリアは言った。


「まさかとは思うけど。

 その観に来ていた人ってのは、ドゥートルとか言う退役軍人じゃなかったの?」


フェアリアに帰って来た初日に、母ルマと共に会っていた。

自分に魔法軍への入隊を勧めた、あの白髭の老紳士ではないかと思ったから。


「うん、その通りや。

 陸軍は退役された大将閣下やけど、今は王室警護隊の長官を担われているんやで」

「は?!え?あの老紳士さんが?」


答えは正解。

相手は以前に会っていた老紳士であると教えられたのだが。


「王室の警護隊を指揮統率している長官閣下だったの~ッ?」


美晴の脳裏に、白髭の老紳士ドゥートルが悪戯っぽく舌を突き出している姿が過った。





杖を片肘に提げて、一室のドアを開け放つ。


「おぉ~い、リーンは居るかね」


開け放った勢いのまま、中へと大声で呼びかける。


「あ。祖叔父おじ様・・・いえ、ドゥートル長官」


奥間った場所の椅子に腰かけていた独りの娘が応える。


「おぅ。リィ・・・居たのか」


女官がドアを閉じる姿を一瞥した老紳士が、一度呼びかけようとして躊躇した。

視線の合った女官に一瞥を投げかけた後。


「セリーヌ女史。悪いが姫に話しておくことがあってな」


退室を求める。


「・・・」


頭を下げ、下命に恭順の意を示すセリーヌが静かにドアの外へと出ていく。


「ふむ」


それを眺め終えたドゥートルに。


「叔父様。私です、リィタです」


小声で名を明らかにする替え玉の王女。


「静かにしなさい。分かっておるから」


応じるドゥートルは、初めから知っている風で。


「今日。話に来たのは、お前に用があってなのだよ」

「はい?どのようなご用でしょう?」


替え玉としてルナリィ―ンを騙っている自分に、どんな用件があるのか。

本人ならいざ知らず、替え玉にどのような話を持ってきたのか。

幾分、脅えている替え玉王女に、ドゥートルが近寄って。


「他言無用だぞ、いいな?」

「はい、承ります」


そっと耳打ちし始めると。


「・・・え?!本当ですか」


打ち明けられた話に、眉を上げて。


「ルナが?言ったのですね!」


満面に笑みを浮かべて。


「静かにしないか。外に居る間者に聞かれるかも知れないのだぞ」


対するリィタの祖叔父貴おおおじきが叱責しても。


「それが本当だったら。

 こんな堅苦しい役目から解放されるんですよ。

 喜べない筈が無いじゃありませんか」


ルナリィ―ン王女の替え玉であるリィタが漏らしてしまった。


「待ち侘びた日が・・・やっと」


その日が近いと言う事も。


部屋の外に居る女官が聞き取れるくらいの声で・・・

参観者が居たのをマリアから教えられた美晴。

しかも観に来ていたのがドゥートルだと知らされて・・・

一方、王家に縁のある老紳士ドゥートルが現われたのは王女の許。

本当のルナリィーンからの言葉を知らせに来たようなのだが?

王宮の中には間者が居る。

それを知らずか、知っているのにワザとなのか。

ドゥートルは替え玉リィタに何かを告げた?それは一体?


次回 魔砲の戦車と王女の秘密  16話

謀略に染まるフェアリア?美晴に纏わる因縁とは?未だに真実は見えては来なかった・・・

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