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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード 7 新たなる運命 新しき希望 第2章 でぇ~とぉ?あ?らいヴ? 魔法少女は清く美しく!
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Act12 2人の想い

美晴とシキの絆。

約束は交わされ、希望が生まれた。


世界は2人の想いを受け入れるのだろうか・・・

遠く街灯りが観える公園の片隅で。


二人のシルエットが、星明りに照らされて重なり合う・・・



「フ・・・聞いちゃぁおれんノラ」


瞼を閉じて、盗聴され続ける二人の会話に溜息を溢すのは。


「ミハルっちの初デートは、見事に成功したノラ」


シキとの仲が、これ程迄睦ましいとは思いもしなかった。


「これはもう、婚約したに等しいのではないノラか?」


開いた瞼で、司令官席に座るルマへと聴き質す。


「魔法少女隊司令としてではなくて、娘の母としてはどう感じるノラ?」


一人娘のデートを監視すると言ったルマ司令へと。


「フフフ・・・まだまだ。青いだけよ」


しかし、返って来たのは認めていないような母からの言葉。


「あの子も漸くのこと、青春アオハルってものに突入しただけ」


「・・・アオハルって。素直に祝ってやれないノラか?」


ノーラが呆れたように肩を竦めてみせると。


「フ。そうね、お祝い代わりに・・・私からのプレゼントをあげるべきかしらね」


ニヤリと嗤ったルマ司令の指先が・・・


「恋人達への・・・花向けヨ!」


ポチ・・・っと、コンソールの紅いボタンを押し込んだのでした?!





満天の星。


瞼を閉じていくシキの前で。


ほのかな灯りの中、美晴は唇に載せられる瞬間を待っていたのでした。


ー いつまでも・・・あたしは傍に居続けたい・・・


ロマンに満ちた夜。

幼馴染を飛び越えて、本当の恋人になれたから。


ー もぅ、心も。

  全て、なにもかも捧げたって良い・・・


身も心も・・・愛する人へ。


辺りの静寂が、却って美晴の意識を高める。

心臓の高鳴りが、シキに伝わってしまいそうに思えて・・・



 キィイイィイイイイィ~ン



ー ほら。耳鳴りみたいに・・・って?


突如、左耳に着けていたイヤリングから金属音が流れ出して・・・


「「は~い!そこまでよ。

  結婚するまでは清い関係のままでいなさい」」


美晴の耳にルマの甲高い声が飛びこんで来た。


「どひぃやぁあああああッ(@ ̄□ ̄@;)!!」


「うわっ?ルマ司令?!Σ( ̄□ ̄|||)」


二人がキスを交わす寸前、驚いて飛び退く。


「「婚約したからと云って、軽はずみな行動は慎みなさい!」」


イヤリングから、母であるルマ司令の怒鳴り声が轟き渡る。


「ぴぃええええぇ~~~?」


イヤリングを填めたままの美晴が、あまりの大音響に目を廻して。


「ルマお母さんの馬鹿ぁ~~~~!」


良い雰囲気になっていたのを、台無しにされて泣き出してしまう。


「「フフフ・・・まだまだ青いわね美晴。

  プロポーズを受けるなんて・・・1万年早いわよ!」」


「うるひゃいッ!そう言うルマお母さんだって、初デートで受けたでしょうが!」


がなり立てるイヤリングを外し、それに向かって吠えまくる美晴。


 ギャイギャイ・・・ガウガウ・・・


親子喧嘩は初デートを祝っているのでしょうか?


「ははは。良い親子ですね、司令」


娘を心配して盗聴していると感じたのか、シキは微笑ましく想っている?


「ですが、俺は聴いてみたかったんですよ。

 美晴が産まれの謂れを知っているのかを・・・ね」


イヤリングに吠えている美晴には、聞こえないように呟くシキ。


「そして・・・知っておきたくなったんです」


すぅっと、瞼を細めて続けた。


「あなた達が関与した<女神転生計画>ってモノを。

 美晴の生い立ちと、どう関係しているのかを・・・ね」


イヤリングに吠えたてる美晴の指に填められたシキから贈られたリング。

危機に直面した時自分を呼べと言っていたが、それは裏を返せば盗聴する事だって出来るということ。


「俺は・・・女神になんてなっては貰いたくないんだよ美晴」


魔砲少女であり続け、人であり続けて欲しいから?

それとも、魔に属している自分に不適合な存在である女神を忌み嫌って?


「美晴は、美晴であり続けなきゃ・・・いけないんだ」


口元を歪めるシキ。

今、彼の胸中にあるのは<ひかり>なのか、<やみ>なのか?






土曜の夜も大分更けた、帝都学園の寄宿舎で。



「ふわぁ~、疲れたでぇ」


肩をグルグル回して、自室で寛ぐミミが居ました。


「ちょっと、ミミちゃん」


・・・その傍には。


「魔法少女だったなんて・・・信じられないですけど」


ジト目で座り込んでいるハナも居ます。


「やっと信じてくれる気になったんか?」


「信じるも何も。変身するのを、もう一回見せたからでしょ!」


上目遣いにミミを観ているハナが。


「女神様から貰った天使級の異能だって言ってたから」


おっかなびっくり、ハナの前に居る銀ニャンを指して。


「こんなヘンテコな猫毛玉が、天使様だなんて思えないんだけど」


「あたぃも~、初めて会った時には、そう思うたわ~」


むしゃむしゃ、甘い物を頬張っているクリス猫毛玉へと話題を振った。


「失礼な娘達だな。

 こんな姿になっているが、私はれっきとした天使なのだぞ」


猫耳を起てた銀ニャンが言い返して来る。


「我が主人、悠久の女神ティスの第1天使。

 私の名はクリス。見ての通り、銀翼の天使だ」


えっへんと、首から下の無い頭だけの猫毛玉が胸(?)を張る。


「そ~なんよぉ、ハナちゃん。

 このヘンテコの主から、魔法を授かったんや。

 天使に準ずるほど強力な・・・魔法少女に成れるからって」


パタパタと手を振るミミが、


「その代わりに、女神ティスの依頼を聴かなぁアカン事になったんや」


「へぇ?女神様からの頼み事?」


魔法少女に成れる代償。

ミミが魔拳少女に成れた訳とは?


「おい、ミミっ子。

 部外者に漏らすんじゃない」


銀ニャンが止めるのも無視し、心を許したハナに向けて。


「あたぃが魔法少女に成れたのは、ティス様からの依頼を承諾したからなんや。

 天使に準じた魔力を授かったのも、依頼をこなす為。

 それは・・・とある女神を叩き起こす為なんや」


オッホンと、咳払いして告げたのだが。


「は?女神様が女神を叩き起こす・・・って?」


案の定、話が繋がらなかったみたい。


「えっと?

 ティスとかいう女神様の以来ってのは。

 ミミちゃんに目覚ましになれってことなの?」


「ちゃぅちゃぅ!

 あたぃへ頼んで来た女神とは別の女神を叩き起こすんや」


もう一度パタパタと手を振ったミミが、詳細を教え始める。


「女神ティスは、地上の女神を現界させようと目論んでるんや。

 間も無く訪れてしまう災禍を防ぐ為には、

 眠ったままの女神を呼び戻さんとアカンらしいのや」


眠ったままの女神を?それはどうやって?


「ハナちゃんも聞いたことあらへんか?

 この世界を救った女神がったんを」


「うん、歴史で習ったよね。

 勇者達の中に、女神に昇華した人が居たのを」


その女神になった人って?


「ハナちゃん。

 あたぃに課せられた頼み事って言うんは・・・な」


そこまで話したミミが、すぅっと天井に顔を向ける。

魔法少女が成し遂げなければいけない目的が、途方もなく重い命題だと謂わんばかりに。


「終末戦争の折に消えた女神を・・・」


「まさか・・・消えてしまった過去の女神様を蘇らせるの?」


何処に居るのかも分からない女神を?

一旦消えてしまった者を、如何にして見つけれると言うのか?


消えた・・・そう言ったミミが頭を振った。


「そうやないんやハナちゃん。

 確かに消えてしもうたと思われてたんやけど。

 ティス様が言うたんや、もぅ・・・戻ってきているんやと」


「えッ?!」


消えた筈の女神が・・・帰還している?


「そう・・・ミミっ子が言った通りだ。

 既に理を司る者は、この世界に舞い戻っているのだ」


二人の話を聞いていた銀ニャンが口を挟む。


「この世界から弾き出された女神は、千年の時を越えて帰還した。

 だが、どうしてなのかは分からないが目覚めようとしない。

 なんらかの理由があると思われるが・・・」


「戻ったのなら現れれば良いのに?」


ハナの目的を成就させたいと思ったハナが聞き質すと。


「そうなのだが。

 一体何故なのか、どうして現出を拒んでいるのか。

 それを調べる必要があるのだ」


銀ニャンが難しい表情になって答える。


「関係ないやん。

 要は見つけてぶっ飛ばしたら、目覚めるんとちゃうんか」


腕を撫でるミミが、お気楽に言うのを。


「また、ミミちゃんは~」


ジト目になるハナが窘める。


「話を聞いていたら、そんなに簡単にはことが運ばないみたいだよ?」


「そやろか~?」


ケラケラと笑うミミに対して、ハナは肩を竦めて銀ニャンを観る。


「如何にも。

 ハナっ子の言った通りだぞミミっ子。

 女神が拒んでいるのなら、なかなかに骨が折れる仕事だと思っておけ」


なにせ、相手は女神なのだから・・・と、銀ニャンも窘めるのを。


「の~プレ!

 その為にあたぃはティス様に選ばれたんやし」


ミミはいとも容易く成し遂げれると考えているのか。


「あたぃの前世は、女神に深く関わっていた人みたいやから」


ポンと無い胸を叩いて、自信の程を伺わせる。


「ふぅ~ん。ミミちゃんの前世って、化け物の類だった?」


「・・・そりゃないわぁ~ハナちゃん」


多寡を括ったミミに、ハナが鼻をへし折った。


「兎に角やな。

 あたぃの目的は女神を見つけて叩き起こす事なんや」


「そっかぁ~!じゃぁ、私もお手伝いしなきゃ・・・だよね」


心を許して話してくれたミミに、ハナは協力を惜しまないと言い。


「だって、おっぱい魔法少女のミミちゃんだけじゃぁ心配なんだもん」


「・・・おっぱいは関係ないやろ」


変身すれば、身体つきまでもが変わるミミを揶揄して。


「もしかしたら、私もその・・・大きくなれるかなって」


「・・・無理やし」


魔法少女に成って変身出来たらなぁっと、ハナが言うと。

阿保毛をぴょこんと起てたミミが肩へと手の載せて。


「変身して大人の身体つきになってるんは、ティス様の悪戯やしな」


「え~~~~?!そうだったの」


・・・そうだったのか。

少々悪ふざけが過ぎませんか、悠久の女神様?


「だったら・・・私もティス様に魔法少女にして貰いたいな」


思いっきり瞳を輝かせるハナさんが、憧れるようにミミへと溢す。

いや・・・不純すぎる気がしますが?


「もしも魔法少女に成れたのなら。

 ミミちゃんといつまでも一緒に居られそうなんだもん」


「ハナ・・・ちゃん?!」


その一言に、驚いたような顔になるミミへと。


「ねぇ?二人揃って、魔法少女だったら。

 いつでも、どんな時だって助け合えるでしょ?」


「あ・・・うん。そうやな・・・」


目を輝かせるハナへ、ミミは何と答えて良いのか迷ってしまう。


「でもな、ハナちゃん。

 魔法少女は闘わなきゃアカヘンのやで?」


「ミミちゃんと一緒なら大丈夫でしょ?」


何も知らないハナの、屈託のない笑顔に言葉が詰まる。


「もしも、負けてもうたら・・・死ぬんやで?」


「その時は・・・一緒だよね?」


ハナの紫色の髪が揺れる。屈託のない笑みを湛える紅い瞳が輝く。


「アカン・・・そないなこと言うたら。

 あたぃは・・・ハナちゃんを巻き込んだんを後悔してまぅ」


眼を背けたくなるのを我慢して、


「大好きな子を巻き込んでしもーた」


涙が溢れて来るのを拭いもせずに。


「これが、島田先輩が言うてた魔法少女の宿命なんか。

 大切な人までも巻き込んでしまう、罪科なんか?」


心から自分の軽率さを悔やんでから。


「もし、ハナちゃんが心から望むんやったら。

 魔法少女に成れるかも知れへんよ」


自分が出逢えた奇跡は、誰にでも手に出来る筈だからと。


「そやけど、運命はいつでも幸せを運んで来てくれるとは限らへんのやで」


しかし、奇跡は幸運だけとは限らないと忠告を付け加えるのを忘れはしなかった。


「大丈夫。ミミちゃんと同じなら。

 魔法少女に成って手伝いたいから」


「・・・馬鹿や、ハナちゃんは大馬鹿や」


友を持って初めて気が付けた。

魔法少女に成って初めて、友達の有難さに気付けた。


「ありがとうな、ハナちゃん。

 本気で想ってくれて・・・心から信じてくれて」


魔法少女にハナが成れなくても、その心だけは伝わったから。

友を助けようとする、暖かな絆を感じて。


「うん!魔法少女に成って比べっこするの。

 私とミミちゃんのどっちが、巨乳なのかを」


「・・・そっちかいッ!」


泣いているミミを茶化すハナ。

お道化てみせたのは、大切な人への思い遣りだったのだろうか。




魔砲少女と魔拳少女。


挿絵(By みてみん)


二人に関わる女神。

二人を取り巻く人々の想い。


そして・・・光と闇の異能ちからは何を求めるのか。

明かされ始める美晴ミハル出生の謎。


蒼き珠の中で、運命の歯車は回り続けていた・・・

やはりと言いますか。

やっぱり損な子の遺伝子を引き継いでいるようですねW


こうして美晴は一時の幸せを掴めたようですけど・・・


これにて第2章もお終い。

次回からは、物語の転換点となった、あの日に焦点を向けます。

それは今より17年前の事。

つまりは美晴が生を受けた日。

生誕の秘密とは?なぜ美晴は聖なる異能と闇の力を持ったのか?


全てを知る人物が、次章のキーマンとなります。

その人の名は・・・


次回 第3章 夢幻 時の静寂に棲む者 ACt 1孫と娘

美晴は道場で祖母美雪と会っていた・・・


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