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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第3部 魔砲少女ミハル エピソード8<レジェンド・オブ・フェアリア>魔砲少女伝説フェアリア  第1章王立魔法軍
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魔砲の戦車と王女の秘密  12話

魔鋼騎と呼ばれる魔法の戦車。

今再び車上の人となった女神ミハル様が、何を為そうとしているのか?


とばっちりを喰らうのはミルア?

それとも・・・宿られている美晴なのか?

先行して車体の検査と走行訓練に出ていた二号車が、場周旋回を辞めた。


「こちら二号車。小隊長車が魔鋼状態に移ったようだが?」


無線を使ってミーシャ少尉が観測所に訊く。


「観ての通りさ、ミーシャ。候補生が発動させたんだよ」


観測員配置に居るレノア少尉がマイクを取って応える。


「そうか。それじゃぁ試してみるのも悪くない・・・よな?」

「試すってなんだよ?マリア中尉からは聴いていないぞ」


ミーシャは一号車が魔鋼状態になったと聞いて、何事かを試そうと目論んだ。

確かに、二人はマリアから美晴が搭乗したのなら、魔鋼騎本来の性能を試すように唆されたようなのだが。


「おい、ミーシャさんよ?

 まさかとは思うが、疑似戦なんぞを試みるんじゃなかろうな?」


釘を刺すつもりで冗談を口にしたレノアに。


「ふはは。そのつもりだったとしたら、どうするんだ?」


疑似戦闘訓練を仕掛けると答えたミーシャが嗤う。


「勝手なマネは辞めておけ。

 相手は初搭乗したばかりの素人なんだぜ?」


冗談を真に受けたのかと、焦ったレノアが停めようとしたのだが。


「あいつが本物の魔砲少女なのかを試すだけ。

 実弾なんか撃つ訳が無いだろう・・・多分な」

「お、おいッ?!マリア小隊長に忖度する気ならば辞めておけよ」


戦闘訓練で美晴の実力を測るとミーシャが言えば、

マリア中尉には命令されてもいない行為に奔るなとレノアが返す。


「いいや。この白猫ホワイトキャットが闘いたいんだと。

 紋章がざわめきやがるんでな、ちょこっと挨拶代わりのテストだよ」

「馬鹿!なにが挨拶代わりだ。どうなっても知らんからな」


実車に乗り込んでいるミーシャを停められないと分っているレノアが、それでも思い留まるように言ったのだが。


「そんじゃぁ。

 候補生とミルアに言ってやってくれ。後1分で疑似戦に入るからな」

「お、おいって!」


聞く耳を持たずに、戦闘訓練に突入すると宣言して来た。


「くそっ!おい、誰か整備班長を呼んで来てくれ」


このまま疑似戦に縺れ込んだら、どちらかの車体に損傷を与えるかも知れない。

小隊長が居ない間に、そんな事故を起こされたら堪ったモノでは無いと、レノアは冷や汗を掻いた。


「それに。

 ミルア伍長に至急連絡しろ。

 魔鋼状態のまま2号車との疑似戦に入れと、な!」


観測所はミーシャの独断専行によって、蜂の巣を突いたように慌ただしくなった。





二号車が車体を一号車こちらへ向けて停車した。



「さて。ミハル候補生の魔鋼騎が、どれ程の性能を出せるのか」


ミーシャは照準用のモニターを見詰めてタイミングを計る。


「そうだな、先ずは走破力でも調べてみるか」


自身の魔法属性である敏捷性に、絶対の信頼を寄せつつ。


「この<白猫ホワイトキャット>の異名を採る二号車に勝れるとは思えんが」


車体の性能差を見せつけてやると、細く笑み。


「よし。奴に戦争を教育してやるか」


勝利を確信して言い放った。


二号車が正面を向けて停車したのと同じ時。


「「一号車へ命じる。

  只今より試験を中止し、疑似戦闘訓練に移る。

  二号車を仮想の標的とし、巴戦を行え。

  撃破判定は照準器に捉えて撃鉄をひき、命中度合いで決められる。

  相手に致命的な損傷を与えたかによって勝敗を決するからな」」


いきなり、レノア少尉からとんでもない命令が与えられた。


「え?」


操縦手と無線手を兼ねているミルアが、聞き間違いかと思って。


「観測所へ。

 こちら一号車、命令の意図が分かりませんが」


初めて乗り込んだ魔鋼騎で、まだ操縦訓練さえも終わっていない状況だった。

それなのに疑似とはいえど、戦闘訓練なんて無茶ぶり過ぎる。


「どういうことなんですか?二号車は了解してるのですか」


思わず車内にも聞こえる程の大声で訊き直したのだったが。


「「後1分で交戦状態に移行する。

  一号車は直ちに応戦態勢に移れ、これは命令だ」」

「ちょ、ちょっと待って・・・」


泡を喰ったミルアが、上官に食って掛かろうとしたが無線は途切れてしまう。


「あらま。イキナリだったねミルアさん」


女神に宿られたままの美晴の声が、ミルアを正気に戻す。


「冗談じゃありません。こんな無茶苦茶な訓練が赦されるのですか」


魔鋼騎状態の魔法戦車で、訓練とは言えども戦闘を行えと命じられたのだから。


「軍隊って処は、端から無茶苦茶なもんだよ」


でも、女神ミハル様は達観してるかのように諭して来る。


「尤も、私みたいなのが乗り込んでいるって思いもしないでしょうけどね」


それはそうでしょ。

理の女神が此処に居るだなんて、想定外というか夢想もしないでしょうから。


「それはその・・・神出鬼没な女神だから」

「女神ゆえに・・・って。冗談じゃありませんよぉ」


あっけらかんと話す女神様に、ミルアが血相を変えて訴える。


「どうなされるのですか?

 このまま命令通りに疑似戦を受けて立たれるのでしょうか?」


操縦訓練も完了していない今、疑似とは言えど戦闘を行えるとは思えず。


「ん~?

 でもさぁ、あっちはやる気マンマンみたいだけど?」


射撃用の照準モニターに映し出される正面に停車したままの二号車。


「あの猫ちゃん、こっちに敵愾心燃やしちゃってるようだけど?」


女神様は紋章を浮き立たした二号車に描かれた白猫を指して。


「まぁ、子猫が鼠を弄ぶ気でいるようだけど。

 どうするのミルアちゃんは?」

「・・・ちゃんって。やっぱり本物の女神様なんですね」


本当の美晴ならば、同い年位のミルアに対して<ちゃん>呼びはしないだろう。

圧倒的な年配者、圧倒的な異能者故の、年下呼びなのだろう・・・そう、思ったミルアが。


女神ミハル様は姪っ子の候補生に、何を求められているのですか。

 なぜ今、宿り主に代わって魔鋼騎に乗られているのですか?

 私達に何を為せと仰りたいのですか?」


なぜ、自分の前に現れたのか。

どうして魔鋼状態の中で美晴と成り代わっているのかを訊いたのだ。


「おぉうッ?!

 そこまで気を配れるとは、見上げたものねミルアちゃんって。

 姪っ子達に爪の垢を煎じて飲ませたいわ」


((しゅ~ん))<美晴と誇美がダブルでしょげる音>


オッホン・・・と、咳払いした女神ミハル様が。


「姪っ子に求めている訳では無くて。

 この戦車に乗って分かったのよ、あの子が本当に求めているのが。

 魔砲少女にはこれでは不完全だって知らせたいからね」


「はいぃ?意味不明です」


どう言う意味か、なにを知らせたいのかも訳が分からない。


「ん~?つまりはだね。

 この戦車じゃぁ姪っ子の魔力を出し切れないって訳なんだよ」

「え?魔鋼騎じゃぁ役不足ってことですか?」


魔法力を受けて車体を変えれる魔鋼の機械。

その性能は乗り込んでいる魔法使いに依って決まる。

但し、性能を超える魔力を与えられた魔鋼機械には限界があるのも、また然り。


「役不足というよりは、限界を超えた魔力が存在しているだけ。

 姪っ子の魔法力は女神級ゴッデスクラスなんだよね~」

「女神級って・・・本当ですか?」


訊かれた女神ミハル様が、うんうんと頷き。


「だから、この理を司る女神が宿れたんだよ、仮だけど」


本当だと言わんばかりに腕を組む。


「・・・ミハル候補生が女神。

 ううん、女神様はミハル候補生?」


混乱したミルアが眼を廻して納得しようとしていた。


「まぁ、そう言う事だから。

 この疑似戦闘訓練を利用してみようかと思います、ですW」


命令を逆に利用して、何を見せようと言うのか。


「この車体には無理をかけちゃうけど。

 姪っ子の為にも頑張って貰うつもりなんだよ」

「はぁ?頑張るって何をなのでしょうか」


もはや、抗う気すら消えたミルアが真意を訊いた。


「圧倒的な魔法力ってものを、見せてあげなきゃね」

「・・・逆に観たくないかも」


宣言されたミルアが怖がるのも無理からぬ話。

だって、相手は。

あの世界を救ったとされる女神なのだから(半分くらいの威力しかないらしいけど)・・・


「まぁ、今回だけは。

 この魔法少女な女神様が。

 全てを取り仕切ってあげますけどね!」

「ひぃ・・・優しくしてください」


完全にやる気になった女神ミハル様に、恐怖に引き攣ったミルアが頼む。


「ほどほどって処で」


それに対した女神様の答えは。


「宿った状態なら。しかも能力を半減中だから。

 全力全開したって問題無し子よね~?」


絶対に問題あるでしょうが?!

そう突っ込みたいミルアさんでした。

いきなりの擬似戦?

受けてたつ女神ミハル様と同乗しているミルア伍長。

方や相手となるミーシャは、美晴が指揮しているものとばかり考えているようだが。

白猫ホワイト・キャット>の異名を誇るミーシャだが、今回ばかりは相手が悪い。

だって、本当の相手は・・・あの、理を司る女神ミハルだったのだから。


次回 魔砲の戦車と王女の秘密  13話

その昔。最多撃破王の名声を勝ち取った魔砲の少女が居ました。

幾多の戦いを経て、数多あまたの伝説を造ったのです。

魔鋼騎を操る手腕は誰よりも長けていました。

そう・・・その彼女が今、再び。

魔砲少女ミハルが今やっと、帰って来たようです。

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