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絆の行方 Kizuna Destination <魔砲少女ミハル最終譚>  作者: さば・ノーブ
第2部 魔砲少女ミハル エピソード 7 新たなる運命 新しき希望 第1章魔砲少女
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Act13 追い詰められる心情

邪操機兵を倒した魔鋼少女隊。

基地へと帰還を果たしたのだが・・・

空中母艦<大鳳>から降りた回収用ゴンドラに載って、初号機号機が引き上げられてくるのがモニターに映っている。


先に回収された、黄色い零号機から降りていたノーラがポツリと呟く。


「任せてなんて言うからなノラぞ・・・ミハルっちが」


襲われていた少年達を確保できたのは、確かに美晴の功績だと思うのだが。


「独りで背負うのは駄目なノラ。共闘しなきゃ駄目なノラ」


一人だけで闘い、独りだけで闇を葬った美晴のことを心配しているのか?


「また・・・隊長の出番がやって来るだけなノラ」


魔法少女隊員のノーラは、美晴に掛けられた呪いを危惧しているみたいだ。


「二人からは教わっていないノラが。

 美晴が呪われている事ぐらいは分かっているノラぞ」


ゴンドラでハッチ内に回収された零号機。

コックピットに居る美晴を想って、ノーラが懐に納めてある写真を手に取り。


「なぁマリア。私は何をしてやれるノラか?」


魔王を討ち滅ぼした記念に撮った4人が一緒の写真を観て、


「お前との約束だったノラ。

 マリアが居ない間、美晴を護ってくれって頼んだのはお前なノラぞ」


友との約束を果たせずにいる歯痒さに、眉を顰めるだけだった。





空に浮かんでいる雲のような物。

美晴の乗っている戦闘ロボを引き上げ、姿が見えなくなると直ぐに動き始める。


夕日が差し込む野原で、魔拳少女ナックルミミが見上げていた。


「ふ~ん。あれが魔法少女隊ストライカーズって奴なんやな」


雲が流れるように飛び、いつの間にか見えなくなった。


「多分カメレオン効果って奴か、なんかなんやろうけど・・・」


電探レーダーではなく、目視が不可能だからステルスとは言えないかも知れないが。


「凄い技術やなぁ。さっすが、魔法技術先進国って奴やな」


日ノ本は戦前から、魔法技術大国でもあったから。


「あたぃも。

 あの人達の仲間になれたら良いんやけどなぁ」


憧れの対象として、魔法少女隊を観ていたようだ。


「それにしてもや。

 ミハルって人やけど、二人居るんか?

 なんだか話がややこしいみたいなんやけど?」


果敢に邪操機兵に挑み、物の一撃で打倒した美晴みはるという学園の先輩と。


「あの口っぷりからして、もうひとりミハルがいるみたいなんやが?」


少し小首を傾げるようにして、左耳の緑のイヤリングへ指を当てて。


「どうなん?銀ニャン」


誰かに伺いを点てた様なのだが。


「「同姓同名なら居たっておかしくはないだろう。

  魔砲少女ミハルを救出するのがティスとの約束だ」」


ハスキーな声がイヤリングから流れて。


「そやけど。

 ミハルはんが、あないに暗い人やとは思わんかったし」


ミミが銀ニャンと呼ぶ声に応じながら、


「リバース!」


魔法少女の衣装を解除させる。



 シュワワンッ



光の粒が舞い、一瞬で魔法少女の姿は制服姿の月神げっしん 御美みみへと変わる。

魔法衣姿の時は緑髪だったものが黒髪へと。

魔法少女ナックルミミのスレンダーグラマラスが、高等部1年生で幼さの残る姿へと戻った。


填められていた緑のイヤリングが、変身を解除した途端に銀色シルバーの猫と成る。


「どうなっとるん?クリスにゃん」


足元に居る銀色の毛並みの良い猫へと向かって話しかけるミミ。


「そりゃぁ・・・調べないと分からないってだけだ」


話しかけられた猫がミミを見上げて、低音女性声ハスキーボイスで分からないという・・・って?


銀色の猫が・・・答える?

いや、その前に。

どこから現れた?緑色のイヤリングが猫になってる?

しかも、人の言葉を喋る猫?!


「そうなんや。クリスにゃんにも分からへんのか」


「天使にだって分からない事はあるんだよ」


いたって普通に話しているミミと銀ニャン。

いつから異世界モードになっていた?!


魔法少女と人語を喋れる猫が、夕日を見上げて佇んでいる・・・






ー 夕日が落ち、夜が始ろうとしていた ー



作戦を完遂した空中母艦<大鳳>は、ドックに係留されている。

邪操機兵との戦闘を終えた翔騎を、整備担当者達が手早くチェックを終えて行く。

次なる闘いに備えて、次なる邪操が現れる前に。


「それじゃぁ、後を頼みます」


ピンク色の機体から降りた美晴が、整備員に愛機を託す。


「おぅよ、撃破王エース!」


髭の猪狩いかり整備長が美晴に応える。


「はい・・・お願いしますね」


だが、美晴からは威勢の良い答えは返されず。


「疲れているのか?早く休めよ」


いつもなら撃破王エースと揶揄されるのを嫌がり、口答えする美晴の素振りを案じた猪狩整備長が。


「休息を摂って、英気を養えよ」


何も知らずに声をかけて来る。


「はい・・・そうしたいです」


一瞬ピクンと身体を強張らせた美晴だが、頷いて答えるだけに留めた。



戦闘を終えたパイロットは、スーツを脱ぐ為にロッカーへと向かう事になっていた。

 

 カツン・・・カツン・・・


構内に美晴の歩む靴音が響く。

魔法少女隊のノッカー室へと向かう、不規則な靴音だけが流れていた。


「はぁ・・・はぁ・・・」


歩いているだけなのに、美晴の息があがっている。

既に数時間前に戦いを終えたというのに、なぜだかふらついている?


「いけない・・・眠っちゃ・・・寝たら・・・」


歩くのも辛いのか、足音が乱れてしまっている。


「せめてもう少しだけでも。

 魔力を回復できた後でないと・・・」


全力魔法を放ってしまった美晴は、魔力のストックが底を尽いていた。


「もしも、こんな状態で襲われちゃったら・・・」


右手のグローブ越しに痣を観る。


「夢魔空間で・・・耐えられない」


右手に奔る違和感。

それに今迄の2年間で五指に数える位の痛みが教えるのは。


「強力な闇。

 ううん、穢れた魔物が封印されたんだ」


右手に感じる痛みと、言い知れない違和感。

闇の紋章から感じられるのは、何か別次元の存在。


「魔王じゃない・・・けど。

 それに匹敵する位の穢れた異種魔族なんだ」


背筋に奔る嫌悪感。

封じられた魔物が、強大で悍ましい者だと思えた。


「もしも今、眠らされたりしたら。

 あたしは耐え抜くことが出来るのかな?」


ふらふらとした足取りで、ロッカー室へと辿り着く。


 ガチャッ


ロッカーを開いて自分の私服を手に取り、パイロットスーツを脱ぎ始める。

上着を脱ぎ、リボンを外し。


そして、グローブに手をかけて・・・


「うッ?!」


外した右手のグローブを取り落としてしまう。

手の平にある紋章から、赤黒い霧のような物が噴き出していたからだ。


挿絵(By みてみん)


「こんなに・・・穢れた奴なの?」


今迄観たことも無い状態に、美晴は畏怖してしまった。


「こんな奴を相手にするの?

 こんなに穢れた奴の相手をさせられちゃうの?」


夢魔の空間に取り込められたら、一体どんな化け物に穢されてしまうのか。

もしも、聖なる魔力を奪い尽されでもしたら、どんな酷い目に遭わされるのか?


「あたし・・・死ぬのかな?

 夢魔に負けてしまったら、人格を奪われちゃうのかな?」


黄泉帰り者の最期がとうとうやって来てしまった。

魂を維持できなくされたら、それはこの世で生きているとは言えない。

他の者に肉体を奪われ、自分ではないモノに取って代わられる。


「今度という今度は。

 もう、二度とは黄泉帰れない。

 喩え、シキ君が魔法を使ってくれたとしても・・・」


夢魔に穢され、魂を束縛されてしまえば。


「あたし・・・約束も願いも絶たれてしまうのかな」


夢魔の空間に幽閉され、闇の魔力だけを持つ者として永久に穢され続けるか。

若しくは、自ら<無>を求める穢れた魂となって、邪悪に利用されてしまうか。

どちらにせよ、耐えがたい決断を迫られる事になる。

聖なる魔力を奪い尽されでもすれば・・・


「そんな事になるのなら。

 この躰ごと・・・消えてしまう方が良いんだ。

 死んで亡くなってしまう方が・・・」


穢される恐怖。

堕とされてしまう苦しさを想い、美晴は自滅を考えてしまう。


「いっその事、一思いに・・・」


仕舞っておいた赤鞘の剣を見詰め、やがて手が伸びてゆく。


「エターナルレッド・・・あたしに死を・・・」


穢れた紋章から噴き出す赤黒い霧。

右手の平を赤鞘へと伸ばしたが。


 バチッ!


赤黒い霧を赤鞘エターナルレッドが拒む。

聖剣は呪われた闇を拒むかのように、スパークを放って拒絶した。


「そっか・・・あたしを拒むんだねレッド?」


自刃を考えてしまった美晴へ、赤鞘が触れるのを拒絶した。


「あたしがもう、穢れた者に堕ちてしまったんだって思うんだよね?」


堕ちた女神の紋章から溢れ出す穢れた霧状の呪いに、聖剣が触れられるのを拒んだのだろうと考えている。

だが、赤鞘が美晴の手を拒んだ理由は違う処にあった。

聖剣赤鞘エターナルレッドは、主人であり友でもある美晴を死に追いやりたくなかった。

自らの刃で、主人を斬るなど出来ない。友を死に追いやるなど出来る筈が無いからだ。

だから、拒絶した。そして教えてやりたかった。


「諦めて・・・しまえば・・・楽になれるの?」


そうではない。諦めることこそが、最も惨めな末路を辿るのだと知らせたかった。


・・・だから。



 ピキィーン



エターナルレッドと名付けられた聖剣が、彼女を頼って光を放つ。

話しかけれないもどかしさを呪う様に、叫べない己を嘆くかのように。



ー 分かっているわ・・・光の宮<真盛まさもり> ー


蒼き石が応えた。


ー でも、今の私達には手を指し伸ばせられないのよ ー


蒼き石は、穢れた色を放ってはいない。

それどころか、蒼き光を放ち続けている。


・・・それが意味するのは?


ー 今は、耐えて。そしてこの世界に居る善意を信じて ー


美晴の右手に填められ続けている蒼き御珠が、聖剣赤鞘に諭した。


善意?それは一体何を指すというのか?



絶望に打ちのめされる美晴。

もはや死を決断するまで追い詰められてしまった魔砲の少女に救いは現れるのか?



美晴は怯えていた。

今度と言う今度は・・・


巨悪に負けてしまうのではないかと。

今の自分は聖なる魔力が底を尽いていたから。

もしも眠ってしまえば・・・抗う術もないから・・・


恐怖は・・・現実のものになるのか?


次回 Act14 魔獣鬼ゲルベスク

最悪の状態で夢魔に引き込まれるのか?それとも?

美晴最悪の危機に・・・誰が救いの手を指し伸ばせる?

夢魔の空間には光は届かない。聖なる者の援助は求められない。

だとすれば?一体誰が?


次回は前作である<魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!>

 

https://ncode.syosetu.com/n2116fn/


からの、伏線回収です!

彼女がどうしてああなったのかの謂れが・・・顕されるのです。

是非ともご覧くださいませ!!!

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