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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード7 第5章 新たなる運命 新しき希望
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ACT 3 まさか・・・暴走?

結界の天井部分を貫いていった魔砲弾。

外の世界まで飛び抜けた光の弾を目にした者は、そこで何が起きているのか分かりようがないはずだった・・・が?!


まさかの、異能の暴走?

それはあまりにも突然だった。


弾の尽きた輝騎で闘っていた少女の前に、邪操機兵が躍りかかった。

最早、観念をせざるを得ない・・・そんな時。



 キュド!


金色の光が地表から突き出し、躍りかかって来た敵を飲み込んだのだ。


「な?!なんなノラ?!」


邪操機兵を相手に苦戦を強いられていたノーラの眼に飛びこんで来た光の柱。

まるで悪魔を懲罰する神の一撃が、地の底から表されたかのよう。


光の柱・・・金色のひかり


もろに光の柱に呑まれた邪操機兵は、跡形も無く消し飛ばされた。

物質を消滅させる程の光。

それが意味していたのは・・・


魔法光まほうこう・・・強大な魔力の顕れ」


森の中に現れた金色の柱を見上げて。


「そ・・・か。あたぃの友が助けを求めてるんやな」


翠の髪を靡かせる少女が呟いた。


「あそこに居るんやな。ハナちゃんが・・・」


気を失っていた間に、何が起きたのか。

強大な敵と対峙していた筈だったのに、何故か独りだけになっていた。


「行かへんとアカンのや・・・」


しかも、眼にする事は出来るのに。


「せやのに・・・身体が動かへん」


動こうとしても、自分の意志に身体が従ってくれなかった。


「なんでや?どうして動けへんのや?」


最初は敵の一撃で負傷したのかと思ったが、どこからも痛みを感じることが無かった。

ついで、身体を何かが束縛しているのかと思ったが、拘束されているだけなら動ける筈だと思い直した。


「身体が動かへん・・・のとはちゃぅみたいや。

 まるで身体から魂が抜けてしもうたみたいに・・・なんも感じへん」


それが意味しているのは・・・自分が既に死んでしまったかもしれないと採れた。


「そ・・・やったっけ。

 あのレィとか言う悪魔にやられてしもうたんか」


気を失う前を思い起こし、魔砲戦で敗北を喫したのだと悟った。


「あの時、誰かがあたぃに手を指し伸ばしてくれたように感じたんやけどな」


光の渦に巻き込まれる瞬間、誰かが助けに現れた気がしたのだが。


「あはは・・・やっぱ、まぼろしやったんか」


今の状況が、絶望を表しているように思えて。


「あたぃ・・・死んでしもうたんかな?」


諦めにも似た感情が湧きかえって来た・・・



「死ぬんは一度で十分なんやで」


?!


「姪っ子はんの魂は抜け出てはおらへんから安心しなはれ」


?!?!


自分の声が自分の耳に飛びこんで来る。

それも、意図しない台詞で。


「「え?え?え??なにがどうなってるんや?」」


と、今度は自分の声がくぐもってしまっているのにも驚いて。


「「い?あたぃ、ホントに死んじゃったんかぁ?」」


混乱が混乱を招いて、パニックに堕ちた。


「心配せんでもええんや。

 ウチが身体を借りているだけやから」

「「いやいやいや!意味が分からへんし!」」


耳に聞こえるというか、意識に声が届けられると言うか。


「「あたぃの身体を返してぇ~」」


詳しくは分からないが、身体を誰かが乗っ取ったと思われて。


「「まだ死ねへんのやぁ~~」」


でも、パニックからは抜け出てはいなかった。


「あはは。姪の御美みみちゃん、初めまして。

 ウチが伯母のほまれなんや、よろしゅうにな」

「「ほぇ?」」


声の主から名乗られて、


「「伯母・・・ちゃん?今、中島の伯母ちゃんの名を言った?」」


母方の姉に、そう呼ばれた人が居たのを思い出した。


「そや。ウチがホマレ」

「「って・・・戦争で亡くなった、あの誉伯母ちゃん?」」


前終末戦争で、英霊と成られた伯母だと言われて。


「「あ・・・やっぱ。あたぃも死んだんや」」


死者の仲間になったと勘違いした。


「プ、姪っ子ちゃんはそそっかしいなぁ。

 言ったやろ、死ぬんは一度で十分やって。

 ウチがイッペン死んどいたさかい、死んじゃあいやへんで」

「「へ?ど~いうことなんや?」」


亡くなった伯母が現れて憑依してる?

それはミミの肉体が死を受け入れてはいないと?


「「あたぃはまだ譲れへんのや。

  奪われた友達を助けへんとアカンのや!」」


まだ現実だとは受け入れ難かったが、夢だとしても譲る気は無かった。


「「あの光を辿れば、ハナちゃんの許へ行けるんや!」」


金色の光を指して、


「「あたぃはどうなっても、ハナちゃんだけは助けたいんや!」」


心から願った。


「・・・あの時のウチと同じや。

 ミハルを救おうとした、あの時と。

 死んでも護りたかった、最期の瞬間に想ったのと同じ」


ポツリとミミの意識に飛びこんだ言葉。


「そやからか。ウチが姪っ子ちゃんに宿れるようになったんは」


魂の回帰。秘めた想いが繋がった・・・絆の帰還。


「それと。

 今度は守りきれるだけの戦闘力を与えられてるんやしな」


ぎゅっと握られた拳の中に、強大なる魔法力を秘めたロッドがあった。


「ウチのデバイスも神格化されてるんや。

 一度死んでしもうたから・・・神へと成れたんかも知れへんな」


以前とは違う、強力な魔砲杖を手にして。


「それに。

 姪っ子はんが女神から授けられた魔力もあるみたいやから」


二人の異能が合さり、更に強力化したと?


「そしてなによりも・・・や。

 姪っ子はんの願いを聴き遂げるんが、ウチに与えられた宿命みたいやしな」


ミミの危機に現れたホマレ。

そのタイミングは絶妙で、偶然とは思えなかった。


「そやろ?理を司る女神。

 あんたが仕組んだんは、ウチかて分かっとるんやで」


全ては理を司った女神の仕業だと見切っているようだ。


「そして今度は。

 魔法少女を助け出し、姪っ子はんの願いを成就させる気なんやろ?」


金色の柱を見上げていたホマレが、瞼を閉じて哂う。


「ええやろ。

 手出ししろって言うんやったら・・・」


足元に翠の魔法陣が描き出される。

その円環から、炎のような翠の羽根が生えて・・・


「望む処やで!」


ホマレの瞼が開かれた時、瞳は緑に染まって。


 ドシュンッ!


翠の炎が羽ばたくや、猛烈な速さで空中へと飛び立った。

・・・光の柱へと。





「「美晴・・・穴が開いちゃったよ?」」

「開けちゃった」


結界の天井に向けて放たれた魔砲。

一撃で空間壁を貫いて行った魔力弾に、二人が呆然としていると。


「愚かな奴め。自ら結界を破ろうとするとは」


イシュタル・ゴドームが嘲り嗤う。


「だが、まだ少々早い。

 この巨神兵が完全となるまでは、結界に留まらねばならんのでな」


人界に出てしまえば、悪意を募る事が出来ないのを分かっているのだ。

現界してしまえば、不完全のままに終わるのも。


「完全体にしなければ、人類を駆逐する事は叶わぬのだからな」


巨神兵だとしても完全体に成らなければ、全能力の発揮が不可能だとも分かっている様で。


「邪魔をするお前に割いた分、遅れてしまっているのがもどかしいぞ」


攻撃を防御する為に邪気を使っているイシュタル・ゴドーム。

その影響で完全体にするのが遅れていると言うのだが。


「だが、もう間も無くだ。

 人類に我が脅威を示すのは。

 世界を恐怖のどん底に突き落とす時が来るのは・・・な!」


嗤う・・・その時が来ると信じ切り。


結界の天井が破られたと知っても。


何も起こらないと舐め切って。


己が、自らだけが世界を牛耳れると多寡を括り。




「「「開けたのよ」」」


・・・


「「「ホーさんが来てくれるようにね」」」


・・・・


「「「私が呼んだのを分かってくれてる筈だから」」」


・・・・・


「「「って?もしかして。気が付いていなかったの?」」」


・・・・・・・・・・・


「「「ちょっとぉ?届いているんでしょ<ミハル>の声が」」」


・・・はぁうッ?!・・・


「な?な?!な?!?」

「「え?え?!え?!?」」


戦女神モードのコハルが、身体を固まらせて冷や汗を垂らす。


「い、い、今、聴こえた?」

「「うん、空耳じゃないよ・・・ね?」」


どう言う事なのか、何が起きたのかが理解出来ない二人。


「今の・・・ミハル伯母ちゃん?」

「「いや、まさか。そんな事が・・・」」


有り得る筈が無い。

だって、美晴にはコハルという女神が宿っているのだから。


「「宿れるのは一人に一柱だけ。

  女神であろうとも、同居出来る筈がない」」


そう答えたコハルだが、


「「まさか・・・暴走?!」」


無茶ぶりする堕神を思い出して、


「「意図しない間に、乗っ取られた?あの蒼ニャンみたいに」」


昔に起きた神の暴走を思い出したのだが。


「「「誰の事?蒼ニャンって?」」」


応える声からは否定を表されて。


「「「私はこの石にずっと眠っていたんだけどぉ~?」」」


「「は・・・ぃい?」」


言われて気が付いていたことを思い出す。

美晴の意図しない魔砲弾。

それを放ったのは、あの蒼き宝珠からだったのを。


「えっとぉ・・・どちらのどなた様なんでしょうか?」


今迄蚊帳の外だった美晴が、呆けた声で訊ねてみれば。


「確か今、ミハルって言いましたよね?」


そして訊かなくても良い一言を続けてしまう。


「それって、あたしの伯母おばさんってことでしょうか?」


 ピキッ!


蒼き宝珠が・・・癇に障ったように震える。


「それにしてはお若い声に思えましたけど?」


 ビキビキッ!


完全に・・・怒った。


「「あ?美晴ってば、辞めて・・・」」


異変を察知したコハルがそれ以上訊くなと、停めようとする前に。



  ビッカァーンッ!


宝珠から電撃が・・・


  ぶす・・・ぶす・・・・


で・・・美晴共々焦げてしまった。


「・・・なぜ?げほげほ」

「「私まで巻き込まないでよ!ごほごほ」」


宿った女神までも焦がす電撃。まさに神業W


「「「永遠の17歳に向かって失礼千万!」」」


「・・・さいですか(涙)」


黒焦げてトホホな美晴。


「って?もしかしてホントに?!」


で、漸く事実を認める気になった?


「あたしが17歳になったから、宿れたんですか?

 えっと・・・終末戦争が終わったのが今から23年前だから。

 17足す23は・・・っと」

「「美晴ってば、辞めなさいってば!」」


損な美晴は余計なことをするのも役目?


 ドシャァーーーンッ!


二撃目の雷が・・・


「「「数えなくて良いの!」」」


 ぶすぶすぶす・・・・


「・・・・」

「「・・・・・・」」


黒焦げ状態になってしまった二人からは、もう応える声も返ってこない。


「「「あ・・・やっば。やり過ぎちゃったかな、てへぺろ」」」


テヘペロじゃぁ、済みそうにもないが。


「「「まぁ・・・どうせ、乗っとるつもりだったから良いか」」」


善くありません。


「「「それじゃぁ。暫く気を失っててね」」」


鬼ですか!あなたは。


コハルの右手に填められていた蒼き宝珠。

女神を宿した宝石が、一段と輝きを増した・・・


「っしょっと!はぁ~久しぶりの実体化だねぇ。

 何年ぶりかなぁ・・・はて?何百年ぶりだったかな」


コハルの身体を乗っ取った女神?


「ん~~~~。何だか変な奴がのさばってるけど。

 それって、私達に殲滅されたいってこと・・・なんだよね?」


目の前に蠢く悪意の塊に対し、コハルに宿った女神が笑う。


「ねぇ・・・そうだよね。ホーさん?」


その眼が、穿かれた天井へと向けられて。


「お久しぶり。我が友よ・・・なぁ~んちゃって!」


そして、飛び込んで来る翠の光体へと手を指し伸ばした。


挿絵(By みてみん)


「お帰りなさい、ホーさん。

 ありがとう、私の願いを聴き遂げてくれて!」


微笑むコハルだった顏に、涙が光って。


美春ミハルに逢いに来てくれて!」


その顔が、姿が。

蒼き光に包まれ、古の儘へと変わっていく・・・

帰ってきた。

永き時を越え。

永遠の17歳がW


理を司る者にして、一度は世界から消えた女神。

数々の伝説を残し、数多の戦いを経て。

1000年もの時を越えて。


今、美晴と誇美の前に・・・って?

気絶させられてるぅ~?


次回 ACT 4 かくて二人は帰還する?!

女神ミハルとホマレ。終末戦争の英雄が、絆の許に再会する!

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