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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第3部 魔砲少女ミハル エピソード8<レジェンド・オブ・フェアリア>魔砲少女伝説フェアリア  第1章王立魔法軍
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魔鋼の乙女 14話

2人の少尉から教えられた小隊の秘密。

魔法の戦車を保有した第08特別戦車小隊。

その戦車に纏わる秘密とは?

魔鋼騎と呼ばれる魔法戦車にはどんな過去があるのだろう・・・



美晴が配属された第08特別戦車小隊。

搭乗員達から聴かされたのは、小隊が戦車部隊であること。

そして、特別と銘打たれる謂れ。


小隊の保有する戦車2両は、魔法力を以て闘う・・・魔鋼騎マギカナイトだと言う。


魔法を以って鋼の騎士と化す。

前戦争でも、乗り込む魔法少女達の命運を賭けた闘いが数多の伝説を生んだ。


僅か数両の魔鋼騎により、数万の軍勢が阻まれた戦い。

高位の魔法少女が操る、たったの1両の戦車がロッソアの機甲部隊に痛撃を加えた。

漆黒に彩られた敵戦車と、双璧を誇る魔鋼騎との一騎討ち。


フェアリアに残された数々の言い伝え。


しかし、その伝説のどれもが。

理不尽を、戦争の愚かさを言い含めてもいるのだ・・・



嘗ての闘いと、今は違う。

あの闘いから既に四半世紀が過ぎ、闘い方も変わった。

ならば何故、魔法の戦車が再び蘇ったのか?

どうして今、鋼の魔法機械が蘇らねばならないのか。


その理由とは?




僅かの間、寛ぐ小隊搭乗員達と話していた。

八特はちとく>小隊が、魔鋼騎と呼ばれる2台の特殊な戦車を保有していると教えられたのだ。


「魔法を以って敵と相対する・・・」


魔鋼騎と呼ばれる戦車は、魔法使いの異能を具現化して闘う。


「魔法使いの能力で、戦闘能力も変わる・・・」


魔法の能力で、戦車自体が変化をみせる。

魔鋼の機械に与えられる魔力が強ければ強い程、より強力な戦闘力を発揮するのだ。


「強大な敵が現れるのなら。

 魔鋼騎に求められる闘いも熾烈しれつを極める。

 生き残りを賭した闘いに・・・なってしまう」


如何に魔鋼騎と呼ばれる魔法戦車であっても、弾を受ければ無事で済む筈もない。

強力なる砲も、分厚い装甲も。

どれ程不死身を誇ろうが、敵弾を受ければ。


「還って来れる保証なんて・・・ある訳も無い」


日ノ本で邪操の機械兵達と闘いを交えて来た美晴。

幾度となく窮地に立たされ、死を覚悟する場面にも遭遇して来た。

だから、尚の事分かってしまうのだ。


「戦場へ赴けば、どんなに強力な魔法力を誇っていたって。

 いつの日にかは理不尽が襲い掛かる。

 どんなに警戒していたって、不意を突かれてしまえば・・・いつかは」


闘いの必定。

味方がどれ程強力な武装を誇っていても、より強力な武器が敵にも現れる。

その敵を凌駕出来たにしろ、更に強力な敵が現れる。

魔法のロボット兵器を駆使してきた美晴には、戦いに於ける定石が染み付いていた。


「組みし易いと思える敵にだって、舐めてかかれば敗北を喫してしまう。

 あたしは何度も、そんな場面に遭遇して来たから」


自分を遥かに凌ぐ魔力を持った者と対峙して来たから判る。

少しの油断が敗北のきっかけとなるのも、僅かなチャンスをモノに出来た弱者が勝利を収められるのも。


「魔鋼騎だって無敵の存在じゃない。

 戦いに勝利を収められるのは、勝ち運を手に出来た者だけなんだ」


生き残れる者は、勝利の女神が決めるのだと。


「あたしは・・・生き残れるのかな?」


寛いでいる小隊員達の傍で、独り考え続けていたのだった。


 ポワン・・・


塞ぎ込む美晴の右手に填められた蒼き宝珠から、温かな光が零れている。

柔らかな光は、心配と焦燥に乱れる心を癒そうとするかのようにも見て取れた。


・・・と。


「生き残りたければ・・・訓練に勤しめ!」


不意に。

扉が開かれ、声高に命じてくる声が。


「本日の教練を始めるぞ。搭乗員整列!」


有無も言わさぬ勢いで、小隊長のクルーガン中尉が命じた。

その瞬間。


「搭乗員、整列!」


今の今迄、寛いだ雰囲気だった室内に号令が復唱される。

その途端、部屋の中から二人の少尉が飛び出していく。

間髪入れず、残りの3人も駆け出して行った。


「え?!あの?」


なにがどうなったのかも分からず、背中を向けた小隊長に訊ねようとしたのだが。


「聞こえなかったのか?

 本日これからは、ミハル候補生も搭乗者あつかいだ。

 皆と同じ様に訓練に勤しめ」


「え?あ・・・はい」


背を向けたまま答える小隊長。

その背に、微かに頷いて応える美晴。


「生き残りたければ、他者ひとの何倍も訓練に励め。

 後れを取りたくなければ自らを磨き、己の力を高めろ」


中尉は背後に居る美晴に聞こえるように呟く。

古参者が、新参者に言い聞かす様に。


「生き残る為の・・・訓練」


戦場には疎くても、戦いの場には慣れていたつもりだった。

だから、小隊長の呟きに秘められた意味が理解出来た。

だから直ぐに。


「うん。あ、いいえ。了解しました」


扉を出て行く中尉の脇をすり抜け、整列を終えていた搭乗員達の端に駆け込んだ。


整列を終えた、第08特別戦車小隊の搭乗員。

その末席に並んだ美晴。


「搭乗員整列、終わりました。

 新規配属者が1名です!」


先任搭乗員のミーシャ少尉が報告する。


「宜しい。

 本日は砲術訓練の一環として小銃射撃を行う。

 各員は小銃と実包を受け取り、射撃場へ向かえ」


報告は簡潔、命令は必要最低限の内容を含んで下される。


「ミーシャ少尉以下、全員で実包射撃に赴きます」


下令された命に応えるのも、無駄な言葉を含まない。

それこそが軍隊。これが娑婆とは違う世界。


「よし。かかれ!」


発令するクルーガン中尉。

その言葉で小隊員が駆け足で射撃場へと向かう。


「ミハル候補生、ついて来てください」


搭乗員でも予備配置のミルア伍長が促して来る。


「今日の訓練は射撃術みたいです。

 実弾を使っての小銃射撃訓練ですよ」


朗らかに教えてくれるミルア。

だが、美晴の表情は暗く沈んでいた。


「どうかされましたか?」


気になったのか、ミルアが心配気に訊ねて来る。


「本物の鉄砲を撃つんだよね?

 本当の弾を撃つんだよね?」

「え?まぁ、射撃訓練ですから」


訊き直して来る美晴に、ミルアが怪訝な顔で答えると。


「あたし。

 本物の銃なんて触ったことだってなかったから」

「え?ミハル候補生って教育課程を受けられていないのですか?」


日ノ本では魔砲に頼って銃を手にした事がない。

魔砲少女を名乗っていても、その手で実際の銃砲弾を放ってきた訳でもない。

翔騎と呼ばれるロボット兵器のパイロットを務めただけ。


「教育課程で教わるの?

 あたしって教育も省かれて・・・配属されてきたの」

「・・・マジですか?」


日ノ本から帰国した即日入隊を決められてしまったことも。

是非も無く、ここへ入隊させられて来たのも、話しておきたかった。

だけども、ミルアに聞いて貰っても解決する訳でもないことぐらいは分かっていた。


「ミハル候補生って、どんな過去を以って来られたんですか?」


ミルアは興味本位で訊いて来る。

でも、話せばあまりに長い話になるだろう。


「知っている人は、魔砲少女だって言っていたわ」


そう答えるだけに留めた。


「あの。それって八特搭乗員全員に当て嵌まりますけど?」


はぁ・・・っと、ため息交じりで返されるミルアの声。


「話したくなったら、いつでも話してください。

 心に溜めておいたら、病気になっちゃいますから」


まるで見透かしたような言葉に、美晴はドキリと心臓が鳴るのを覚える。


「まさか?ミルアさんの異能って<読心どくしん>なの?」


弱みを見せるまいと顔を逸らした美晴が、思わず呟いてしまった。


「いいえ、人の心までは分かりませんよ。

 私が誇れるのは、人を癒せる<ヒーリング>なのですから」


すると、美晴に振り返ったミルアが笑いかけると。


「だから。

 ミハル候補生も、負傷されたら頼ってくださいね。

 それが心の疵だとしたって!」


クルーガン小隊長との軋轢に苦しむ美晴の心を見抜いているかのように言うのだった。


「あ?うん」


向けられる笑顔に、美晴は声だけで応える。

見透かされた心の病を誤魔化そうとするかのように。



小隊員達は、射撃場に着く。

そして、そこで美晴を待っていたモノとは?


経験した事も無い苛烈な訓練の幕開けだった・・・


訓練に赴く八特小隊員。

その中で、初めて実弾射撃を経験する美晴。

訓練を命じた小隊長クルーガン中尉の思惑とは?

不可能と思われる遠距離射撃訓練に、小隊員達は?


次回 魔鋼の乙女 15話

君は我が目を疑う。その姿は高位の魔法少女の証だというのか?!

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