Act 5 始まる作戦?!
ルマの一言で、気絶させられた美晴。
約束を翌日に控えた朝。
ポワンと寝ぼけた顔で授業を受ける羽目になっていたのだが・・・
ー 金曜日 5時限目終了 ー
怪訝な顔つきのノーラが呟く。
「やはり・・・何かあるノラ」
傍らのローラも、
「間違いないね」
頷きながら前の席を観る。
二人が見詰める先に居るのは。
ぼぉけぇ~~~~
心は何処にあるのか。
虚ろな表情の・・・
「ミハルっち?今日は特別寝ぼけてたねぇ~」
「最近にしては珍しいじゃない?」
目の下に隈を造っている美晴。
「ほにゃぁ~・・・そう?そうかなぁ~」
歯切れの悪い声で、クラスメートに応える顔は。
「寝不足・・・って、もんじゃないね?」
「どうしたのよ。まるで悪夢でも観たみたいよ?」
半ば机に突っ伏してる美晴は、疲れ切っているかのように見て取れたようだ。
「むぅ?まさか・・・また夢魔に襲われたノラか?」
「そうかなぁ?でも昨晩は平穏だった筈だよ?」
魔法少女隊員の二人は、昨夜は魔物の出現が無かったのを思い出して。
「確かに。では、ミハルっちは何故疲れ切ったノラか?」
「いや。疲れ方が違うと思うんだけど?」
二人の視線は、美晴の表情に注がれる。
ぼけぇ~~~ポワン・・・
ぼやりとした顔を見せているが、ふとした瞬間には。
「ね?目尻が下がるんだけど?」
「うぬッ?!なにやら・・・楽し気にも観えるノラが?」
美晴の脳裏に何が映っているのか。
二人には皆目見当が付かなかったが。
「詳しいことは、今夜の当直中に訊き質すノラ」
「そうだね。IMSで聴く方が良いかもね」
ノーラは当直だったから、夜勤中にこっそり訊くのが良いとローラも頷く。
「ついでに、宿題も写させるノラ」
「・・・それは。駄目でしょ」
けらけらと笑うノーラに、ローラがジト目で答えた。
ー 金曜 夜 午後 6:00 ー
寝不足・・・一言で言えば。
「はぁ・・・まったく。
こうなったのも、元を言えばルマお母さんの所為だからね」
ぶつぶつ愚痴を溢しながら魔法少女隊員スーツに着替える。
「プロポーズなんて言うから。
思いっきり動揺しちゃったじゃない」
上着に袖を通し、
「そんなことにはなる訳がないじゃない・・・の」
ネクタイリボンを結わえて。
「なる訳が・・・無い筈・・・だよね?」
父マモルと母ルマとの馴初めを聞かされ、どうしても想像が幅を利かせる。
「指輪を・・・填めて貰って・・・それで・・・その」
脳裏に映し出されるのは、シキから聴かされる一言。
「「俺と・・・永遠に。俺の傍に居てくれないか?」」
・・・ぽわん・・・
「それって・・・断れないから・・・」
真摯な顔で迫るシキ。
「「だったら・・・良いね?美晴・・・」」
瞼を閉じて行くシキ。
「あ・・・はい・・・」
快諾した自分に・・・シキが重なる。
/////真っ赤っか/////
「それって・・・・きゃぁ~~~~」
ぶんぶん頭を振り、身悶える。
「婚約だよね婚約ッ!」
真っ赤な顔で身悶える美晴・・・に。
「蒟蒻が欲しいノラか?」
ジト目のノーラが訊いて来た。
「どっひぃいいぃ~ッ?!ノーラさん居たのッ?」
「ミハルっちがあんまり遅いから観て来いって、ルマ司令が命じたノラ」
ロッカールームの壁かけ時計の針は、6時15分を指していた。
「遅刻ノラぞ?」
「どっひゃぁ~~~ッ?!」
ジト目のノーラが、遅刻を宣言してから。
「何を考えてるのかは知らないが、隊に迷惑をかけないようにノラ」
「ひぃ~ん!すみませぇん」
隊員規則に反しないようにと忠告した。
「どうしたノラか?いつものミハルっちとは別人のようだノラぞ?」
「そ、そ、そ、そんなことは無いよぉ~」
あからさまに動揺する美晴に一瞥をかけたローラが。
「怪しいノラ」
ぼそりと一言溢した。
・・・指令室・・・
「す~す~・・・むにゃむにゃ・・・すぴ~」
「・・・・・」
警戒用のモニターの前で。
「こんな時間に寝ちゃったら。夜中に寝直せないんじゃなかろうか?」
「・・・ですね、ノラ」
夜警当直配置の美晴が舟を漕いでいる。
それを観ているのは。
「司令。ミハルっち・・・いや、美晴2尉は昨晩?」
「ええ、そう。熟睡出来なかったようよノーラ3尉」
ルマ司令が微笑みながら、ノーラの質問に答える。
「熟睡・・・じゃぁ寝ることは寝たノラですか?」
「いいえ。気絶しちゃったのよね」
肩を竦めてみせるルマに、ノーラは口をアングリと開けるだけ。
「ちょっと・・・脅かしたら・・・ねぇ?」
「ねぇ?・・・じゃぁ無いノラッ!!」
気絶させたのが司令だと分かり、ノーラが憤慨する。
「なにをやってるノラ!親子でぇ!」
「いや・・・これはシタリ!」
ペチリとおでこを一叩きしたルマ司令が。
「揶揄うつもりは・・・あったわ。
だけど、親だから・・・心配しただけなのよ」
「揶揄うつもりはって・・・親だから?なんなノラか、それは?」
フッと笑みを途絶えさせたルマに、ノーラが真剣に訊いた。
「フフフ・・・彼が本当に貰ってくれる気なのかをね」
「彼?それに貰うとは?」
意味不明のワードを繰り返し、ルマを促そうとした。
「ん~~~。それは明日のお楽しみよ」
「ガクッ」
年嵩の司令に上げ足を取られたノーラがつんのめる。
「まぁ・・・私も気になるのは本当。
だから、明日は・・・」
「明日に何があると言うノラか?!」
ずっこけそうになった身体を持ち直し、次の言葉に期待する。
「明日は・・・魔法少女隊始まって以来の作戦を展開する・・・かもよ?」
「なんですとッ?!それは一大事ではないノラか?」
司令からの予告で、ノーラがいきり立つと。
「そう・・・我が隊始まって以来の大胆な作戦」
「ご・・・ごくり」
ルマが手を組んでノーラに知らせるのは?
「その作戦名は・・・」
「大作戦名は?」
一呼吸いれたルマ司令が、ちらりと眠る美晴を観てから。
「その名も・・・デート・ア・ライブ!」
「なッ?!デットォァライブ?!
・・・へ?今なんと云ったノラ?」
聞き違いか。はたまた言い間違いか?
「否。間違っていないわよ。
デートを実況監視する・・・こっそりとね」
「・・・は?」
眼が点状態のノーラ。
対するルマ司令は大真面目。
「明日は・・・美晴祭りの開催よぉ~」
「この・・・馬鹿親あって、この損な娘ありきなり・・・ノラか」
勝手に盛り上がるルマに悪態を吐くノーラ。
「成功か、はたまた惨敗か。
こっそり全てを見届けてあげるわ!あ~はっはっはっ!」
「・・・すでに悪魔と化してるノラ」
呆れるノーラに、盛り上がるルマ。
いや、全く以って・・・ケシカラン。
「すぴぃ~~~にゃはは、シキくぅ~ん・・・ヘラヘラ」
で。
当人は・・・爆睡中だったりW
ー金曜 午後 8時過ぎ ー
帝都学園の寄宿舎で・・・
コンコン・・・
ノック音が聞こえた。
「ねぇミミちゃん。入っても良い?」
声の主は隣部屋の華らしいが。
「あっと・・・ちょっとだけ待ってや」
不意にかけられた声に、ミミは慌てて銀ニャンを元のイヤリングへ戻そうとする。
「ほら、銀ニャン。チョコは後で食べれば良いやろ?」
「もにゅもにゅ・・・仕方ない。残しておくんだぞ」
モフモフの猫の姿になっている銀ニャンをイヤリングへと戻すには。
「分かってるって」
納得させることと・・・
「リターン!」
形を変える呪文を唱えなければいけない。
ボムッ!
謎な煙を上げて、猫の身体がイヤリングへと変わる。
「まったく・・・世話のかかる人やなぁ」
拾い上げたイヤリングを左耳に着けると、ミミはドアの鍵を開けた。
「ごめんやで。ちょっと着けるのに手間が・・・」
詫びがてら、ミミがイヤリングを着けるのに手間取ったことを謝ると。
ドアの外に居るハナが上から下まで見詰めてから。
「あ?そ、そっかぁ~。着替え途中だったんだ?」
シャツとパンツしか着ていないミミの姿に、苦笑いを浮かべる。
「あ?いやその・・・着替えてなんかおらへんけど。変なんか?」
いつも自室の中ではシャツにパンツだけの姿で過ごしていたミミが、逆に訊き返すと。
「え?いやあの・・・リラックスしてたんだね」
ちょっとびっくりしたようにハナが笑う。
「ま。そんな処やな。
で?話ってのはなんなんや?」
立ち話もなんだから・・・と。
手招きして部屋の中へ招き入れる。
「うん・・・明日なんだけど」
「明日?」
制服のシャツとスカート姿のハナを部屋に招き入れ、座るように促してから。
「明日って、土曜日やけど。それがなんかあるんか?」
「明日は午前だけの授業だよね」
振られたミミが怪訝な顔で聴き直す。
「そやけど?」
「お昼からは自由時間でしょ?ミミちゃんは予定在るのかな?」
少し上目遣いにミミを観るハナ。
訊いているのは明日の午後に用件があるらしいことは訊き直す迄も無い。
「いんや。特になんもないけど?」
そう答えるミミのイヤリングから、ちょっと待てと忠告が入る。
「「魔物が出没するかも知れん。退魔に差し障りがあるようなら断れ」」
「そんなん分かっとる」
ハナに聞こえない位の声で応じるミミ。
「もしも魔物が出たのなら、即座に向かえばええやろ」
銀ニャンに応え、何食わぬ顔でハナへと。
「あたぃに何をして欲しいんや?」
明日の午後にどうして欲しいのかと訊き直した。
「うん、あのねミミちゃん。
買い物に付き合って欲しいんだよ」
「買いもん~?」
モジモジと上目遣いに観て来るハナが誘って来たのは。
「私独りじゃぁ、心細くって」
「なんや?大層なモノでも買うんか?」
心細くなるくらいの金額の物か、はたまた重要な物なのかと思い込んだミミが訊けば。
「あ・・・の。普段着を・・・選ぶのを手伝って」
「はぃ?普段に着る服ぅ~ぅッ?」
驚いた様に声に出すと、言い出しっぺのハナが俯く。
「私って、服選びに自信がないんだ」
「あ・・・そ?」
あっけに取られるミミに、益々ハナが縮こまる。
「どう・・・かな?」
俯くハナが恐る恐る訊き質す。
「ぷ・・・あはは。ええわ、あたぃでよければ」
恐縮するハナの態度に、笑って快諾してしまうミミ。
「明日の午後からやったら、あたぃも手が空いてる筈やからな」
「ほんと?!ありがとうねミミちゃん」
ぱあぁっと顔を綻ばせるハナを観て、頷くミミが太鼓判を押したが。
「せやけどなハナちゃん。
あたぃのセンスを信用せんといてや?」
「そんな・・・そうなの?」
自室に下げられている衣服を指すミミに、ハナが眼を向ける。
そこに下げられてある衣服は・・・
「あたぃはTシャツやら、ジャージが主体なんやで?」
「あはは・・・でも、活発なミミちゃんだから似合うと思う」
数着のジャージとスエット。それにパーカーがミミの主力衣装。
「大丈夫!ミミちゃんとなら、きっと似合う服が選べると想うから」
気を取り直したハナの一言に、肩を竦めたミミが。
「そぉかぁ~?ほんならええけど」
笑顔で買い物に付き合うと了承した。
「それじゃぁ、明日の午後ね」
「分かったわ。出かける時に呼びに来てや」
約束を交わし終えたハナが、隣部屋へと帰ろうと立ち上がり際に。
「あ・・・そうそう。ついでに参考書も買おうね」
「げッ?!マジか?」
授業に付いて行くのがやっとなミミに痛いセリフを残して。
「あはは!冗談だよ」
「なんやとぉ~?」
笑顔を振りまいてドアを閉じた。
「なんや・・・ハナちゃんと話してたら和むやん」
閉じられたドアを見続け、ミミが呟く。
「あの娘が居てくれるだけで、殺伐とした学園生活が和む気がするわ」
そう。
ミミの心の中に、友達の大切さが芽生えた。
友達との絆が紡がれ始めていた。
「明日・・・楽しい日になればええんやけどな」
フっと窓の外に顔を向けるミミの眼に、明るい月が写り込む。
魔法を宿した翠の瞳に、青白い月の光が差し込んでいた・・・
なんという・・・邪なる作戦?!
果たして美晴はデートを完遂できるのだろうか?
しかも!
以外と言うか、トンでもない偶然が?!
美晴の天敵、お邪魔虫のミミまでやってきてしまう?!
これは・・・波乱しかないのでは?
次回 Act 6 D-Day始まる!
いよいよ当日!午前中は学園へ向かうが・・・波乱含みな一日が始まった!




