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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第3部 魔砲少女ミハル エピソード8<レジェンド・オブ・フェアリア>魔砲少女伝説フェアリア  第1章王立魔法軍
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魔鋼の乙女 11話

母ルマと別れて教育隊に向かった美晴。


新規入隊の見習い士官として青い准士官服を靡かせて場内を歩いていた。

司令部から配属を命じられた部隊の元へと。

フェアリア国軍、教育練兵部隊。

白壁の官舎が建ち並ぶ中を、青い準士官服を着た黒髪の少女が歩んでいく。


何度か、手に携えた書類を確認しながら。


「確か・・・コッチの方だって」


辺りを見回し、居場所を確かめつつ歩いて行く。


「錬成戦車部隊の・・・第08特別戦車小隊・・・」


書面に記載されてある配属部隊名を呟き、


「錬成って書いてあるんだから、特別も何も無いんじゃないのかなぁ」


自分が向かう部隊に疑問を抱いた。

尤も、自分だって新兵の初心者なのだから、いきなり実施部隊に配属される訳が無いと思い直した。


「でも、戦車部隊だなんて。

 あたしの魔砲が役に立つのかな?」


秘められた魔法力と戦車の関係に、新たな疑問が湧いてくる。


「戦車って言ったら、日の本で観て来たキャタピラ付の装甲機械だよね。

 確かに砲を撃つんだろうけど・・・どんな任務を受け持つのかな」


日ノ本ではロボット兵器を操縦し、邪操機兵を打ち負かして来た。

それに対してキャタピラを履いた戦車は、緞帳な戦闘機械としか考えられない。


「まぁ・・・今は。考えてもしょうがないか」


頭をフリフリ、書かれてある部隊を目指して歩き続ける。



教育隊のグラウンドでは、同い年位の少年少女達が基礎訓練に励んでいる。

体操やマラソン。鉄棒にマット運動。

それぞれのカリキュラムに沿って、身体を動かしている姿。

各々が属した部隊の上官達からの檄が飛んでいる。


「頑張ってるなぁ」


黒髪の少女が珍しいのか、数人の隊員が顔を向けてくる。


「あ・・・どうも」


それに軽く会釈して応えた美晴が、一人の少女の顏に見覚えがあった。


「あ?あの子って・・・確かミルアさん?」


どうやら相手も自分を認識したらしく手を振ってくる。

先日の夜、出会ったミルアが仲間に何事かを話しているのも判った。


「助けたことを大袈裟に吹聴しなけりゃ良いけど」


近寄って話す訳にもいかず、通り過ぎがてらに口元へと人差し指を宛がって。


「黙ってて」


変な噂話をしないで欲しいとゼスチャーしておく。

その仕草が判ったのか、分からなかったのか。

ミルアは大きく手を振って応えて来るのだった。


「はぁ・・・なんだか先が思いやられるよ」


ミルアとの再会が、こんな形でとは思いもしなかった。

どこかの部隊に属しているだろうとは思っていたが、まさか此処で会うなんて。


「そう言えば、ミルアさんの上司って。

 マリアちゃんの筈・・・だったんじゃぁ?」


先日の晩、確かにミルアはクルーガン中尉と言っていた。

美晴の幼馴染だったマリアの姓は、間違いなくクルーガン。

仮に同姓者が居たとしても、同じ階級である確率は低いと思われる。

それが故に、美晴はミルアの上司がマリアだと考えるのだった。


「後でミルアさんに訊いてみよう」


同じ教育隊で会えたのが縁だと思い、再会出来るチャンスだとも考えた。


「うん。フェアリアに帰って来た目的の一つが叶えられそうだな」


さっきまでの鬱々とした思いは消え、なんだか心までが軽くなって来て。


「さて・・・っと。

 楽しみは後にとっておいて。先ずは着任の挨拶だよね」


配属先の部隊へと足を速めるのだった。



<<第08小隊 待機室>>


短い立て札が掲げられてある部室の前で。


「ここ・・・だよね?」


結わえてある髪を手串で治し。

誂えられた準士官服を整えて。


 コンコン!


意を決してノックした。


 コンコン!


ノックを繰り返した。


「・・・あれ?」


数回のノックにも反応が無い。


「あ、あのぉ。どなたか居られませんか?」


扉の前で呼びかけても、中からの答えは返って来ない。


「まさか?留守」


配属先の小隊が総出で出払っている?

待機室と銘打ってあるのだから、誰かがいる筈だと思ったのだが。


「どうしよう。司令部に問い合わせた方が良いのかな?」


書類を渡してくれた事務官からは、配属先に出向せよとだけ言い渡された。

その際、配属部隊が出払っているなどとは聞かされてもいない。


「誰かが帰って来る迄待っていた方が良いのかな?」


軍隊に疎い新参者だったから、二通りの選択を考えた。

命令を質すことがご法度だなんて考えてもいなかった。

事務官から言い渡されたのは、配属先に出向するようにとの命令。

それならば、何時間かかろうが待たなければいけないだけ。

相手が居ないならば、居場所を追及するか。

若しくは戻って来るのを待ち続けるしかないのだ。


それを理不尽だと考えるのは、娑婆と呼ばれる門衛の外の話だ。

ここは紛いなりにも軍隊の中なのだから。


ノックを続けていた手が停まる。

呼びかけ続けていた声も。


「しかたがないな。

 もう少しだけ待って、誰かに訊ねてみようか」


只、待っているだけでは埒が明かない。

近辺に居る者ならば、小隊の所在を知っているかもしれない。


そう考えた美晴が、ため息交じりの声を溢した時だった。

背後から流暢なフェアリア語が聞こえて来たのは。


「誰か?何故小隊詰め所の前に居るんだ?」


問いかけられた美晴は、自然と声の聴こえた背後へと振り返る。


「私の小隊に、何の用があるのか。答えろ」


その眼に飛びこんで来る人影。


「私の八特はちとくに、どんな用件があってやって来た?」


誰何すいかして来るフェアリアの言葉。

質して来る女性の声・・・


「え?!あ・・・あ・・・」


振り返った美晴の眼に飛びこんで来る白の士官服。


「答えるんだ、ヒヨッコ!」


美晴の準士官服を見詰めて来るのはマリンブルーの瞳。


「あ・・・あなたは・・・」


問いかけるでもなく。


「ホント・・・に?」


眼を見開いて目の前に立つ少女士官へと。


「マ・・・リ・・・ア・・・ちゃんなの?」


赤味を帯びた銀髪を風に靡かせ、青い瞳でこちらを見詰めている少女へ。


「マリア・・・マリアちゃんだよね?」


ここが軍隊の中なのを忘れて呼びかけていた。


白いフェアリア国軍士官服を着ている・・・幼馴染だったマリアへと。



突然の再会。

フェアリアに帰って来たのは、彼女と再会を果たす為でもあった。

歓喜の表情を浮かべる美晴。

しかし、肝心のマリアから零れた言葉とは?


次回 魔鋼の乙女 12話

君はどうしてしまったというのか?約束を忘れてしまったのか?

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