プロローグ The story of two of us has just begun 私達の物語が始まる
終末の光が過ぎった
赤紫色の光が・・・だが。
人の世界が終るのを回避できた
希望の御子が成したのだ。
一時の平和を世に齎した
換わりに女神を喪うことになって。
そして・・・時は流れ
再び人の世界に暗雲が垂れ込もうとしていた・・・
時に
終末戦争が終結してから24年が過ぎ去っていた・・・
赤紫色の閃光が掻き消された
終焉を告げる轟音が響き渡る・・・
世界を変える轟きか
今を終わらす地鳴りか
神と呼ばれし者と
今を生きる人類が
終末を回避するべく闘った
結末は
神を名乗り人類を駆逐せんとした者は自らの過ちを悟らされた
まだ終わりを告げるには早いのだと
人は換われる可能性があるのだと・・・
自己の犠牲をも顧みず抗った者に教えられた
自らの肉体が潰えようとも絆を守ろうとした者に拠って
永き間
人が変わる様を見守ってきた
何度も・・・何回も・・・終わりを与えた
絆はその都度潰え
縁は何度も書き換えられた
故に
神と呼ばれし者は落胆の末に
今度こそは・・・もう一度・・・と、願い続けた末に・・・
出逢えたのだ
蒼き髪を靡かせる・・・乙女に
本当の女神の如き・・・理を司る者に
絆を守らんとする乙女
自らを犠牲とする気高き心を持つ者
永き時・・・待ち望んで来た
人が変わる日を
人類の中に<未来>が現れてくれる日を
神を名乗り、世界を創造しようとした者が託そうと願った
彼女に拠って世界を変えて貰おうと
希望に輝ける未来の為に
失くした絆を取り戻す為にも
奪われた世界を
失われてしまった未来も・・・愛さえも
再び光の中に蘇らせてくれる・・・彼女なら
故に託してみようと・・・頼ったのだ
希望の御子たる女神に
温かな輝の中、二人が手を取り合った。
「往くのね・・・」
「うん」
別れを惜しむ声。
「もう一度・・・逢えるよね」
「うん」
再会を約す声。
「何年懸ろうと・・・待ってるから」
「・・・うん」
待ち続けると・・・帰って来てと。
「あの姉弟のように。
いつの日にか・・・必ず・・・・ね」
「約束するから・・・帰って来るって」
二人は互いに約束を交わした。
待つと・・・帰って来ると。
「月の世界からだって・・・帰って来れる筈だから」
声を震わせ、帰還を誓う。
「だって私は・・・絆へと誓ったの」
触れ合えるのは、今この一瞬だけ。
「必ず・・・あなたの許へと還るから・・・ね」
旅立とうとする魂が、残る者へと誓った。
「喩え姿形が変わろうとも・・・きっと」
繋ぎ止めていた手が離れる。
今より・・・遥か彼方へと旅立つ者に、残される者が託すのは。
「理は変わらない。絆は時を越えられるのよ」
愛は・・・二人の絆は永遠だと。
だから。
「千年経とうが・・・私は還ってくるから」
旅路の果てに戻って来ると誓うのだ。
「だって・・・私は。
人の理を司れる・・・女神ミハルだから」
蒼き髪が靡く・・・理の女神ミハル
「ええ・・・待ってるからね」
黄金の髪が揺れる・・・審判の女神リーン
二つの魂が・・・門出に涙する
別れは始まりの鐘を鳴らす
世界の終わりを防いだ女神達
運命に抗い
絆の行方を見守り
人々の幸福を願う者
人は 光に揺蕩う彼女等を <女神> と呼ぶ
轟音と共に島が一つ沈んでいく。
邪神の神殿が潰え。
世界を護った女神も消える。
世界は人の手に返された。
良くも悪くも・・・委ねられることになる。
再び審判が下されるその時まで。
終焉を回避した世界
再び希望の光が降り注ぐ・・・筈なのに
彼女等には未来が見えているのだろうか・・・
世界を創造する者には見えていたのだろうか?
世界の果てには理があると言うことに。
人類に残された時間は残り少ないと言うことに・・・
今より始まる物語。
終末を回避できた筈の人類は、平和を享受するべきだった。
だが、人類は再び過ちを犯す。
我欲を満たさんとする者。
悪魔に魂を売った者。
そして・・・愚者を監視している者が居る。
人類は理を見つけ出せるのか?
この世界に再び惨禍が訪れようとしていると気付かないのか?
世界に魔法が復活したのは・・・何の為なのか?
遂に始まる<魔砲少女ミハル 最終譚>
世界に光がある限り、女神は人を見限らない。
絆が繋がっている限り諦めない。
そう・・・彼女は帰ってきた。
あの人との約束を守って。
あの人の待つ国へと。
フェアリアへと!
次回 プロローグ フェアリアの蒼き獅子
鋼鉄の荒らしがやって来ようとしていた。あの日と同じ荒野へと!




