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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード 7 新たなる運命 新しき希望 第2章 でぇ~とぉ?あ?らいヴ? 魔法少女は清く美しく!
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Act 8 誰が為の優しさ

ざ・・・でぇと。


今回から。

美晴の大一番が始まるようです・・・ね??

早めに着いて、待っていようと考えた。

約束の場所はモールのエントランス。


目と鼻の先・・・だったのだけど。


行き交う人の話し声に紛れて・・・


「え?!」


魔法少女の耳に飛びこんで来たのは?


「ひっくひっく・・・え~ん」


幼い泣き声。


「男の子が泣いてる声?」


咄嗟に周りを見回してしまうのは、魔法少女というよりは美晴の優しさからか。


「ひっくひっく」


しゃくり上げて泣いている男の子。

周りには親らしい姿は見受けられない。


「迷子かな?」


モールの入り口に造られたアーチに寄りかかって男の子が泣いていた。


泣いている男の子を誰も気にも留めないのか、知らぬ振りを決め込んでいるのか。

声をかけることもせずに通り過ぎて行くだけ。


「どうしよう?」


いつもの美晴なら見過ごすなんて出来っこない。

でも、今は待ち合わせの約束があるから。


「あぅ~~。どうして誰も声をかけてあげないの」


泣いてる男の子が可哀想で、観て見ぬ振りをする大人達に憤慨してしまう。


エントランスと男の子を交互に観ては、じれったくなって。


「あーもぅ!あたしってば、どうしてこうも人が良いんだろ」


ちらりと腕時計の針に目を配ってから。


「まだ約束までには間に合うよね」


16時まで、残り15分。


「男の子を助ける為だもん」


自分に納得させて、歩み始めた。





「ひっく・・・ひっく・・・」


幼い男の子の眼に、セーター姿のお姉さんが写り込む。

しゃがんで自分との目線を併せようとする髪の長いお姉さんが。


「どうしたの?お姉さんに訳を話してみて」


優しい声で訊いて来た。


「ひっく・・・ママが居なくなっちゃった」


はぐれてしまった心細さで泣いている男の子。


「そっか。お母さんとここで?」


「うん」


小首を傾げて訊いて来るお姉さんに、男の子は素直に応じた。


「じゃぁ、お姉ちゃんが一緒に探してあげる」


「ホント?」


不安気な顔に、パッと笑みが溢れる。


「ホント。だからね、お名前を教えてくれないかな?」


「・・・ママが、知らない人に名前を教えちゃいけないって言ってた」


用心の為に親が吹き込んだのだろうか。

幼い子をかどわかされるのを防ぐ為なのかは知らないが。


「ふぅ。そうだね、お姉ちゃんも名乗るから。

 お友達になってみない?それなら名前も教えてくれるでしょ?」


「お友達?うん、わかった」


屈みこんだお姉さんが、男の子の手を取って。


「あたしは美晴。魔法少女のミハルっていうんだよ」


「魔法・・・少女の、ミハルお姉ちゃん?」


右手に填めている蒼綺麗な石の付いたブレスレットが、淡く光る。


「そう。あたしは君を守る為にやってきた魔法使いなんだ」


長い黒髪のお姉さんが、微笑みながら応えると。



 ポゥ・・・



一瞬髪の色が蒼く染まって。


「大丈夫だよ、怖がらなくて良いの」


「うん、怖くなんてないよ」


目を丸くしながらも、男の子はミハルに微笑み返した。


「ボクは、ちっちゃんって呼ばれてるんだ。

 小さな千紘ちひろだから・・・ちっちゃんだって」


「そう。千紘君って言うんだね」


ミハルお姉ちゃんはちっちゃんに笑って確かめる。


「あたしも。小さな時はコハルって呼ばれてたんだよ。

 ちっちゃなミハルだから・・・同じだね」


「じゃぁ、お友達だよね」


コクンと頷いたミハルお姉ちゃんが、ちっちゃんの手を掴んだまま立ち上がると。


「それじゃぁちっちゃん。ママを呼んであげるからね」


「うん!」


男の子は掴まれた手をギュッと握り返して頷いた。



一般の人の前では魔法を行使するのは禁止されていた。

でも、男の子の心を解きほぐす為に、美晴は敢えて使ったのだ。


ー はぐれてからまだそんなに時間は経っていないみたい。

  それなら、大きな声で呼びかければちっちゃんのママにも聞こえる筈よね!


魔法によって分かり得たのは、男の子の母親が近くに居るということ。

それと、美晴を信じてくれた千紘の心。


ー 応えてあげなきゃ。ちっちゃんに人の温かさを教えてあげなきゃ!


周りの大人達が無視を決め込むのを歯痒く想っていた美晴だからこそ。


 すぅ・・・


一呼吸いれて。


「ちっちゃんのお母さぁーん!ここですよぉー!」


思いっきり。


「千紘君は此処に居ますよぉーっ!」


左手でちっちゃんの手を掴んだまま、右手を振り上げて叫んでいた。


ー とどけ!ちっちゃんのママの所まで!


右手に填めた魔法石に願いを込めて。

魔法を使って、声を響かせた。


「ちっちゃんのお母さぁ~ん!ここですよぉ~」


周りを囲む大人達が、美晴の声に振り返る。


・・・と。


「あ?!ママだ」


ちっちゃんが見つけたのは、駆け寄って来る女性の姿。


「千紘ッ!どこに行ってたのよ」


駆け寄って来た栗毛の女性が怒鳴り声をあげる。


「だって・・・ごめんなさい」


美晴の手を掴んだまま、ちっちゃんが謝る。


「ホントにもぅ!この子ったら・・・」


悪態を吐きながら駆け寄って来たちっちゃんの母親が、


「心配したんだから。誘拐でもされたかと思ったのよ」


ちっちゃんをギュッと抱き締めると。


「ありがとうございます、ありがとうございました」


言葉の限りを尽くして、美晴へ礼を述べた。


ー 良かった。良かったね千紘君!


親子の抱負を微笑ましく見ていた美晴が、


「いいえ、あたしは別に」


お礼を言われるような事はしていないと謙遜すると。


「ミハルお姉ちゃんとボクは、お友達なんだからね」


母に抱かれた千紘が教える。


「だからぁ、お名前を教え合ったの」


「あら、そうだったのね」


知らない相手に名前を教えたのを気にしていたのだろうか。

母に後で怒られるのを怯えたのだろうと思えたから。


「そうなんです、千紘君のお母さん。

 あたし達って、友達同士になったんです」


ちっちゃんにウィンクをした美晴が。


「ですから、他人を信じるなって教えないでください。

 教えるのなら、心根の悪い大人には注意しなさいって・・・」


周りに居た無視を決め込んだ大人達を睨んでから。


「手を指し伸ばしてくれる人は、必ず居るから。

 ピンチになった時に助けに現れる人が居るからって」


スッと屈みこんで、ちっちゃんの目線に併せてから。


「お友達になってくれる人が、必ず現れてくれるからね」


微笑んで千紘君へと手を差し出した。


「うん!お友達なら助け合うんだよね」


「そう!ちっちゃんになら出来るよね」


小さな手が、美晴の手を取る。

二人の握手を観て、母親も頷いてくれた。


「じゃぁ、あたしはこれで」


ちっちゃんを母親の許へ還せた美晴は、会釈をしてその場を辞した。


「ありがとうミハルお姉ちゃん!」


ちっちゃんの声に、軽く手を挙げて応える。


「千紘・・・ううん、ちっちゃん。

 あのお姉さんってミハルって名乗ったの?」


耳ざとく母親が訊き質すと、


「そうだよ。魔法少女のミハルって言ったもん」


「魔法・・・魔法少女の?

 まさか?!終末戦争の女神と同じ名前の・・・」


千紘の母親が眼を見開いて呟くのを、ちっちゃんは不思議そうな面持ちで見上げる。


「ママも教科書ぐらいでしか知らないけど。

 あの人は、いいえ。

 今のは、人を守る為に亡くなられた英雄・・・女神なのかもしれない」


「女神様だったの?」


人混みの中に消えて行った少女の姿を神々しく思えた母親が。


「そうよちっちゃん。きっと・・・女神様だったのよ」


幼い我が子を抱き寄せて、そう信じることに決めた。





腕時計を観る迄は、親子の情に心が緩んでいた。


だが?



「どっひぃいいいぃ~っ?」


エントランスに入って、悲鳴を上げてしまった。


「もぅ、20分も過ぎっちゃってるぅーッ?!」


迷子を助けるのに、半時も費やしてしまったのは迂闊だったと言うべきか。


「シ、シキ君・・・待っててくれてるかな?」


慌てる、慌てる。


「お願い!神様ぁ~仏様ぁ~~~」


エントランスを探し廻して。


「嫌ぁあああああ~っ?!」


見知ったシキの姿が見当たらない事に絶叫してしまう。


「あ。あ”あ”あ”あ”(冷汗)」


真っ青になる・・・損過ぎる子。


「悪夢だ・・・これは悪夢なんだ」


目の前が真っ暗になる瞬間・・・とは、こんな時を指すのか。


「どうして?どうしてなのよぉ~?!」


遅刻する筈では無かったのに。

十分過ぎる程の余裕があった筈だったのに・・・


 がっくり


しょげかえった美晴が肩を落とす。


「ごめんなさい・・・シキ君」


期待に胸を膨らましてきたのが、余計に情けなく思えた。


「約束・・・守れなかったよ」


行き交う人の中で、ポツンと立ち尽くす。


「う・・・ひっく・・・うぇ・・・」


涙が溢れて来るのを耐えることが出来なくて。

迷子の幼子みたいに、泣き崩れてしまいそう。


エントランスには何人かの待合の人が佇んでいた。

その誰もが数分もせずに、待ち人が現れてモールの中へと消えて行く。


美晴がエントランスに着いて、既に5分以上が経ってしまった。


「もぅ・・・帰ろうかな」


遅刻してしまった後悔。

時間に正確なシキなら、遅刻して来る筈が無いことも分っていた。


「明日・・・謝ろう」


立ち尽くしていても、奇跡は起きそうにない。

このまま待っていたって、どうしようもないことぐらいは理解出来た。

だから・・・


「死んじゃいたいくらい・・・滅入っちゃう」


これが悪夢なら覚めて欲しいと願って。


「きっと・・・怒ってるだろうなぁシキ君」


折角デートへと誘ってくれたのに、ドタキャンしてしまったなんて思われるのは辛過ぎる。


「訳を話したって・・・言い訳にしかならないよ」


重い足取りでエントランスを後にしようとした。

トボトボと・・・独りだけで帰ろうとしたのだったが。


 コツコツコツ・・・


革靴の音が歩み寄って来た。


「どこへ行くつもりですか?」


背後からの声が、どことなく含み笑いにも聞こえて。


「帰るんですッ!」


素っ気なく・・・いや、苛立たしく答えてしまう。


「誰かと待ち合わせしていたのではありませんか?」


「あなたには関係ないでしょッ!」


頭の芯がボゥッとしていて、正常な判断が出来なくなっている・・・のに。


「関係がない?ある筈だけどね」


言い切られた美晴が、相手を睨む為に振り返る。


「え?」


上背のある男性が見下ろしていた。


「俺に用が無いのかい?」


銀髪で頭一つ分背の高くて、サングラスをかけたスーツ姿の・・・


「え?え”え”え”・・・ええーッ?!」


声を聴いたら・・・頭の芯がシャンとしたから分かった。


さっきからずっとエントランスに居た人のことが。

美晴が来る前からずっと・・・佇んでいたのも。


「なんだよ、俺だって分からなかったのかい?」


スッとサングラスを外したのは。


「シ?シ、シ、シ・・・シキ君~~~っ?」


コクンと頷かれて。


「迷子の子を助けてたのも。

 随分前から来ていたのだって観ていたんだけどなぁ」


「ひぃやあああぁ?」


眼がグルグル回る。

真っ赤になった頬の熱さも気付けない。


「だからさ。

 ちょっと、意地悪したくなった・・・ごめんよ」


「ほぇえええぇ?」


いつもの格好とは違うだけで気が付けなかった。

見慣れた普段着とは違う、大人なシキに気付けなかったのは落ち度と云えるのだろうか。


「ほら!俺達も行こう」


「あ?え?!うん」


ドクンと心臓が高鳴るのを、美晴は押さえられずに答えた。


「あ、あの!シキ君。遅れてごめんなさい」


謝らずにはいられなかった美晴が頭を下げる。


「あ?今言ったじゃないか。気にしてないよ」


「でも!あたし・・・遅れちゃったのは事実だし」


モジモジと俯く美晴。

さっきまで泣きそうになっていた顔には赤味が差していたのだが。


「ふぅ・・・それじゃぁ・・・」


溜息とも笑みとも採れる声を出したシキが、スッと手を指し伸ばして。


「え?!ほぇ?」


美晴の手を掴むと。


「ほら!行くよ」


挿絵(By みてみん)


少し照れて、明後日の方を向きながら歩き出した。


「あ?あ・・・はい」


初めてのデート。

初めて二人だけになった時間が始る。


それは幼馴染な二人にとって、忘れ得ぬ日の幕開けとなった・・・

紆余曲折の末。


どうやらでぇとが始まるようです。

まぁ、損な子にしては上出来ではないでしょうか?


さて。

この後は?


次回 Act 9 扉を開けると、そこは・・・

雪国ではない事だけは確か。波乱含みのでぇとだと想ってましたけど?

次回は<イチャイチャラブラブ>な、展開に・・・なる訳が無い?!

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