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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード 7 新たなる運命 新しき希望 第2章 でぇ~とぉ?あ?らいヴ? 魔法少女は清く美しく!
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Act10 レストラン<ラミルの館>にて

二人は<フェアリア>郷土料理店ラミルの館へと入っていった。

でぇと定番のディナーと洒落込む。


内装は王宮風の華麗さを誇り、訪れた者を魅了する。

料理は美晴を、幼き日の思い出に更けさせた。


・・・そして。

三ツ星レストラン<ラミルの館>にて・・・


星空が望める席で、思いもしなかった晩餐に興じている。


初めは身分不相応だと思って身を固くしていた美晴だったが、テーブルに出された料理の品々を観て。


「あ・・・これも。

 みんなフェアリアでしか食べれないモノばかり」


異国料理に目を輝かせて。


「懐かしいなぁ。小さな時の記憶が蘇るみたい」


フェアリア国で過ごした、幼き日に想いを巡らせていた。


「美晴はフェアリア生まれだって聴いてたから。

 ここの料理が合ってるって、考えたんだよ」


懐かしさに微笑む美晴を観て、気を効かせたシキが教える。


「うん、ありがとうシキ君。

 とっても素敵。とっても嬉しいよ」


オードブルにフォークを伸ばすシキに感謝を告げて。


「あた・・・私。

 今日みたいな誕生日プレゼント。

 産まれて初めて・・・」


嬉しくて、感動して。


「生きていて良かったって・・・思えたから」


生きている証だとも思えた。


「二年前、シキ君は魂を半ば迄消耗させてまで蘇らせてくれた。

 もし、禁忌の魔法で黄泉返らせて貰えなければ・・・私は」


今、この場には居られなかった・・・そう言いたかったのだが。


「君は死なない。

 いいや、死なせたりはしないさ、この俺が」


フォークを置いたシキが応える。


「俺は美晴に逢う為に産まれて来たと考えてるんだ。

 もしも美晴が居なくなるのなら、この世界も無くなってしまえば良いとも思えるんだ」


大袈裟な喩えではないことは、シキの真摯な声で分かる。


「あの時俺は、とある人から頼まれて美晴を追いかけていたんだ。

 悪い奴等に狙われているのを救って貰いたいと乞われて。

 だけど・・・間に合わなかったんだ」


「そう・・・前にも言ってたよね」


二年前。

交通事故を装った殺傷事件が美晴を襲った。


マリアとの最後の別れを告げに向かった美晴。

そこへ魔に属した者の手が忍び寄ったのだ。


「運転手は既に発作で亡くなっていたらしい。

 アクセルを踏み込んだ状態のままで・・・そして」


「私を・・・撥ねた」


コクリと頷くシキが。


「悪魔の手先によって・・・魔法少女は殺されかけた」


紅い瞳を曇らせて、記憶の中の惨劇を語る。


フロントガラスの破片が飛び散った路面で、一人の少女が横たわった姿。

目にした惨劇が信じ切れず泣き叫ぶ、連れの少女二人を押し退けて。


「あの時、どうして俺が闇の属性を持っていたのかが分かった気がしたんだ。

 大切な美晴を真の闇に奪われずに済ませるには、俺の異能が必要だったから」


「大切な・・・あたし・・・」


何気なく告げられた一言が、美晴の心に刻まれる。


「俺の前に現れた人が何故、預言できたのかは知らない。

 だけど、あの場に居られたのは不幸中の幸いだったのかもしれない」


「とある人って言ったけど。それって誰なの?」


美晴が事故に遭う事を知っていた?

不幸が舞い降りて来るのを予知していた?


「俺も善くは知り得ないんだけど。

 彼女は女神の端くれだって・・・自嘲気味に言ってたよ」


「女神?!まさか・・・本物なの?」


女神と聴いて、美晴が思い描いたのは。


「まさかとは思うけど。

 その人って、あたしと同じ名前を名乗らなかった?」


叔母に当たる人を。

失われたままの女神が現れたのかと。


だが、シキは首を振って応える。


「俺も。そうかと思って質したんだけど。

 残念ながら、彼女は薄く笑って首を振ったんだよ」


肩を竦めたシキが、美晴へ違うと教える。


「違ったんだ・・・

 だったら、その人って?」


どんな姿だった?

どんな顔形?髪の色は?瞳の色は?


美晴は訊きたい事があり過ぎて言葉に詰まる。


・・・と、その時。


「お客様。

 歓談中の処、誠に申し訳ございません」


いつの間に脇に来ていたのか、支配人が慇懃に話しかけて。


「当店の庭先にて、不穏な輩達が暴れているようなのです。

 御見苦しき光景を目にされましたのなら、何卒ご容赦くださいませ」


頭を下げ乍ら、不測の事態を知らせて来た。


「え?!」


不穏な輩と聴いて、美晴が窓辺に目を向けるが。


「何も無いじゃないですか?」


木々に囲まれた庭には何も見当たらなかった。


「はい。この店の中からは見ることはないでしょう。

 なにせ、当店は結界に守られております故」


「はいぃいい?」


支配人は事も無げに言うが、結界に守られたレストランなんて聞いた事も無かったから。


「結界だなんて・・・冗談でしょ?」


「いえ。我が<ラミルの館>は魔力防護に長けてもおりますので」


支配人から教えられた美晴は、口をあんぐりと開けて見返すのがやっとで。


「み、三ツ星レストランってば、畏るべし」


変な処に感心してしまう。

・・・いや、そこに三ツ星は関係ないと思う。


「で、支配人さん。

 不穏な輩というのは?」


一方、シキは魔法少女隊の隊長として訊ね直す。


「はい、魔物と魔法少女・・・ですが」


「えッ?!」

「ま、魔法少女?!」


思わず二人の腰が浮く。

だが、教えた支配人は動揺すら見せずに。


「ご安心くださいませ。

 如何程暴れようとも、当店には係わりございませんので。

 周り中に被害が及ぼうとも、店内に居る限りは安全を保障いたしますから」


「あ・・・あはは。ここって要塞だったんだ?」


支配人の落ち着き方から、嘘では無いとも思えるのだが。


「でも、実体化しているのなら物的損害が・・・」


シキの心配するように、物理攻撃には結界も効き目が無い筈。


「はい。相手が余程の者ならば・・・ですが。

 この館を設計されたラミル・オーナーが太鼓判を押されたのでご安心を」


言われた美晴が、窓辺から観える壁の厚さに気付く。

その分厚さときたら、まるで城壁の如き。


「三ツ星レストラン・・・畏るべし」


ピョンとアホ毛を跳ね、美晴が繰り返した。

・・・だから、そこに三ツ星は関係ないって(突っ込ませて貰う)w



「でも。魔法少女って誰なんだろうね?」


「そうだな、隊の方からは出撃してないよな?」


支配人が離れた後、二人は小声で交し合う。

魔物が出没したと言うのが本当なら、魔法少女隊に出撃命令が下されてもおかしくない。


「困ったな、折角のディナーなのに」


「そうだねぇ、シキ隊長」


本気で困り顔のシキに対して、美晴は悪戯顔で応える。

先程まで交わし合っていた重い身の上話を中断出来て、少しほっとしてもいたから。


「どうして司令達は呼び出さないんだろう?」


ポケットを弄るシキが、焦っていると。


「ルマお母さんは気を効かせてくれてるんじゃないかな」


羊の肉を口に運んで、


「こんなに美味しいお料理なんだもん。

 堪能させてくれなきゃ・・・だよ?」


魔物は、その魔法少女に任せておけばって意味を含めて。


「相手が手強いのなら、呼び出しがかかる筈だもん」


戦っている魔法少女には申し訳ないけど、今夜だけは。


「だ・か・ら!

 三ツ星レストランの夜宴を楽しまなきゃ・・・だよ♪」


フォークを口に運んでウィンクする美晴。

店の外で闘っているであろう魔法少女に詫びるでもなく。


「美味し~ぃ」


故郷の味に舌鼓を打つ。


「はぁ・・・美晴って奴は。

 よし、それなら俺も・・・堪能してやるか!」


楽しそうに食べ続ける美晴に毒気を抜かれたシキも、ナイフとフォークを持って。


「それにしてもフェアリアって国は、摩訶不思議だよなぁ」


「そ~!だって、魔砲少女発祥の地なんだから」


にこやかに笑う、美晴に癒されていた。




・・・んで?



「あわわわわ~ッ?!」


突如現れた怪異に。


「に、逃げようよミミちゃん!」


腰を抜かしたハナが叫ぶ。

だが、ハナを後ろに隠したミミは。


「やっぱりやな。これがあんの人等が追いかけていた相手ってか?」


化け物を前にして・・・細く笑んでいた。


「何言ってるのよぉ~!逃げようよぉ」


平然と化け物に対峙しているミミに、脅えたハナが叫ぶが。


挿絵(By みてみん)


「大丈夫や、ハナちゃん。

 こいつはあたぃがぶっ飛ばしてやるさかいにな!」


ハナに背を向けたまま、ミミが吠える。


「ミハルを追いかければ、魔物にぶち当たるとは思うたけど。

 こうもあっさり的中するやなんて・・・やっぱりチャンスやったんやな!」


左耳に着けていた緑のイヤリングへ手を伸ばして。


「あたぃの本当の姿を・・・魅せちゃるで!」


魔物を向こうに回して、態勢を整えてから。


「ハナちゃんは少しだけ隠れていてや?」


腰砕けの友達を顧みて。


「隠れるって?何をする気なのよミミちゃん?!」


振り向かれたハナが訊き咎めるのを、


「何をって?

 知れたこと。こいつを魔法でぶっ飛ばすだけや!」


イヤリングを振りかざしたミミが。


変身トランスフォーメーション!」


魔法玉に発動を命じる!



 ピカッ!!


翠の光がイヤリングから放たれて。


「きゃぁッ?」


眩き光で、ハナの視界が奪われる。


それは数秒も経たない、ほんの一瞬。

奪われた視力が元に戻った時、


「・・・え?」


ミミの居た場所に、<彼女>が仁王立ちになっていた。

緑の髪・・・見知らぬ衣装を纏う・・・


「魔拳少女、只今推参!」


ハナの知らない、魔法少女が現れた。


「だ、誰?え・・・っとミミちゃんは?」


逃げ出すのも忘れて訊いていた。


「ミミ・・・ちゃんなの?」


黒のジャージ姿だったミミは居ない。

白い魔法衣姿の少女が佇んでいる・・・だけ。


両手に填めたグローブを握り締める魔拳少女が、僅かにハナへと顔を向けると。


「そや。見られてしもうたなハナちゃんに」


翠の瞳で頷く。


「嘘・・・嘘。

 だって、ミミちゃんなら・・・」


「あたぃなら・・・何?」


怯える様な顔で質されたミミが訊き直すと。


「ミミちゃんなら・・・その。

 そんなにおっぱい大きくないもん!」


「がくッ!」


ハナの一言につんのめる魔拳少女のミミ。


「あなた!ミミちゃんを騙るのは辞めなさいよね」


「あ~~~~ホンマ。ハナちゃんってば、天然~ん」


真剣に認めようとしないハナに、ミミは笑うしかない。


「そやけど、そんなハナちゃんも大好きやで」


笑うミミは、背後に迫る魔物へと向き直り。


「その大事な友達を怯えさせたお前を。

 あたぃは許さへんさかいに・・・な!」


びしりと右手の人差し指でポーズを決めて。


「あたぃの怒りを・・・受けろや、おらぁ!」


挿絵(By みてみん)


いきなり奥義を発動させた。






音声が途切れてから一時間が経過しようとしている。



「司令?

 一体何が起きたノラか?」


市内監視モニターを見守るノーラが質すが。


「・・・・」


ルマ司令は眼を閉じたまま答えはしなかった。


「魔物発現状況からして、ミハルっち達に接触したのではないノラか?」


ポチポチとコンソールをタッチして、状況の把握に努めようとするノーラだが。


「魔物は野良の魔法少女に駆逐されたようだノラが?」


魔物の反応がロストされた状況を鑑み、対処する必要は無いと判断したようだ。


「それなら、ミハルっち達は?

 何時になれば仕込まれた盗聴器が作動するノラ?」


イライラとタッチパネルを操作するローラの後ろで、黙したまま手を組むルマ司令。


「「・・・チッ、これほどの結界を仕込んであるとは。

  流石ラミルさんの造った店だけのことはあるわね」」


口には出さないが、ルマ司令も内心臍を噛んでいるみたい。

と、よく見れば目を閉じているのではなくて?


「「イヤリング状の盗聴器だけではなくて。

  鞄に仕込んだモニターも使えなくされたか」」


画面上が砂嵐になっているモニターへ、薄く開いた眼を向けているようだ。


「ルマ司令。デートをライブする作戦は失敗したノラ」


「・・・まだ。終わった訳ではない」


ノーラに失敗と断じられた時、ルマが口を開いた。


「最期の盛り上がりだけは・・・断じて見守らねばならない」


「・・・諦めの悪い母だノラ」


魔法少女隊司令部で。

肩を竦めたノーラが、大きなため息を吐いていた。





でも。

確かに<まだ>だった。


ルマの言った通り。


まだ、美晴は貰っていなかったから。


誕生日のプレゼントってモノを・・・

店の外では、魔拳少女のミミが戦い。

店の中では、魔砲の少女がディナーを楽しんでいた。


でぇとの目的は、美晴の誕生日プレゼントを手に入れるのが主眼だった筈。

ディナーを終えたら、もう一度買い物に出かけるのか?

それとも、もう十分だからと諦めてしまうのか?

シキはしきりにポケットを弄っているようだが?

・・・さて。どうなるのだろう?


次回 Act 11 想いの証

2人の絆。幼馴染の一線を越えられるのは<プレゼント>に懸かっている?!

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