表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第3部 魔砲少女ミハル エピソード8<レジェンド・オブ・フェアリア>魔砲少女伝説フェアリア  第1章王立魔法軍
294/428

魔砲の戦車と王女の秘密  13話

突然の擬似戦。

魔鋼騎同志が一騎討ちに?

訓練の枠を超えた戦いの幕が開く。


ミーシャ少尉は美晴に戦争を教育すると断言したのだが。

まさか、一号車に乗っていたのが女神ミハルとは知る術もなくて・・・

向かい合った二両の魔法戦車。

距離500メートル程の距離を以って開始される事になった疑似戦闘訓練。


射撃距離としては十分に射程内に捉えていたのだが・・・


疑似戦開始までのカウントが射撃用のミニターに映し出されていた。


「後・・・10秒だな」


魔法力が魔鋼の機械を動かしている。


「よし、訓練開始だ」


残り数秒に迫った開始時間よりも早く、ミーシャが仕掛けた。


突撃タリホ~ッ!」


停車状態の2号車が、魔鋼の力を放って急発進する。


「遠距離射撃で終始するなんざぁ、趣味じゃねぇんだよ!」


白猫ホワイトキャット>の異名を採る二号車が、自慢の速力で突きかかったのだ。


「お前がどれ程強力な魔砲使いだろうが。

 このミーシャは捕まえられねぇぜ!」


まるで獲物に襲い掛かるヤマネコの如く。



残り時間が十秒を切った・・・時。


「ミルアちゃん。始まったわよ」


翳りを纏ったままのミハル候補生が知らせた。


「え?まだ10秒前ですけど?」


タイマーを観たミルアが怪訝な顔で応えたが。


「お喋りは後で。直ちに左舷方向に旋回進出して」


文句を言う暇も与えない声が、ミルアの身体を動かしていた。


ハンドルを切り、アクセルを踏み込む。

魔鋼機械が高速回転し、車体は操縦手の思うが儘に走り出す。


「あ、あのっ?!これからどうすれば良いのですか?」


言われるままにスタートを切ったまでは良かったのだが、戦闘方法なんて思いもしなかったミルア。

どう走り、どうすれば訓練として成り立つのかも分からずに訊いたのだったが。


「ふむ。

 それじゃぁミルアちゃんに教えてあげる。

 戦車同士の戦いというものを。

 あなたと姪っ子達に、本物の戦車兵ってものを教育してあげるわ」


女神ミハル様は、戦闘のやり方を教えると言って。


「いいえ。あの子達にも・・・教えてあげなきゃね」


この場に居合わせた全ての人に、教えると言い切った?


「そうすれば、きっと。

 あの娘にも伝わるでしょうからね」


いいや。

教えるのは此処に居る者だけではなく、もっと他に居るのだと言い直した。

それは・・・誰だと言うのだろう?



急発進した二号車が突っ込む前に、一号車も動き始めた。


「ほぅ?こちらに併せたつもりか」


開始時刻前に発進した目的は、


「射撃術には自信があっただろうに。

 停車したまま疑似発射してくるものだとばかり思ったんだがな」


以前からの訓練で培った射撃術を美晴が応用して来ると考えていた。


「射撃したって、こちらが避ければ当たりはしないのを分かったのか?」


真正面から突っ込んだのは、被弾面積の低減もあった。

それよりも、一号車の射撃を避け易いという意味も含まれていたらしい。


「それにしても。左方向に走り出した理由が分らん。

 正面切って突っ込んで来るのなら、未熟者でしかないと言えるが?」


距離が詰まり射撃タイミングが迫る中、ミーシャが一瞬躊躇した。

このまま突っ込み、急旋回をかけて横腹に撃ちかけるかを。


「奴はどうやって勝負をつけるつもりでいるんだ?」


距離はグングン詰まり、目測で100メートル程になった。

もう至近距離と呼べるほどに迫った・・・時だった。


「ミルアちゃん攻撃準備!すれ違いざまに反転急追しなさい」


相手は速度優先の<白猫>。

それをやり過ごした後、追いかけろと命令されたミルアが。


「そんな?!相手はあの<白猫>ですよ。追いつける訳が・・・」


追い縋っても引き離されるだけだと言おうとしたが。


「そんなの分かってるわよ。

 追いかける振りだけすれば良いんだから」

「へ?振りだけ・・・ですか?」


女神ミハル様は分かっての行動だと答えて来て。


「速度を頼りにした軽戦車と闘うのと同様に。

 相手の速度を逆に利用してやれば良いんだよ」


高速力を以って闘う相手に、速度で勝てない車体で応じるには。


「引き離そうと後ろを見せた相手に、追いかけ射撃を行うのですね?」


後部を見せて走り去る相手を、後ろから砲撃するのかとミルアが訊く。


「うんにゃぁ~。

 ニャンコを追っても捕まえられニャいよ。

 追いかけられていると思ったニャンコはね。

 引き離したら必ず一度停まって様子を窺うから。

 そのタイミングを逃がさないように追いかけるんだよ」

「・・・はぁ?」


教えを受けたミルアが、何を言っているんだと小首を傾げる。


「とどのつまり。 

 この作戦は・・・ニャンとびっくり大作戦って名付けるわ」

「・・・」


呆れ果てたのか、ミルアは操縦に専念して返事が無くなった。


「むぅ?なによその眼は」

「いえ。開いた口が塞がらなかっただけです」


何を聴こうが何を言おうが、女神ミハル様の言う通りにしておけば良いと考えて。


「お任せしますから。命じるように走らせます」


初めに教育するからと言われていたことを思い出し。


「見せてください。女神ミハル様の闘い方というモノを」


素直に学ぶと答えるに留めた。


「宜しい。それじゃぁ、よっく観ていなさいね。

 ミルアちゃんも、あなた達もよ・・・良いわね姪っ子達!」


蒼髪を靡かせる魔砲の女神ミハル様が、ヘッドフォンを通さず直に頭の中へ命じて来た。

それは、つまりは・・・



 ドギャギャ!


至近距離まで詰め寄った二号車が、主砲の軸線に一号車を捉え・・・たのだが。


「なんだってぇ~?!」


左方向に走って来た一号車が、射撃タイミングで横滑りした。

接近し過ぎていたミーシャの想定外の動きで。


「ちぃッ!一撃目は失敗か」


射撃したとしても命中にはならない。

的が照準環サークルから飛び出した状態ならば。


「くそっ?!追従する気なのか?」


そしてもっと意外な行動に、ミーシャは判断を誤る。


軸線を外した一号車が、驚く事に追いかけて来た。

その予想外な展開に、速度を落とすことなく走り出す。


「いくら魔鋼騎だからって、この白猫様に追いつけるなんて思うなよ」


魔法の戦車の中でも優速を誇る<白猫ホワイトキャット>が全速力で走り。


「おらおら!撃って来ても無駄無駄!

 そんなへなちょこ弾なんか、全て避けてやるぜ」


優速を生かし、一号車を引き剥がしにかかった。



「どうするんですか女神ミハル様。逃げ切られちゃいますよ?」


一度はすれ違う迄の距離に近付けたのが、もう200メートル程も引き離された。


「いやぁ~速い速い。脱兎の如しとはこのことだねぇ」


砲手席に座っている女神ミハル様が、他人事のように囃し立てて。


「いや、兎じゃなくて猫だったっけ。

 逃げ足は超一流って処だけど・・・」


照準用のモニターを見詰めながら、


「あの子は戦争を舐めているみたいね・・・悲しいことに」


ブスリと悪態を吐く。

その間も二号車は距離を離し続けていたが。


「もう直ぐあの子は見せてしまうでしょうね。

 余裕からの油断ってものを。

 相手が自分よりも鈍足だと思い込んで」

「は?あの二号車より速く走れるんですか?」


女神は二号車より速く走れると言ったのか?

それとも、ミーシャの油断がそうさせるのか?


「言ったじゃないミルアちゃん。

 姪っ子の身体には女神級ゴッデスクラスの魔砲力が備わっているとね」

「はい。確かにそう伺いましたけれど?」


微かに微笑を浮かべる女神ミハル様に、ミルアが頷き返すと。


「教えてあげるわ。

 女神という存在の怖ろしさを。

 それが・・・今なんだよ!」


断言された。

女神ミハル様に・・・美晴の魔砲力がどんなモノなのかを!


ミルアの瞳にも映った。

蒼き魔法光と・・・強烈過ぎる魔砲を表した紋章の輝きが。


 ド・・・ギュワワンン~ッ!


異能を与えられた魔鋼の機械が悲鳴にも似た軋み音を奏でる。


想定外の魔力を与えられた魔鋼の機械が限界を超過していく。

車内も車外も。全てが青色に染まり、何もかもが輝に包まれて。


 ド・・・ズドドドッ!


キャタピラが空転する程の高速回転を始めた。


 ドンッ!


と、キャタピラーが地を噛み、あっという間に二号車へと突進し始めたのだ。



「ふん。ここまで来れば追いかける気も無くなっただろう」


僅か数十秒で二百メートルも引き離した。

後ろを振り返る余裕をみせて、ミーシャがそろそろ反転攻勢に出ようと目論んだ・・・


の、だが・・・


 ギュワワワ~!


後方監視用のモニターに、砂煙を上げて猛追してくる一号車が?!


「どっ、ひぃやぁ~ッ?」


真一文字に突っ込んで来る一号車を観て、慌てる他に手は打てず。


「こ、こうなりゃ自棄だ。こっちも反転して・・・」


反転して、もう一度反抗戦に持ち込もうと。


 ドドドドドッ!


でも、相手が悪過ぎた。


「ぎょえええぇッ?!」


突進して来た一号車から、何やら怪しげな煙が?


「ひいいぃぃ~~~ッ?!」


突っ込まれるミーシャと同じ様に、操縦がままならなくなったミルアも絶叫して。


「うん。これはどうしようもないわ」


達観しているような女神ミハル様のお声が。


「魔鋼機械が暴走しちゃったんだから。諦めよう」

「諦めないでぇ~ッ!」


ミルアが恐怖のあまりに泣き叫ぶのも。


「大丈夫。タブン」


いい加減な慰めで正当化する女神ミハル様がイラッシャイマシタ。


回避しようとした二号車の横っ腹に、暴走した一号車が突き刺さった。


 どんがらがっしゃ~~~~~ん!


派手な騒音を撒き散らし、魔鋼の戦車同士が衝突してしまった。


「うん。これは確かに良い魔鋼戦車だったわ」


女神ミハル様が褒めて。


「こんなに派手にぶつかっても、大破しないなんて優秀よ」


へちゃげた主砲が二号車に突き立っている。


「勝負は。我の勝ち・・・ね」


側面を突いた一号車と、横合いからぶつけられた二号車なら。

勝敗は一号車が勝ったのか?


「どちらも壊れちゃったじゃぁありませんかぁ~っ!」


ミルアさんが絶叫したように、これは引き分けでしょうかね?

んで?疑似戦を強行したミーシャさんは?


「げほ・・・きゅぅ~~~」


眼を廻しておられるようですが・・・なにか?


女神ミハル様は楽しんでおられたようで?

完全な勝利とは言い難いようですが、狙った通りにことが運んだようで?


女神となった今も、変らず突飛な戦術を繰りひろげましたね。

流石は・・・と、云うよりも。やっぱり(笑い)な感が。

とばっちりを食うのはミルアさんでしたか。

いいや、ミーシャ少尉こそ損な子だったようですW


次回 魔砲の戦車と王女の秘密  14話

女神は多くは語らず。唯、黙して帰るのみ・・・って?ちょっと待ってくださいよぉ~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ