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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード7 第3章 夢幻 時の静寂に棲む者
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ACT 2 週明けは憂鬱で

月曜の朝と言えば。

学生だって憂鬱なもの。


況してや、毎度邪魔な娘が待ち構えてると思えば・・・

美晴の誕生日は、この土曜日だった。

後・・・6日だ!

半月の明かりが、窓越しに部屋の中へと降り注ぐ。


「きっと。秘密のままにしておきたいんだ、あたしには」


美雪の許から自宅へと帰って、


「伯母ちゃんとあたし。

 未だに隠し通さなきゃいけない秘密ってなんだろう」


パジャマ姿の美晴が呟く。


「お祖母ちゃんは知っている・・・筈なのに。

 どうして話してくれないんだろう?」


昨日プレゼントされた、翠のリングを指でなぞり。


「あたしの謂れ。

 理の女神と称された伯母ちゃんとの関係。

 ううん、あたしって伯母ちゃんのなんなのだろう」


シキから貰ったリングに書き込まれた象形文字らしい彫刻。

知らなければ、単なる飾りにも思えるのだが・・・


「それに、シキ君って。

 どうしてこんな彫刻を施したリングをくれたのかな?」


翠のリングに施された象形文字を、指でなぞって目を閉じる。


「お祖母ちゃんの仏壇にも、これと同じ文字が刻まれてた」


瞼の裏に、今日確認出来た位牌の文字が浮かんでくる。


「これって、女神である証なのかな?

 それとも、高位の魔砲少女だった人を表してるのかな?」


位牌の縁に刻まれてあった文字と、リングの彫刻が重なる。

意味は分かりかねるけど、同じ形を採っているのだけは理解出来た。


「シキ君は。

 彼はあたしに何を求めようとしているの?」


位牌に隠された真実。

自分に秘められ続ける宿命。


「あたしは。

 美晴はシキ君を信じたいんだよ?

 ずっと傍に居たいって願ってるんだからね」


月明かりを受けて光る、翠のリングを胸に添えて。

魔力を秘めた左の碧い瞳で夜空を見上げる。


「あたし・・・生きていても良いんでしょ?

 美晴はミハルのままで・・・生きていたい」


挿絵(By みてみん)


すぅっと顔をあげた美晴を月明かりが照らした時。

顏半分を隠していた髪の隙間から、翳を伴った右目が・・・紅く光っていた。




 美晴が17歳になる誕生日まで、後1週間・・・






秋晴れの朝でも、気の重たくなる休み明けの月曜日。

これからまた、1週間勉学に勤しまねばと思えば仕方がない・・・


・・・と?


「ぬはははっ!待っとったで島田の美晴ぅ~!」


月曜の朝だというのに、元気一杯なのは?!


「・・・お邪魔虫」


登校してきた美晴の前で、踏ん反り返っているミミ。

仁王立ちして待ち構えていた、美晴にとっては只のお邪魔虫にジト目で応じると。


「ぴくく。

 お邪魔虫っちゅぅーのはあらへんやろ~」


顏を引き攣らせてミミも言い返すが。


「お邪魔虫だから、そう言っただけ」


相手にするのも面倒だと思ったのかは知らないが、待ち構えているミミを素通りしていく美晴。


「あ。ちょ、ちょっと待ちいな?!」


相手にされていないと分からないのか、ミミが慌てて追い縋る。


「あたいと勝負したってぇ~なぁ~」


月曜の朝から、この調子。

お邪魔虫と揶揄されるミミのルーチンワーク。


「・・・だから。お邪魔虫なのよ」


無視を決め込もうとする美晴に追い縋るミミの姿。

転入して来た時からずっと続いて来たのだから、いい加減うんざりしているのだろう。


「勝負する謂れがあるのなら別だけどね」


ポツリと溢す美晴。

まさかミミに訊き質されるとは思わずに・・・だ。


「お?!勝負する気になったようやな」


「は?!だから!勝負しなきゃいけない理由なんて・・・」


聴き咎められた事に、少々驚いてしまったけど。


「私には何も無いんだから!」


立ち止って言い返したのだが。


「いんやぁ~。これが出来ちまったんやなぁ~」


にんまりと嗤うミミが居る。


「?!出来たって・・・どう言うこと?」


嗤うミミに噛みつく美晴。


「ふ。知りたいかぁ~?

 あたぃは知ってるんやでぇ~、美晴の秘密を~」


「な?!私の秘密ですって?」


ビクンと身体を震わせてミミを睨み返す。


「フフフ!

 秘密を言いふらされたくなかったら、あたぃとの勝負を受けるんやぁ!」


「・・・言いふらす?

 私の秘密って・・・どんな話なの?」


秘密と言われて身構えていた美晴だったが、どうやら思っていた話とは違うんだと分かってきた。


「にひひ!

 そりゃぁ~なぁ・・・」


ニマニマと嗤うミミが秘密と言っていた訳を披露しようとした時。


「朝っぱらから何を揉めてるんだよ?」


美晴の背後から問い質す声が。


「もう直ぐ予鈴が鳴るぞ?

 遅刻したくなかったら、さっさと教室へ向かえよな」


振り返るまでもなく、声の相手が誰なのかが分かった美晴が。


「あ、シキ君・・・って。

 そっか、今日から教育実習に来るんだったね」


顏を緩めて応えた。


と、一方。


挿絵(By みてみん)


「あーっ!密愛相手が現れた」


びしりと指を突きつけるミミ。


「・・・なんなのよ、密愛って?」


「あたぃは見てたんやからな!

 ふたりがデートしてるんを」


問いかける美晴に、言い返すミミ。


「二人が高級レストランに入って行くのを。

 その後できっと・・・あちぃ~夜を過ごしたんに間違いないんや!」


「あ・・・そう言えば。魔物と戦った魔法少女が居たんだっけ」


土曜の夜に二人はすれ違っていた。

その事実を突きつけるミミに、美晴も思い出す。


「あたぃが観たことを言いふらされたくなかったら。

 勝負して勝ことやな!」


「・・・秘密って。シキ君との仲のことだったんだ?」


あっさりと暴露したミミに拍子抜けする。


「そや!教育実習生と教え子の密愛。

 発覚すれば、タダでは済まされへんやろぉ~?」


びしっと指差し言い切る、悪知恵を働かしたミミに。


「幼馴染と夕飯を伴にしただけなの。

 どこに、そんなデマを信じる人が居るのかしら・・・ね」


「な?!なんやて?」


話にもならないと呆れ顔を見せつけて。


「私達のことを知ってる先生方や、上級生には通用しないわよ」


「な?!なんやってぇ~ッ!」


驚愕するミミに諦めろと啖呵をきった。


「お、おい美晴?」


二人の話に途中から加わったシキが、どういった揉め事なのかと訊こうとしたが。


「行きましょ、シキ先生」


動揺しまくるミミに背を向けて、


「お邪魔虫なんて相手にしない方が良いんですから」


さっさと校内へと足を向けた。


「なんなんだよ美晴、さっきのは?」


困ったような顔をしたシキに訊かれても、ツン状態の美晴は口を閉ざしたまま。


「幼馴染ってのは間違ってないけど」


問い質された美晴が一瞬だけ立ち止って。


「あの子には、そう言った方が良いと思っただけ」


目を合わさないようにして応える美晴が右指に填めている翠のリングを、それとなくシキの眼に映るように伸ばす。


「私の気持ちは、これに籠められてるから・・・ね?」


クスッと笑うと、想い人にだけ見せれる微笑を浮かべた。


・・・だが。


「あ~?!

 やぁ~っぱぁりぃ~。怪しい仲ちゃぅんかぁ~?」


お邪魔虫にも観られていたようです。


「・・・行きましょ、シキ君」


「あ、ああ?」


挿絵(By みてみん)


背後から襲い掛かる、お邪魔虫の眼に美晴は・・・少々お激怒かんむりなようです。




ホームルームが始った時、教室でどよめきが起きた。


季節外れの教育実習生に・・・と言うよりかは。


「シキ先輩~(^^♪」


「お久しぶりです~」


二年ぶりに顔を併せた同級生クラスメート達が、取り巻くのを眉を顰めて観ていた。


「時々は用務員助手として来られてましたよね~」


「今日からは毎日会えるんですよね~」


キャイキャイ話す、女生徒達。

その誰もが眼にハートマークを浮かべているかのように思える・・・のは。


「遺憾ノラ」


「本当ですよね~」


少し離れた席に座ったままのノーラとローラ。

それに・・・


「だ、大丈夫。我慢できるから」


俯いたまま、両手を握り締めて足を震わせている・・・


「ミハルっち。痩せの我慢には限界があるノラぞ?」


「意外と。美晴さんも・・・焼き餅派なんですねぇ」


カタカタと音をたてているように思える程、足が震えている様を見せられては。


「いっその事、私の許嫁ですって告白して来たらどうなノラ?」


「そうそう!卒業したら入籍しますからって言ったらどうですか?」


二人は交々美晴を煽る・・・って?


「は?ほえぇ?!

 どうしてノーラやローラ君が知ってるのよ?」


土曜に起きた秘密を、何故知ってるのかと。


「いやぁ。土曜は当直だったノラが?」


「ボクはノーラ姉から聞かされましたけど?」


魔法少女隊員であるノーラが、ルマの傍に居たからだと答えれば。


「隊に居た殆どの人が知ってると思うノラが?」


「それと。ボクみたいな耳ざとい奴も、ですけどね」


ルマの<でぇとを、あ?!らいぶ>作戦が功を奏したのか?!


「魔法少女隊関係者全員の知る処だと思うノラが?」


「は?!マジ・・・なの?」


眼を廻すというよりは、闇に堕とした美晴がノーラに聴き直した。


「周知の事実。既成概念っていうノラか~」


「・・・死んだ。あたし~もぅ、死んだわぁ」


事実という無情に眼を虚ろにする美晴。


「なにが死んだノラか。

 この幸せもんがぁ~」


「そうですよ!

 美晴さんとシキ隊長ならお似合いのカップルじゃないですか」


周りに事実を知られたくなかった美晴へ、二人から祝辞が返される。


「そ?そう・・・かな」


ポッと顔に朱が差す。


「その指に填めたままのリングを観れば。

 夜になれば・・・自ずと指が捗るでしょう?」


「そう・・・この指が~って。ちょっと?!」


ローラからの意外な一言で、顔が上気してしまう。


「いやいやローラ君。

 ノンなミハルっちが身悶えるなどとは・・・思えるノラ」


「うんうん。このリングを填めてるだけで・・・違うぅッ!」


発情娘と言われては、黙っていられないか。


「なんてことを言うのよ!」


ダゴデンっと机を叩く美晴に、二人が眼を瞑って。


「慌てて言い繕うとは・・・事実だったノラか?」


「ミハルさんも、そんなお年頃になってしまったんですねぇ」


何かを悟ったかのように呟くのだった。


「いや、あの。もしも~し?」


当の本人は否定したかったみたいなのですけどね。


「それはそうと。

 今週の末には、ミハルっちの誕生日が来るノラな?」


「い、いきなり。話を切り替えたわね」


マジ顔になるノーラに、言い澱んで応えると。


「その日まで、隊長は護り抜く決意なノラぞミハルっち」


「あ・・・うん」


教育実習とは名ばかりの護衛任務なのだぞ、と。


「大切に思われている証なのですから」


「うん、そうだよね」


ローラからもシキがどう思っての行動なのかを告げられて。


「シキ君が心配してくれているのは分かってるつもりだよ」


クラスメート達に囲まれている彼を見て応える。


「そうなノラぞ。

 隊長は一途にミハルっちを想って・・・だが」


「だが?だが・・・なによ?」


途中で意味深な区切りを入れられた美晴が聴き咎めると。


「イチャくるのは、誰にも観られない世界でヤるノラぞ!」


「ノーラ姉の言う通り!」


二人が口を揃えて仲を囃し立てる。


「結局ッ!そっちなのね!」


再びダゴデンと、机を叩き吠えるのは・・・そんな美晴さん。


「なんだよ、美晴?何を揉めてるんだ?」


で。

状況を把握し切れていないのは、こちらも同じようで。


「なにか楽しいことでもあるのかよ?」


クラスメートに囲まれたシキが訊くと。


「楽しくなんかないよ、鈍感シキ君!」


二人の仲が問題なんだと謂わんばかりに。


「もぅ!シキ先生なんて・・・べぇ~~~っだ!」


敢えて悪態を吐く美晴さんが居ましたとさ。



「ホントは、嬉しいノラぞ」


「んだんだ」


外野な二人も。


お邪魔虫ミミを無視した美晴だが。

今度はクラスメートに焼餅?!


教育実習の名を借りた護衛任務に就くシキ。

護衛任務と知りながら学園生活を楽しむ美晴。

方や、魔法少女として魔物に退治する魔拳少女ミミにも心強い味方が?!


次回 ACT 3 二人はペア!

びゅ~てぃびゅてい~びゅ~てぃぺあ~♪。魔法少女は強いんだぞ!

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