ACT 1 新たな布石
公開したのが夏真っ盛りですので。
2人の水着姿を中扉絵にしました~!
ですので、いつの間にか変わっていたりするかもですW
美晴の誕生日がやってきました。
それは、世界にとっても重大な意味が隠されているようです?!
翠の光と、真紅の光が交差した。
辺り一面が爆裂する光と煙で覆われる。
その光景は、正に戦場とも呼べた。
相対する二人の他には何人の姿も無いというのに。
翠の光を放つ少女。
真っ赤に燃える剣を薙ぎ払う影。
繰り出される魔砲弾に拠って、双方の間は爆焔に覆われていた。
翠の魔砲を放つ少女の瞳が睨む。
「返せ!その子を!」
憎しみを籠めた声で相手を罵る。
真っ赤な剣を握った影から、嘲りを含んだ声が返される。
「無駄な足掻きだと思い知れ」
声と同時に、真っ赤な剣を薙ぎ払った。
真紅に燃える剣から、強大な光線が翠の少女へ向けて撃ち出される。
ギュゴゴゴ!
強力な魔力弾と化した光線が、一文字に翠の少女へ向けて伸びて行く。
「これで・・・終わりだ」
勝ち誇った紅い剣を握る影。
「くッ?!」
対峙する翠の少女から、苦渋に満ちた声が零れた。
最早、回避もままならない程迄紅い魔砲弾が迫ってきた・・・命中は免れない。
と、その瞬間だった。
ビシャッ!
どこかから、金色の光が・・・
ドッゴオオオオオォ~
紅い剣を持つ影と、翠の少女の前で巨大な爆焔が立ち昇る。
「うぬ?」
勝利を確信していた影が、何が起きたのかを理解するまで1秒にも満たなかった。
「くぅッ?!」
爆焔に煽られた翠の光を放つ少女も・・・<それ>が振って来た場所を見上げる。
シャラン・・・・
戦う二人が同時に見上げていた。
金色の光を放った者を。
シャラン・・・
ゆるゆると天空から舞い降りて来た者を。
スタ・・
そして・・・対峙した二人の間に降り立った・・・白い魔法衣を纏う者の姿を。
「邪なる魂を持つ者よ、あなたの居場所など、この世界には無いわ」
真白き姿。
輝を纏ったような黄金の髪を靡かせ。
長い前髪の間から覗く、蒼き瞳が見上げていた。
「神の異能を纏う者ならば、人を見守るべきでは無いの?」
両手に二振りの太刀を握り締めて。
「お前は・・・神か?それとも・・・人か?」
戦いを中断した紅い剣を持つ影が質した。
「人ならば、我の力には逆らえぬ。
もしもお前が神だと言うのであれば、その異能を寄越せ!」
そして剣を突きつけると、
「その身体ごと、我等に差し出すのだ!」
既に勝つと決め込んだかのように最後通告を投げて来た。
「・・・馬鹿だな」
現れ出た真白き姿の少女が、俯き加減で言い返す。
「私がこの場に来た理由が分っていないようね」
両手の剣を下段に構え直して。
パアアァッ!
途端に、少女の周りにピンクの魔法光が吹き荒れる。
「なッ?!お前は?」
影が剣を構え直した少女の異能に気が付く。
「お前は?!まさか・・・」
金色の髪・・・真白き魔法衣・・・
「本当に・・・神なのか?!」
魔法衣の胸元に輝くのは、桜を模った象徴飾・・・
「だから・・・馬鹿だなって言ったんだよ」
黄金色の髪の隙間から覗く碧い瞳・・・
「此処に来れる者が、単なる魔法使いな訳がないでしょうに」
零れる優しげな声・・・
「まさか・・・まさか?!お前は!」
魔法光が金髪の少女に纏わり着き、花弁が吹き荒れて春の嵐の如く舞い散る。
「そうだよ、邪神。
私が・・・ヴァルキュリアの・・・」
ゆっくりと振り仰ぐ金髪の少女。
凛とした顏を邪なる者へと向けて・・・名乗るのは。
「あなた達、異種者と対峙する戦女神。
人の世界を護る為に降臨した・・・誇美!」
約束の日。
それは島田 美晴が17歳を迎える誕生日。
光の子が輝きを放ち、宿命を受け継ぐ日・・・
晩秋の昼下がり。
普段とは違う一日が始まっていた。
「おっかしいなぁ~?」
魔法少女隊員の制服を着た美晴が小首を傾げている。
「どこに行ったんだろ?」
辺りを見回し、誰かを探している?
「あのぉ?隊長を見かけませんでしたか」
指揮所に居た班員に、シキが何処に居るのかと訊ねて。
「お話があったんですけどぉ」
まだ、先日の件を謝ってもいないらしく、そわそわと周りを探していたのだが。
「ああ、シキ隊長なら。昨日以来観てませんけど?」
「え~っ?!ホントですかぁ?」
指揮所にも顔を出していないと答えられて。
「もぅ!どこに雲隠れしちゃったのよぉ~」
探そうにも居ないと分かって落ち込むのだった。
「でも、ホントにどこに行ったのかな?
もしかして、あたしってばいけない事でも言ってしまったのかなぁ?」
夢魔空間に囚われている間、眠っているだけだから寝言でも呟いていたのかと考えて。
「それとも、シキ君があたしに会いたくないことでもシちゃった?」
ルマから聴いていたのは、お姫様抱っこされて連れ帰ってくれたことだけだったが。
「まさかその・・・ごにょごにょなんて・・・されてないよね?」
両手を顔に当てて身悶えていると。
「ある訳がないノラ!」
傍らに居たノーラが断言した。
「美晴ンのヴァージンは健在なノラ!」
「・・・分かった、分かった」
ジト目で姉を諭すローラも居た。
「そ、そ~だよねぇ~」
そして我に返って冷や汗を垂らす美晴が、魔法少女隊の指令室に居た。
暗い闇。
翳りを孕んだ世界に建っている王宮。
それは2年前から大魔王に任じられた堕神デサイアの居城。
「全く以って・・・ケシカラン奴じゃのぅ」
臣下髄一の古強者、狒狒爺ことエイプラハムが眉を顰めて唸る。
「喩え光と闇の異能を持つ者と云ってもじゃ。
そう何度も結界破りをされては、こちらの立場が無いというモノじゃ」
一軍の将を兼ねる狒狒の魔獣でもあるエイプラハムが、家臣たちを前に愚痴ているのは。
「あの小僧め。
自分を闇の王子とか嘯きおって」
王宮の控えの間から、奥間った場所へと目を向ける。
「大魔王様に直談判がしたいなど、人為らざる者とでも言いたいのかのぅ?」
控えの間の奥、薄い灯りが零れ出ている王座のある場所を顧みて。
「怖いもの知らずにも程があるわい」
もしも大魔王の逆鱗を受ければ、臣下であろうとも消し去られるのが定石だったから。
「デサイア様が奴との会談を成されるのにも問題があろうがの」
大魔王が余所者との対談を認めるのが異例中の異例だと言って。
「まぁ、コハル様に関わる大事なれば、仕方なき事かも知れんがのぅ」
前大魔王姫コハルの話ならば、狒狒爺も認めてしまうのだった。
「如何お過ごしかのぅ、我が姫君は。
彼是2年も伺候出来てはおらぬが・・・お逢いしたいのぅ」
コハル姫の側近であり、その守護を託された爺やでもあったエイプラハムが懐かしむ。
「それにしてもじゃ。
奴は如何にして情報を得たのじゃ?
我等とて、天界における出来事は分からぬというのに。
何故、罷り越した?何故我が大魔王との面会を求めたのじゃ?」
狒狒爺は腕を組んで会見の場を睨む。
「まさか、我等との間に一計を謀りに来たのか」
天界と魔界。それに人間界。
3つの世界で何かが起きようとしているのかと勘繰るエイプラハム。
「いずれにせよ、我等の本分を貫かねばなりますまい、我が姫コハル様」
未だにコハルを姫と呼び、恭順の意を表す狒狒爺。
「父皇ルシファー様から引き継がれた誓いは健在ですぞ。
姫も守れと残された、人の世界には不干渉を貫く掟。
この爺の眼が黒い内は、家臣共を律してみせましょう程に」
今の大魔王も継承している人界に不干渉を命じた掟。
それを破る事は断じて赦さないと、家臣を束ねる将が誓った。
王宮の謁見の間。
今そこに居るのは・・・
「だから!もはや時間が無いんだ」
決死の想いからか、声が大きくなった。
魔王の居城の中で、特に広い謁見の間で対峙しているのは・・・
「それは聴いた。
だが、それが事実だと言う証拠があるのか?」
玉座には勿論のこと大魔王が居る。
赤紫の魔法衣を着た、現大魔王である堕神デサイアが訊き返した。
「私も大事だと想っている。
仮にそれが事実だとすれば、看過できぬと言い切るのだがな」
「言っただろ!俺が観て聴いたって。
アイツが嘘を言うなんて思えないんだよ!」
紅い瞳の青年に・・・
「夢魔と目された者が・・・だろう?」
「ああ。だが、俺達は2年間もの間分かり合えていなかった。
アイツはその間ずっと、耐え忍んでいたんだぞ」
決死な想いを滲ませる瞳で訴えるのは・・・
「その夢魔が名乗ったんだよ、自分がもう一人の美晴だって!」
運命に苛まれる娘を助けたいと。
だが、大魔王は片手をあげて制した後に言ったのだ。
「お前の言うミハルとは・・・女神を指したのか?
それとも・・・私の大切な・・・姪の名を言ったのか?
どうなのだ、人為らざる者のシキよ?」
人と妖の狭間。
再度、魔界の門を潜った半妖のシキが大魔王と向き合っていた。
戦いが始まろうとしていました。
ついに運命の輪が回り始めたのです。
誕生日の戦いが終る時。
美晴は?世界は変わっているのでしょうか?
いよいよ、第4章の開幕です!
次回は?!
次回予告 ACT 2 始まる魔砲戦
翠の髪を靡かせて戦う姿。その少女の名は魔拳少女ミミ!




