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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード7 第4章 バトル オブ バースデイミッション<誕生日戦闘>
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ACT 1 新たな布石

挿絵(By みてみん)

公開したのが夏真っ盛りですので。

2人の水着姿を中扉絵にしました~!

ですので、いつの間にか変わっていたりするかもですW


美晴の誕生日がやってきました。

それは、世界にとっても重大な意味が隠されているようです?!

翠の光と、真紅の光が交差した。

辺り一面が爆裂する光と煙で覆われる。


その光景は、正に戦場とも呼べた。

相対する二人の他には何人の姿も無いというのに。


翠の光を放つ少女。


真っ赤に燃える剣を薙ぎ払う影。


繰り出される魔砲弾に拠って、双方の間は爆焔に覆われていた。


翠の魔砲を放つ少女の瞳が睨む。


「返せ!その子を!」


憎しみを籠めた声で相手を罵る。


真っ赤な剣を握った影から、嘲りを含んだ声が返される。


「無駄な足掻きだと思い知れ」


声と同時に、真っ赤な剣を薙ぎ払った。

真紅に燃える剣から、強大な光線が翠の少女へ向けて撃ち出される。


 ギュゴゴゴ!


強力な魔力弾と化した光線が、一文字に翠の少女へ向けて伸びて行く。


「これで・・・終わりだ」


勝ち誇った紅い剣を握る影。


「くッ?!」


対峙する翠の少女から、苦渋に満ちた声が零れた。


最早、回避もままならない程迄紅い魔砲弾が迫ってきた・・・命中は免れない。


と、その瞬間だった。



  ビシャッ!



どこかから、金色の光が・・・



  ドッゴオオオオオォ~



紅い剣を持つ影と、翠の少女の前で巨大な爆焔が立ち昇る。



「うぬ?」


勝利を確信していた影が、何が起きたのかを理解するまで1秒にも満たなかった。


「くぅッ?!」


爆焔に煽られた翠の光を放つ少女も・・・<それ>が振って来た場所を見上げる。



 シャラン・・・・



戦う二人が同時に見上げていた。

金色の光を放った者を。



 シャラン・・・


ゆるゆると天空から舞い降りて来た者を。



 スタ・・


そして・・・対峙した二人の間に降り立った・・・白い魔法衣を纏う者の姿を。


「邪なる魂を持つ者よ、あなたの居場所など、この世界には無いわ」


真白き姿。

ひかりを纏ったような黄金の髪を靡かせ。

長い前髪の間から覗く、蒼き瞳が見上げていた。


「神の異能を纏う者ならば、人を見守るべきでは無いの?」


両手に二振りの太刀を握り締めて。



「お前は・・・神か?それとも・・・人か?」


戦いを中断した紅い剣を持つ影が質した。


「人ならば、我の力には逆らえぬ。

 もしもお前が神だと言うのであれば、その異能ちからを寄越せ!」


そして剣を突きつけると、


「その身体ごと、我等に差し出すのだ!」


既に勝つと決め込んだかのように最後通告を投げて来た。


「・・・馬鹿だな」


現れ出た真白き姿の少女が、俯き加減で言い返す。


「私がこの場に来た理由が分っていないようね」


両手の剣を下段に構え直して。


 パアアァッ!


途端に、少女の周りにピンクの魔法光が吹き荒れる。


「なッ?!お前は?」


影が剣を構え直した少女の異能に気が付く。


「お前は?!まさか・・・」


金色の髪・・・真白き魔法衣・・・


「本当に・・・神なのか?!」


魔法衣の胸元に輝くのは、桜を模った象徴飾ブーケット・・・


「だから・・・馬鹿だなって言ったんだよ」


黄金色の髪の隙間から覗く碧い瞳・・・


「此処に来れる者が、単なる魔法使いな訳がないでしょうに」


零れる優しげな声・・・


「まさか・・・まさか?!お前は!」


魔法光が金髪の少女に纏わり着き、花弁が吹き荒れて春の嵐の如く舞い散る。


「そうだよ、邪神。

 私が・・・ヴァルキュリアの・・・」


挿絵(By みてみん)


ゆっくりと振り仰ぐ金髪の少女。

凛とした顏を邪なる者へと向けて・・・名乗るのは。


「あなた達、異種者イシュタルと対峙する戦女神ヴァルキュリア

 人の世界を護る為に降臨した・・・誇美こはる!」










 約束の日。


それは島田 美晴が17歳を迎える誕生日。

光の子が輝きを放ち、宿命を受け継ぐ日・・・


晩秋の昼下がり。

普段とは違う一日が始まっていた。


「おっかしいなぁ~?」


魔法少女隊員の制服を着た美晴が小首を傾げている。


「どこに行ったんだろ?」


辺りを見回し、誰かを探している?


「あのぉ?隊長を見かけませんでしたか」


指揮所に居た班員に、シキが何処に居るのかと訊ねて。


「お話があったんですけどぉ」


まだ、先日の件を謝ってもいないらしく、そわそわと周りを探していたのだが。


「ああ、シキ隊長なら。昨日以来観てませんけど?」


「え~っ?!ホントですかぁ?」


指揮所にも顔を出していないと答えられて。


「もぅ!どこに雲隠れしちゃったのよぉ~」


探そうにも居ないと分かって落ち込むのだった。


「でも、ホントにどこに行ったのかな?

 もしかして、あたしってばいけない事でも言ってしまったのかなぁ?」


夢魔空間に囚われている間、眠っているだけだから寝言でも呟いていたのかと考えて。


「それとも、シキ君があたしに会いたくないことでもシちゃった?」


ルマから聴いていたのは、お姫様抱っこされて連れ帰ってくれたことだけだったが。


「まさかその・・・ごにょごにょなんて・・・されてないよね?」


両手を顔に当てて身悶えていると。


「ある訳がないノラ!」


傍らに居たノーラが断言した。


「美晴ンのヴァージンは健在なノラ!」


「・・・分かった、分かった」


ジト目で姉を諭すローラも居た。


「そ、そ~だよねぇ~」


そして我に返って冷や汗を垂らす美晴が、魔法少女隊の指令室に居た。





暗い闇。

翳りを孕んだ世界に建っている王宮。

それは2年前から大魔王に任じられた堕神デサイアの居城。


「全く以って・・・ケシカラン奴じゃのぅ」


臣下髄一の古強者、狒狒爺ことエイプラハムが眉を顰めて唸る。


「喩え光と闇の異能を持つ者と云ってもじゃ。

 そう何度も結界破りをされては、こちらの立場が無いというモノじゃ」


一軍の将を兼ねる狒狒の魔獣でもあるエイプラハムが、家臣たちを前に愚痴ているのは。


「あの小僧め。

 自分を闇の王子プリンスとか嘯きおって」


王宮の控えの間から、奥間った場所へと目を向ける。


「大魔王様に直談判がしたいなど、人為らざる者とでも言いたいのかのぅ?」


控えの間の奥、薄い灯りが零れ出ている王座のある場所を顧みて。


「怖いもの知らずにも程があるわい」


もしも大魔王の逆鱗を受ければ、臣下であろうとも消し去られるのが定石だったから。


「デサイア様が奴との会談を成されるのにも問題があろうがの」


大魔王が余所者との対談を認めるのが異例中の異例だと言って。


「まぁ、コハル様に関わる大事なれば、仕方なき事かも知れんがのぅ」


前大魔王姫コハルの話ならば、狒狒爺も認めてしまうのだった。


「如何お過ごしかのぅ、我が姫君は。

 彼是2年も伺候出来てはおらぬが・・・お逢いしたいのぅ」


コハル姫の側近であり、その守護を託された爺やでもあったエイプラハムが懐かしむ。


「それにしてもじゃ。

 奴は如何にして情報を得たのじゃ?

 我等とて、天界における出来事は分からぬというのに。

 何故、罷り越した?何故なにゆえ我が大魔王との面会を求めたのじゃ?」


狒狒爺は腕を組んで会見の場を睨む。


「まさか、我等との間に一計を謀りに来たのか」


天界と魔界。それに人間界。

3つの世界で何かが起きようとしているのかと勘繰るエイプラハム。


「いずれにせよ、我等の本分を貫かねばなりますまい、我が姫コハル様」


未だにコハルを姫と呼び、恭順の意を表す狒狒爺。


「父皇ルシファー様から引き継がれた誓いは健在ですぞ。

 姫も守れと残された、人の世界には不干渉を貫く掟。

 この爺の眼が黒い内は、家臣共を律してみせましょう程に」


今の大魔王も継承している人界に不干渉を命じた掟。

それを破る事は断じて赦さないと、家臣を束ねる将が誓った。



王宮の謁見の間。

今そこに居るのは・・・


「だから!もはや時間が無いんだ」


決死の想いからか、声が大きくなった。

魔王の居城の中で、特に広い謁見の間で対峙しているのは・・・


「それは聴いた。

 だが、それが事実だと言う証拠があるのか?」


玉座には勿論のこと大魔王が居る。

赤紫の魔法衣を着た、現大魔王である堕神デサイアが訊き返した。


「私も大事だと想っている。

 仮にそれが事実だとすれば、看過できぬと言い切るのだがな」


「言っただろ!俺が観て聴いたって。

 アイツが嘘を言うなんて思えないんだよ!」


紅い瞳の青年に・・・


「夢魔と目された者が・・・だろう?」


「ああ。だが、俺達は2年間もの間分かり合えていなかった。

 アイツはその間ずっと、耐え忍んでいたんだぞ」


決死な想いを滲ませる瞳で訴えるのは・・・


「その夢魔が名乗ったんだよ、自分がもう一人の美晴だって!」


運命に苛まれる娘を助けたいと。

だが、大魔王は片手をあげて制した後に言ったのだ。


「お前の言うミハルとは・・・女神を指したのか?

 それとも・・・私の大切な・・・姪の名を言ったのか?

 どうなのだ、人為らざる者のシキよ?」


人と妖の狭間。

再度、魔界の門を潜った半妖のシキが大魔王と向き合っていた。


戦いが始まろうとしていました。

ついに運命の輪が回り始めたのです。


誕生日の戦いが終る時。

美晴は?世界は変わっているのでしょうか?


いよいよ、第4章の開幕です!

次回は?!


次回予告 ACT 2 始まる魔砲戦

翠の髪を靡かせて戦う姿。その少女の名は魔拳少女ミミ!

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