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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第3部 魔砲少女ミハル エピソード8<レジェンド・オブ・フェアリア>魔砲少女伝説フェアリア
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 きっと・・・

戦い終えた魔砲少女。

帰還の途につくのだったが・・・

朝焼けが前方に停車している巨大なトレーラーを照らし出していた。

全長が100メートル、全幅が20メートルは有ろうか。

荷室部キャリーの天蓋を開放した姿は、巨大さを増幅させてみせている。



収容ガントリー作業にかかれ。合戦用意用具収め」


小隊長のマリア中尉が、トレーラー後部に突き出された昇降斜面ラッタルから荷台へと戦車を登らせるように命じた。

小隊の3両が次々に荷台部分へと昇り、決められている停車器具上へと並び終わると。


機関エンジン停止ストップ


3両の停車を、トレーラーを指揮する係員に報告した。


「「収容作業にかかる」」


ヘッドフォンからの返答と同時に、荷室を覆う側壁と天蓋部が閉じられていく。

朝日を受けていた戦車が光を失い、一瞬だけ漆黒の闇が訪れた。


「戦闘配置を解く。各員降車」


マリア中尉からの命令を受けて、小隊各車の乗員がハッチから姿をみせる。

3両の戦車から、操縦員と砲手兼車長の二人づつ。併せて6名の乗員が車外に降りて来た。


「集合!」


小隊長マリアの号令に、5名の隊員が整列する。


「これにて迎撃任務を終える。

 各員は受け持ち車両の点検を終えておくように。解散!」


手短な命令が下され、整列を解いた後。


「シマダ少尉は此処に残れ」


幾分きつめの口調で、マリア中尉が命じて来た。

その声を聴いた島田美晴シマダミハル少尉の身体が緊張する。


「・・・は・・・い」


応える声も元気がない。


他の乗員達が小隊長と、新米少尉を横目で観てから解散していく。

小隊員が散った後、マリア小隊長が美晴少尉に口を開いた。


「また、疵付いたんやろ?」


口調は厳しい。

だが、小隊長の表情は柔らかだった。


「・・・ううん。あ、いえ。大丈夫です」


見詰められている美晴少尉は俯いて応える。


「嘘こけ。機械兵に宿らされている魂が助けられないのを気に病んでる癖に」


「・・・マリアちゃんには誤魔化せないか」


挿絵(By みてみん)


他の乗員達に聞かれても分らないように、日の本語で話しかけて来るマリア中尉。

それはマリア中尉が日の本語に精通している証。


「なぁ、美晴。

 今からでも遅ぅはないんや、除隊したら・・・」

「嫌だよ。絶対に・・・嫌」


小隊長のマリアは、美晴少尉に軍隊を辞めるように勧めるのだが。


「アタシは・・・約束したんだから。

 絶対に守るって。誓ったの、守るからって」


俯き首を振る美晴少尉。

一体何を守ると約束したのか?


「はぁ・・・強情やなぁ、昔っから」


腕を組んで美晴の所作を観ていたマリア中尉が呆れたように溜め息を吐いて。


「まぁ。一度言い出したら突っ走る処は、小さな時から変わらへんみたいやな」


やや眉を緩めてから続けたのだった。


「そう・・・だよ。

 アタシは2年前から変わらないから。

 負けず嫌いで無鉄砲な、じゃじゃ馬っ娘ですからね」


「ついでに加えるんやったら、巨大損おおぞん)娘ってとこやろ~な」


呆れついでに美晴少尉の現状を加味して来る。


「加えなくて良いから、そんなの」


で、真っ赤になって頬を膨らます少女少尉。

剥れる美晴少尉を飽きずに眺め降ろしていたマリア中尉だったが。


「そやけど、本気で心配なんや。

 美晴には軍隊なんか似合わへんのやさかいに。

 部隊に配属されてしまうなんて、考えてもおらへんかったやろうに」


「そうだよね。

 実施部隊にこんなに早く配属されちゃったのにはびっくりしてたけど」


再び真摯な瞳で訴えて来る。


「そこに何かしらの陰謀が秘められている気がするんや。

 こうなるのを懼れて、美晴を停めたかったんやで。分かってぇな?」


「・・・うん。ごめん・・・マリアちゃん」


真剣な口調で諭そうとするマリア中尉に対して、美晴少尉が謝る。


「知らなかったの、マリアちゃんがアタシを想ってくれてたのを。

 幼馴染だったのを忘れられちゃったのかなって思ってた。

 軍隊に入って変わっちゃったのかなって、考えてた・・・から」


優し気な顔を向けてくるマリア中尉に、顔を背けてしまう。


「阿保やなぁ~美晴は。

 手紙にも書いておいたやろ、あたしは美晴を信じてるんやと。

 日の本から来てくれた幼馴染を、大事に想わへん奴がおるか」

「・・・ホント、ごめん」


何度も謝り、何度も感謝する美晴少尉。


「確かに二年前とは違う。

 それはあたしだって同じなんや。

 背負うモノが大きくなったのも、枷が填められてしもうたのも。

 それだって美晴に比べたらマシなんやろうけどな」


「同じだよ、マリアちゃん。

 もしも違うとすれば・・・敵が巨大になったことぐらいだから」


二人は互いの顔を見詰めて頷き合った。

同じ想いを交わし、同じ絆を繋いだ間柄として。


「せやな、これからの事を考える方が優先やし。

 美晴が傍に居てくれるんやったら、あたしも護れるかもしれないから」


マリアは童顔を残したままの後輩少尉を見下ろして呟く。


「大好きな美晴を・・・絶対に守り抜いたるんや」


眦を決して。


「え?」


聴こえなかったのか、美晴少尉がマリンブルーが混じる瞳で見上げて来る。


「いや、なんや。

 戦闘に差誤をおこさないよう、もっとシゴイテやろうかなっと?」


「ひぃぇええッ?!また鬼教員に戻っちゃうの~?」


ニマ~っと笑うマリアに怯える美晴。

渡航した後の日々を思い出して肩を竦めてみせた。


「そ、やなぁ~。もう一遍くらい、鬼に成ったろかな~」

「やだやだ!そんなのもぅ嫌だよぉ」


ニマニマ嗤うマリアに、嘘泣き顔をみせる。

それは、つい先月のこと。

まだ魔鋼騎部隊に配属される前の話。


「今にして思えば。

 新米候補生さんとは思えへんかったなぁ~、美晴は」

「だ~か~ら~!もう思い出さなくても良いの!」


返した美晴だが、一月前に何があったのかをきっちり思い起こして。


「黒歴史って、ああ云うのが当て嵌まるんだよ。

 確かにアタシもマリアちゃんに依存しようとしてたかもだけど」


頭一つ分背の高いマリアを見上げて、愚痴ってから。


「なんだか、遠い記憶にも思えちゃうんだけどね」


少しだけ記憶を甦らせてしまうのだった。



そう。


それは、島田美晴がフェアリアに到着した日からの思い出。

妖精の国と呼ばれた、魔法と奇跡が伝承される国への帰還が果たされた後のお噺。


遠い東洋から来た魔法少女の軌跡・・・

次話から!いよいよ本編です。


魔砲少女が辿る軌跡とは?


エピソード8 第1章 王立魔法軍

  第1話は帰って来た魔砲少女が出会うのは?

君は故郷に錦を飾れたのか?

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