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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第3章 記憶の傀儡
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Act23 強敵は少女人形

大会に出場するリィン達、それにアークナイト社の人形少女レイ


今回の大会では新型人形が主力となっているのだ。

見事、有終の美を飾れるのか?

大会は順調に進んでいく。

組み合わせ抽選で、前回決勝戦まで勝ち残ったリィンと<ゼロ>は予選を省かれ、本選へと駒を進めることとなっていた。


だが、予選会ではあまりにも過激な闘い方が問題となっていたのだった。

登録された殆どの人形は、強靭な闘士を模っていたのは良しとしても。

オートパイロット機能で見境なく相手を打ち倒そうとするやり方が問題となったのだ。


おまけと言えばなんだが、この度の大会における少女人形は僅かに数組しかエントリーされていなかったのは、ユーリィが溢していたように高額過ぎる賞金故だった。

その中で予選会から一等秀でていた者が居た。


金髪でスカイブルーの瞳を持った少女人形。

オーク社製だとの噂もあるのだが。



「あれはきっと・・・」


リィンがプラグスーツを胸まで開いて涼を採っていると。


「情報を使って造ったんだよリィンちゃん」


運営側の情報サイトを閲覧中のエイジが話しかけて来た。


エントリーされた人形を一覧出来るページを指して、


「零のスペックを超えているかもしれないよ」


オーク社製の少女人形について教えて来る。


カタログではオーク社製とだけ記してあるのだが、

どう見たって髪の色以外は零のコピーにしか見えない。


アークナイト社で開発製造されたゼロと瓜二つにも見えたのだが。


「似てるだけでしょ?お生憎様な事にこっちも性能アップしてるんだからね」


それにこっちがオリジナルなんだからとリィンは気にもかけていない様子だったが。


「でもさぁリィンちゃん。

 この人形もオートパイロットではないみたいなんだよ」


最新鋭の人形なら、時代遅れのマニュアル方式を執らないはずだとも教える。


「なんだか気になっちゃって」


難しい顔になって考え込むエイジを観ても。


「そう?だったら顔合わせできるように祈っておいてよ。

 きっといい勝負になるんじゃないの」


相手が人が操る人形ならと、笑顔で返すだけだった。


「そうかなぁ」


自信ありげなリィンに答えるエイジの手元にあるタブレットには件の人形が映っていた。

エントリーナンバーは<42>を表示されていた。





「「さぁ!ここが勝負を決するタイミングです!」」


リングアナウンサーが吠えたてる。

世界に生配信され、観ている者を熱狂の坩堝へと導いていた。



 グアッキィン!



強靭な体躯の格闘士人形の相手が避ける。

ハンマーパンチが追い詰めていた者を叩き損ねてリング壁に穴を穿つ。


大柄の人形闘士の相手が、華奢な身体を捩って死角へと潜り込んだ。


必殺のパンチを避けられてしまった闘士が、相手を捉えようと仰け反ると。


背後に回り込んでいた相手の髪が靡いたのだけが観えた。



金髪が強靭な体躯を過り去る。

華奢でしなやかな手の平が格闘士の後頭部にめり込む。

どこにそれだけの威力が秘められているのか分からないが、あっさりと後頭部を破壊してしまう。


元が機械兵だろう格闘士は、見劣りする相手に一撃で倒されてしまったのだ。


後頭部から煙を吐き出し、身動き一つしなくなった闘士人形の傍では、闘い終えた金髪の人形が佇んでいる。



エントリーナンバー<42>の・・・エイジが言っていたオーク社製の少女人形が。


倒した相手を見下ろしたスカイブルーの瞳。

感情を映し出さない冷ややかな顔立ちで。


だが、人形から零れだすモノがあった。


「ふふ・・・うふふふ。あはははは」


嘲る声。


「きっと・・・会える筈。

 その時には・・・今度こそ」


何かを狙っているのだろうか?

操手ドライバーは一体誰で何者なのだろう?




予選会は6名の勝者を本選へと送り込んだ。

その中には件の少女人形の姿もある。



「ふぅ~ん。彼女も勝ち上がって来たみたいね」


本選の抽選が行われている間も、リィンは気の無い様に装っていたのだが。


「3戦3勝で、しかもすべてノックアウトしたようだよ」


ずっと動向を気にしているらしいエイジが教えてくると。


「そっかぁ~、操手さんも大分手慣れみたいねぇ~」


もう一度気にしていない風に答えてみたのだが。


「・・・あのさ、リィンちゃん。

 思いっきりガン見してる録画から眼を離さないで言うセリフなの?」


同じ少女人形ドールガール操手ドライバーなのと、同じようにマニュアル方式で操る相手だから、リィンは対抗心を燃やしているらしい。


「ううむ~ぅ、どうやら肉弾戦が得意なようなのよねぇ~、どうしたものやら」


相手は同じ華奢な少女型だし、接近戦で闘うにしてもほぼ互角だと思われて。


「殴り合いは嫌だなぁ。どうにかして一撃で勝負を決めれないかしら?」


うんうん考え込むリィンを余所に、エイジは抽選結果を確かめようとアクセスする。

運営側からの発表がサイトに公開される時間なのだ。


「どれどれ・・・・ええッ?」


本選の1回戦目を観て唸り声を発してしまった。


「不戦勝ぅ~?!」


本選なのに?


「相手側が辞退しちゃった?!」


高額賞金に目が眩んでいた筈だったのに?


「人形が故障して直せないからだって?!」


エイジはあまりの出来事に腰を抜かしそうになる。


「ねぇねぇリィンちゃん。

 不戦勝だってさ、1回戦目は」


ずっとサイトを見詰めるリィンへ引き攣った笑みを溢してみるのだが。


「そうだね・・・エイジちゃん。

 こっちはそうだけど、彼女はデモンストレーション出来るみたいよ」


エントリーナンバー42の彼女は、機械兵型の相手との一戦を控えていた。


「こっちは新しくなったレイとの実戦バトル経験がないのに。

 彼女はどんどんシンクロ率を上げていってる・・・」


想定していた闘いが、このままでは危うくなると踏んで。


「なんとかして零とのシンクロ率を上げなきゃ。

 練習では出来る事でも実践では巧くいかないことだってあるんだし」


通常の練習や調整だけでは図りきれないのが操手ドライバーの定常。


「だから・・・最初で最期になるかもしれない。

 新しい零との闘いが・・・」


準備室に備えられた基礎台上の少女人形ゼロに向かってリィンが溢す。


「ねぇレイ。もしレィちゃんだったらどうするかな?」


そっと近寄り、病院で伏せている人の名を出してみる。


「力の限り闘うのは当たり前だよね。

 でも、それだけでは足りない気がするんだよ」


じっと何も言わない友を見詰め。


「だからね・・・レイに私の気持ちを捧げるわ」


自分に似せて作られていたゼロだけど、新しくボディーを変えられていた。

まるで彼女レィの容姿が移されたかのように。



 スッとリィンが爪先立ちとなり・・・



「お願いレイ。私と心を一つに」


友である人形にも心があるのだと信じて。



 フッ・・・と、レイとリィンの影が重なり合う。



「レィちゃんに出来たのならファーストめてだったかな?」


唇を押さえてはにかむリィン。

幼さの中に健気さが色濃く滲む・・・乙女となった少女リィン


「ねぇレイ。壊される時は私だって同じだよ?」


決戦を前にして、リィンは覚悟を仄めかす。


「負けたって良いから。力の限り闘おうよね!」


電源が入っている零の手を握り、約束を交わしたリィンだった。




 ・・・ピ・・・



制御モニターにウインドウが表される。


<<ホント・・・リィンは真っ正直なんだから>>



 ・・・ピピ・・・


<<でも・・・嬉しい。あなたの熱い気持ちが伝わったから>>



 ・・・ピピピ・・・


<<絶対に護ってみせる。それが私が残した約束なのだから>>



誰も操作していない画面上に現れたウインドウ。

リィンやエイジが眼を向けた時には・・・消えていたのだった。





予想通り。

ナンバー42の彼女が勝った。

またしてもノックアウトで。


これで4戦4勝となった訳だが。


「ほほぅ。

 やはりタナトス教授が言っていた通りの結末になるな」


閲覧しているオーク社の会長が満悦の笑みを溢した。


「あの人形が優勝すれば、賞金は私の元へ帰って来る・・・と言うか。

 元々払わなくても済むのだからな。ぎゃははは!」


ナンバー42の少女人形は、オーク社の会長が出場させたのか?

しかもタナトスが関与を?


「あの娘だとは思えん・・・のだが。

 まさか本当の事だとは考えもせんかったわい!」


あの娘とは?


「これで信憑性が大幅に拡大した。

 やはり人類は間も無く破滅に追い込まれるのだろうな」


・・・その意味とは?


軍事産業オーク社会長の言っていたのが本当だとすれば、ナンバー42の人形には何が隠されているのか?


そしてレイとリィンの闘いは?


いよいよ人形少女同士の闘いが始ろうとしていた。



強敵は同じく少女型の<ナンバー42>!


どこからみても好敵手らしいのだが・・・なにやら不穏な雰囲気が漂って?


一方人形と同化したレィだったが、初めての身体を戸惑い無くうこかせるかが鍵となりそうだ。


次回 Act24 謎の相手

少女人形の破壊力は・・・機械兵をも凌いでいた!

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